THE KUROSAKIC RADICAL

こちらは『闇の末裔』の密を幸せにするサイトでしたが、
サーバー廃業により、当面、ブログで密を愛することにしました。

都密ホラー小説『桜の鬼』3

2017-04-21 07:36:44 | 小説
 ぴくっ。
 都筑は聞こえてきた悲鳴に瞼を動かした。
 「んっ」
 薄っすらと目を開けると、胸に痛みが走った。
 「痛ててててっ」
 胸を押さえながら、都筑はなんとか身体を起こした。
 「痛い・・・」
 霞む頭を振って、あたりを見回すと、倒れている邑輝と、その傍に立つ密が目に映った。
 都筑は痛みも忘れてほっとして、立ち上がって密に駆け寄った。
 「密っ!」
 ドキュン!
 都筑の声に密が振り返った瞬間、銃声が響いた。
 密が腹部から血飛沫を上げて、ドサッと地に倒れこんだ。
 「密ああああ!!!」
 「弾を残しておいて、正解でしたね」
 ぜいぜいと荒い息をしながら、拳銃を片手に邑輝がよろめきながら立ち上がった。
 密の腹部から、大量の血が流れ出る。
 「密ぁああああ!!」
 都筑が悲痛な悲鳴を上げた。
 「密、大丈夫か!?邑輝、お前、密に何をするっ!!」
 腹を押えて、声も無く蹲る密を、都筑は邑輝から庇うように覆うように抱きしめた。
 「それはこちらのセリフですよ」
 密の傍に跪く都筑を、邑輝はその肩を引き掴んで仰向けに押し倒した。
 「なっ!?」
 グラッとバランスを崩して倒れた都筑に、邑輝がのしかかる。
 地面に都筑を押さえつけて、邑輝はその唇を奪った。
 「んっ!?」
 ゾクッと、都筑の背筋に悪寒が走る。
 「本当に、あなたの精気は極上だ」
 「離せっ」
 傷も癒え切ってないせいか、力が入らない。
 それどころか、どんどん力が抜けていく。
 邑輝は都筑に深く口付けて、その精気を奪い、自分のものにした。
 「・・・やる」
 密はそう呻きながら、ゆらりと半身を起こした。
 邑輝の背を睨み付け、密が忌々しげに叫ぶ。
 「殺してやる・・・ッ!」
密の叫びと何かの気配を感じて、邑輝ははっと振り向いた。
 ドシュッ!
 立ち上がった密が霊力を邑輝めがけて放つと、邑輝は後ろに飛び退って避けた。
 呪詛のせいで傾ぐ邑輝に、密はまた霊力を振るう。
 「都筑の精気を吸ったって、多少元気になるだけで、呪詛は消えないんだ」
 邑輝は舌打ちをすると、召喚呪文を唱えた。
 「出でよ、應龍!」
 たが、何も現われなかった。
 「何っ!?」
 「ここでは、一切の神も魔物も召喚できないのさ」
 治癒能力で腹の傷を癒しながら、密は邑輝の焦る顔を面白そうに眺めた。
 そしてさらに霊力を浴びせる。邑輝が結界で防ぐ。
 密の攻撃に結界を張っているものの、邑輝の足元は覚束なかった。
 「消耗戦に持ち込まれて、果たしていつまでもつかな?」
 呪詛の影響で、邑輝は瞬く間に疲弊し、結界も弱まっていく。
 苦痛と屈辱と焦燥の色を浮かべた邑輝は、再び拳銃を構えた。
 「密!危ないっ!」
 横たわったままの都筑の絶叫とともに、銃声が耳をつんざく。
 バアンッ!!!
 密は弾丸を結界で防いでいた。硝煙が晴れると、驚愕した邑輝が呟いた。
 「バカな・・・」
 「二度も同じ手を食うかよ」
 はらり、と風もないのに、月光に照らされながら花びらが数枚散った。
 バシン。
 桜の枝が鞭のように撓って邑輝を襲い、邑輝の手の中の拳銃を払い落とした。
 精気を吸われて回復できないでいる都筑は、それでも、転がり落ちた拳銃を拾い、力を振り絞って遠くへ投げ捨てた。
 邑輝が何度目かの舌打ちをする。
 密は、邑輝が睨むのを晴れやかな顔で受けとめた。
 密が霊力の塊を邑輝へ撃ち込むと、邑輝の張った結界は衝撃で四散し、邑輝は膝をついた。
 「ぐっっ」
 密は、片膝をついて苦悶する邑輝に近づいていく。
 すると邑輝は、右の拳を握り締め、密に殴りかかる。
 「密っ!」
 ハッとして、まだろくに身体を動かせない都筑が叫ぶ。
 密は、渾身の邑輝の拳を掌で易々と受け止めた。
 「この程度の力で何ができる?呪詛で身体も満足に動かせないだろう。それなのに抵抗するから、余計に体力を消耗して辛いだろう」
 受け止めた邑輝の拳に、密は噛み付いて、その肉を食い千切った。
