THE KUROSAKIC RADICAL

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18禁閻密小説『in Dei Patris』 3

2017-04-21 09:12:11 | 小説
 「送ってやれ、近衛」
 閻魔は近衛を召して言った。
 閻魔の腕の中の密を見て、近衛は思わず非難じみた視線を閻魔に向けた。
 「大王様、何を」
 人形のように何も映していない瞳をして、密は閻魔に肩を抱かれ支えられていた。
 「何じゃ、その目は」
 「いえ」
 目を伏せて控える近衛を嘲笑いながら閻魔は言った。
 「そのようなうわべだけの服従には飽いた。何かの拍子に逆らう死神など、もう沢山じゃ。だから、密には、私に心から服従するよう仕向けてやるのだ。人の心までも従えるのは、さぞ愉快なことであろう」
 クッと喉を鳴らして、閻魔は楽しそうな笑い声を立てた。
 「支配には愛情を使うのじゃ。愛情でこの心を縛り付けて、絶対服従を強いるのじゃ。渇望していた愛情を貰えるのならば、好んで私に従うようになるだろう。エンパスを騙すなど、私にとってはた易い」
 閻魔は虚ろな瞳の密にキスを落として、柔らかい髪を梳きながら言った。
 「幸い、厄介な自我などというものが定まらぬ年頃ゆえ、私好みの死神に躾けるのに好適じゃ。加えて、この美しい顔、若い体、淋しい心。愛玩の途にも適しているのう」
 静かな謁見の間に、閻魔の密やかな笑い声が響く。
 「冥府にもまだかような玩具があったとは、何故今まで気付かずにいたのかのう。近衛?」
 そう言って水を向けた閻魔に、近衛は沈黙で返した。
 「どんな死神に育ってくれるか、楽しみじゃ」
 閻魔は仔猫にするように密の顎を撫でてから、密の手を取って近衛の方へ差し出した。
 「家まで送ってやれ」
 「はっ」
 近衛はそう答えて密の手を取った。
 「大丈夫か、黒崎君」
 何も答えない密を心配して、近衛はその背に手を添えると御前を退出した。
 「すまなかった、黒崎君」
 近衛がそう話し掛けても、意識があるのかないのか、密は何の反応を見せなかった。

 タクシーが密の家の前に止まり、密を降ろすと、近衛はもう一度密に言った。
 「大丈夫か?都筑でも呼ぶか?一人では」
 心配して言った近衛に、密は首を横に振って、始めて口をきいた。
 「一人に、なりたいんです」



 部屋の電気を点けると、密はよろめきながらソファに縋りついた。
 ぎゅっと自分の身体を抱きしめる。
 『愛している、密』
 そうすると、その言葉が自分の中に甦ってくる。
 肌に受けた感覚も甦るようで、密はシャツを脱いで自分の肌を撫でた。
 鮮やかにつけられたはずのキスの痕は、もう消えかけていた。
 「何で消えるんだよっ」
 鬱血の痕が再生するのを止めたくて、密は二の腕の内側につけられたその痕をきつく吸った。
 「いやだ、そんな」
 それでも薄くなっていく痕に、密はいたたまれずに噛み付いた。
 愛された痕が消えるのが堪らない。
 記憶だけじゃ、とてもじゃないけど信じられない。
 自分が誰かに愛されたなんて。
 今まで誰にも、親にだって愛されなかったのに、そんな自分が誰かに愛されただなんて、嘘に決まっている。
 嘘じゃないだなんて、とてもじゃないけど、信じられない。
 「痛っ」
 痛みに唇を離すと、血が滲んでいた。小さな傷口は、見る間に塞がっていく。
 「嫌だ!」
 もたらされた愛情までが消えるようで、それを止めようと密は爪でその傷を引っ掻いた。
 あまりに強くやったため、小さな血飛沫が頬にかかる。
 それでもすぐに再生しようとする傷を、密は必死になってえぐった。
 「消えないでくれよ、頼むから!」
 愛されたままで居たくて、だからその証をどうしても残しておきたいのに。
 どうしても。
 再生しようとする傷口を無理矢理えぐって、何度も何度も傷をつけた。
 愛の痕が消えるのに堪えられなくて、傷をえぐり続けて、一晩中ずっと愛された名残に縋っていた。

 束の間眠っていたのか、目覚ましが鳴ったのに密はハッとした。
 痕が消えてしまったかと不安になって左腕を見ると、大きくえぐられたような傷が、血や膿を滲ませていた。
 その醜さに驚いて、密は慌てて傷口を押さえた。
 何度も傷つけて再生の速度が落ちたのか、傷の奥で鈍い再生をしている。
 密は大きなハンカチを傷口に巻いて、その上から傷をぎゅっと握り込んだ。
 「つっ」
 その痛みで愛された事実を確認すると、喜びが胸に広がって、密は涙を零した。
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