THE KUROSAKIC RADICAL

こちらは『闇の末裔』の密を幸せにするサイトでしたが、
サーバー廃業により、当面、ブログで密を愛することにしました。

18禁都密&都邑小説『世界一美しい華の為に』1

2017-04-21 09:23:42 | 小説
喉の痛みで目が覚めた。
思わず喉を押えると濡れていた。
ムッとするような臭いは、紛れもない血の臭いだった。
(俺、どうしたんだろう?)
傷は触ってもそれと分からないくらい、塞がっていた。この痛みはじきに消えるだろう。
宙にかざした自分の掌は、全体が血で染まっていた。かなりの出血だったに違いない。
怪我でもしたのか、もしくは、また自分で喉を切ったのか。
思い出そうとして、都筑はここが保健管理室でないことに気が付いた。自分はあの少女を守ろうと、傍で看病していたはずだ。
それなのにここは、見慣れない白い天井。そして白い壁。白い床には血のついたナイフが落ちていた。
首を巡らしている内にハッとした。
(ここ、冥府じゃない!)
自分が冥府から人間界に移動した覚えはない。
その答えは、聞こえてきた笑い声ですぐに分かった。
邑輝だ。邑輝のせいだ。
身体の底から怒りが沸く。邑輝のせいで、あの少女は死んだのだ。そして密だって。
「密……」
いつか、密は邑輝に復讐すると言っていた。
「密はそんなこと、しなくていいよ!」
あの時は痛ましい気持ちで一杯で、密に何も言ってあげられなかった。
「俺が代わりにしてあげるから」
床のナイフを見つめ、霊力で呼び寄せると、左手にしっかりと収めた。
「復讐なんて、自分が辛いだけだ。だから代わりに、俺が邑輝を殺してあげるからね、密」
血まみれのナイフに映った自分の瞳は、紫色に輝いていた。
『お前は人間だ。俺が保証してやる』
こんな不気味な色の瞳を、密はまっすぐに見つめてくれ、そう言ってくれた。
ずっと欲しかった言葉を、自分にかけてくれた。
「だから、今度は俺が密に、欲しいものをあげるよ」
ナイフの刃を舌にあてて、切れ味を確かめる。
(こんなこと、密は望んでないかもしれないけど、でも密がやったら駄目だよ)
自分の手で復讐するつもりでいるのは、ただ、代わりに復讐をしてくれる誰かが居ることを、密は知らないだけだ。
口の中に広がった血を味わいながら、ベッドを抜け、宙に浮いた。足音を立てないよう、浮遊してドアに向かうと、霊力で静かに開けて、廊下に出る。
すると笑い声はひときわ大きくなった。先程からずっと止まないその笑い声を頼りに、すうっと飛んで廊下を進んだ。
(もう密を苦しめるわけには、いかないよ)
復讐に苦痛が伴うことも、密は知らない。密の綺麗な顔が苦しみに歪むのは、もう見たくはない。耐えられない。
見たいのは、嬉しそうな密、楽しそうな密、そして幸せそうに笑ってる密だ。
密の為に自分が邑輝を殺してあげれば、密は喜んでくれるだろうか。笑ってくれるだろうか。それとも、余計なことをしたと怒るだろうか。
(ああ、そうさ)
もしも怒られたら、殺されて無間地獄に落ちた邑輝の所へ、密を連れて行けばいい。そこで密が手ずから邑輝を拷問すれば済む話だ。地獄の住人になれば、何度殺してもまた生き返る。邑輝を何度も殺している内に、密は機嫌を直してくれるに違いない。
(それって、まるで俺が、仔猫に死にかけの鼠を持ってくる親猫みたいじゃない?)
こんなことを言ったら、それこそ密は怒るだろう。
声を殺して都筑は笑った。
(鼠、ズタズタにして持っていってあげるね、密)
そうすれば、最後にはきっと、密は喜んでくれる。お礼も言ってくれるかもしれない。笑ってもくれるかもしれない。
(密の笑顔、見たいなぁ………)
そのままでも充分に綺麗な密は、笑ったらどんなに美しいだろう。どんなに可愛いだろう。
(そうだよ、密。密はとっても綺麗なんだもん。そのまま、綺麗なままで居てよ、お願い)
綺麗な密に、例え相手が鼠でも、人殺しは似合わない。その手を血で汚して欲しくない。
進んでいくと、大きな扉があった。開かれた扉の奥に邑輝の背を見つけ、都筑は息を殺して近づいた。
(だから血で汚れるのは、俺だけでいい)
自分はどんどん汚れていけばいい。代わりに密がどんどん綺麗になればいい。
密が綺麗でいる為に、邑輝は余計だ。
余計な邑輝は屠らないと、美しさに翳りが差して、密が咲き誇れない。
手入れをして邑輝を間引かないと、密が大輪の華を咲かせられない。
同じようなことを、前に誰かから言われた気がする。他の誰でもない、自分からだったかもしれない。
美しい華を咲かせる為には、必ず犠牲になるモノが要る………。
気配を殺して身を屈め、両手でグッとナイフを握り締めて、狙いを定める。
どういう事か判るね?麻斗…。
霊力で白衣の裾を払い退け、邑輝の腹の下を思い切り突き上げた。
ドスッと肉を断つ感触が腕に重く響く。それをいつもは不快に、恐怖すら感じていたのに、今日はむしろ心地良かった。
「な……に……?」
よろめいた邑輝から、間の抜けた呟きが聞こえる。
不思議なものでも見るように、邑輝は息を喘がせて、自分に手を伸ばしてきた。
君の命は他人の犠牲の上に成り立ってるって事さ!!!
「都筑さ………」
目の前の、新しい犠牲者の邑輝の腹から、グシュとナイフを引き抜いた。
都筑は顔に返り血を浴び、邑輝はゴボと血を吐いた。
君はこうして、何人もの人の命を間引いてきたんだよ…。
鼻をつく血の臭いが、自分がどんな人間だったかを思い出させてくれた。

私は

人殺し…


私は

罪人の息子



私たちは

人殺しの為に造られた




にせものの『生命』……。


「ぐっッゲホ…げほ…ッ…ゴホッ」
邑輝は盛んに血を吐き、ボトボトと血を零し、また血だまりが大きくなる。
腹を押さえて膝をついている邑輝に、都筑は安堵した。放っておいても問題は無いだろう。
都筑は出入り口の大きな扉を閉めに行き、しっかりと鍵を下ろした。
「ガ…ッ…はあっ、はあ…っ…」
苦しみに瞠目してのたうつ邑輝に、返り血を拭いながら近寄り、どうしてと目で訴える邑輝を見下ろした。
「はあっ…う…ッ…」
濡れて重くなったナイフから、またポタタッと血が滴り落ちる。
「お前の祖父様の記録に書いてなかったのかい?邑輝――…。俺はな…、ごく稀に…短時間、正気に戻る事があるんだよ…」
床に四つん這いになったまま、邑輝が血で汚れた唇を噛み締める。
「正気に戻れる時間は少しずつ短くなり、次に覚醒できる間隔も段々と長くなっていく…。そうやって、じわじわと自分がイカれていくのを、ただ見ているしかなかったのさ…」
血でぬめるナイフを、またしっかりと握り直した。
「昔の俺はな…」
身体を支えきれないのか、邑輝が転げるように壁に寄りかかる。その邑輝を睨み据え、そして俺は声の限りに宣言した。
「―――――だが今度は違う!!」
右手を拳につくり、憎しみにまかせて壁をゴッと殴った。壁の欠片が四方に飛び散る。
「今、この場でテメエを地獄送りにするくらいの時間は、十分ある!!」
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