 「痛っ!」
 「へぇ、さすが、人間や死神の精気を吸っているだけあるな、美味だ」
 都筑は人肉を咀嚼する密に目を丸くした。
 「ひ、密?」
 構わずに、密はまた邑輝の手に口を寄せた。
 「やめなさいっ!」
 退けた邑輝の右手に、しゅるしゅると触手のように伸びてきた桜の枝が巻きついて、動きを封じる。
 「何っ!?痛っ!」
 密はまた、邑輝の手に噛み付くと、咀嚼して邑輝の肉を飲み込む。
 「密!?何してるんだ?」
 目を一杯に見開いて、都筑は、自分の目を疑いながら密を見た。
 「何だと思う?都筑?」
 密は振り向きもせず、邑輝の右手に歯を立てる。
 暴れ出した邑輝に、触手のような桜の枝が伸び、その腕に脚に巻きつく。
 「これは、一体っ!?」
 身動きのできなくなった邑輝と、その邑輝を喰らう密を囲むように、桜の花びらが舞い散った。
 瞬きを繰り返し、都筑は、密の血で染まった唇と、白い骨の見える邑輝の手を交互に見つめた。
 「ま、さ、か」
 邑輝の手の肉を噛み千切り、密は咀嚼を繰り返す。邑輝も悲鳴を繰り返す。
 都筑は驚きながら密に声をかけた。
 「密じゃなくて、人喰い鬼、なのか・・・?」
 なんとか半身を起こした都筑は動揺する。
 「そうさ」
 密は短く答えて、邑輝の手の白い骨を噛み砕いた。
 「ヒィイイイ!」
 痛みに呻いて、額に脂汗を滲ませる邑輝を熱心に見つめている密に、都筑は怯えながら叫んだ。
 「密をどうしたんだ!」
 密が邑輝の手を咀嚼し、その白い喉が上下に動く。
 「安心しな。憑依しているだけだ。この子は深く深く眠らせているから、シンクロもしていない」
 邑輝の手から流れ落ちた血を啜りながら、密の赤い唇が答える。
 「シンクロって、どうして密の能力を」
 「記憶を読んだのさ」
 邑輝の叫び声が響く中、密は邑輝の右手の血肉を食らいながら、優しそうな声を出した。
 「この子が、密が、とてもかわいそうだったから、呪詛も返してやった。この邑輝にあんなに苦しめられて殺されて、本当にかわいそうに」
 都筑を振り返った密の瞳には、憐れみの色で彩られていた。
 いつもの、見慣れた密の顔。
 けれど、密のこんな表情は見たことがない。
 密を憐れんでいるのは分かったが、目の前の、密ではない密に、都筑は怯んだ。
 「ついでに言えば、邑輝が殺した人間は、全て俺が喰らった。邑輝は、人間の精気を吸ってたから、様子を見てたんだ」
 邑輝の右手を嬉しそうに食べながら、密が語る。
 「精気を沢山吸った人間は、美味しそうだったからさ。後で喰らおうとしたんだけど、そうする前に密に会えて良かった。密の復讐ができたから」
 安心したような顔をして、密は、邑輝の右手の指に噛み付いた。
 都筑は吐き気をもよおして、密を見上げる。
 「はっ、な、せっ!」
 生きたまま喰われながらも、拘束されて動けない邑輝が、苦し紛れに声を上げる。
 「ぎゃあああっ!」
 神経を食い千切られたのか、一際大きな悲鳴を上げ、びくんと邑輝の身体が痙攣する。
 「ひ、密!!」
 邑輝を喰らう密が恐ろしくて、都筑は肌を粟立たせて悲鳴を上げた。
 「い、やだ、密!密っ!!」
 びっしりと額に汗をかいて、痛みに苦しみに身を捩る邑輝を、密は面白そうに見つめながら、指を咀嚼した。
 「密ぁーーー!」
 涙を浮かべて、都筑はただただその名を呼んだ。
 血に濡れた密の唇が、一旦、邑輝の右手から離れると、その指先は無くなっていた。
 「ひっ」
 「アウッ!な、んて、ことを!」
 邑輝が、指を失った衝撃と痛みに呻き声を上げる。
 密はまた別の指に喰らい付き、咀嚼しながら食い千切った。邑輝の悲鳴が苦痛と屈辱と恐怖に染まっているのを確かめながら。
 都筑は震えながら両手で口元を覆った。
 「や・・・」
 密は無心になって邑輝の指を食い千切っていく。
 「やめて、いや、密っ」
 震える都筑が見守る中、密は残りの指を口にすると、再び手の甲に噛みついた。
密は血肉を咀嚼しては飲み込んでいく。
「そ、そ、そんなこと、密の身体でするんじゃないっ!!」
 都筑が震えながら泣き叫んだ。
 「ひ、密を返せ!!」
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