THE KUROSAKIC RADICAL

こちらは『闇の末裔』の密を幸せにするサイトでしたが、
サーバー廃業により、当面、ブログで密を愛することにしました。

闇末小説『GO!漢密』2

2017-04-21 08:50:47 | 小説
漢は都密アクションで#2



 合鍵で密の家のドアを開け、密をベッドに寝かせる。
 「こうしていると、思い出すな」
 床に座り込んでベッドに肘をつき、無心に眠る密の顔を見下ろして、都筑は頬を緩ませた。
 「初めて会った夜も、こんなだったな」
 寝顔が可愛いのも、パートナーでいることも、変わらない。
 違うのは、あの時は密は初めての酒に酔い潰れて、随分苦しそうだったということと、可愛さの度合い。
 「あの時はさ、黙っていれば可愛いのにと思ったけど、今では、何をしてても可愛いって思えるよ、密」
 目の前に横たわるのは、自分より一回りも二回りも小さい、密の身体。外見は出会った時と変わらないけれど、中身は変わっていく。
 密は中身も若いから、これから成長して変わっていくのだろう。
 そう思うと、ズキッと胸に痛みが走る。
 なかなか成長しない自分と、どんどん成長していく密。
 成長した密に、果たして自分は相応しいのか。
 これから先は、今までのパートナーと同じように、密も自分から離れていってしまうのではないか。自分を置いていってしまうのではないか。
 不安に苛まれて、都筑は重い溜息を吐いた。
 しかも、密は、倶梨伽羅を手に入れた。
 これから密を守るのは、もうパートナーの自分ではない。
 今まで中途半端にしか密を守れなかった。だから、密を守ってくれる式神が居たらいいのにと思っていた。
 自分が守りきれない部分をカバーしてくれる式神を持って欲しかったのだと、都筑は今更ながら思い至った。
 自分と密の式神で、密を守る。思い描いていたのは、密の傍にいる自分だった。
 その式神が倶梨伽羅であれば、話は違ってくる。
 倶梨伽羅ほどの力があれば、倶梨伽羅一人で密を守りきれる。
 自分が出る幕はもう無い。
 ごくたまに、密に頼られて喜んだこともあったが、それももう無くなってしまう。
 自分は、また、捨てられてしまうのだろうか。
 すぐ目の前に密がいるのに、じわじわと孤独が胸に広がっていく。
 都筑は密に顔を近づけた。
 「お兄さん、キスしちゃおうかな」
 あの夜とは違う暗い気持ちで、都筑はそう囁いた。
 キスで密が自分だけのものになればいいのに。
 密を可愛いと思うあまり、今では、密を独占したいという気持ちでいっぱいだった。
 密にはこれからもずっと自分のパートナーで居て欲しい。傍にいて孤独を癒して欲しい。
 でも、こんな身勝手な願望は、密の未来を奪うものではないのか。
 湧き起こる罪悪感に、都筑は寄せかけた唇を止めた。
 「密をどうするつもりじゃ」
 不意に、自分でも密のものでもない声が響く。
 都筑が振り向くと、大きく開いたワームホールを背に、布都を構えた倶梨伽羅が仁王立ちしていた。
 
 「く、倶梨伽羅っ!?どうしてここに!?」
 「布都よ、留守を頼む」
 倶梨伽羅はそう言うと、布都をワームホールに投げ入れた。
 次第に小さくなっていくワームホールの前に立つ倶梨伽羅を、都筑は何度も瞬きをして確かめた。
 「密を心配して、ワームホールを開けてやって来たのか?」
 こうして、密を心配する役目まで、倶梨伽羅に奪われていくのだろうか。
 「ばかもん!誰が密の心配など、するものかっ!」
 倶梨伽羅は内心で赤面しつつも、口をついて出たのは、真逆の言葉だった。
 「……嘘だろう?倶梨伽羅」
 沈痛な面持ちの都筑に気づかず、倶梨伽羅は照れ隠しを続ける。
 「嘘ではないわっ!儂のような強大な式を操って、さぞ疲れたであろうと、その無様な姿を見に参っただけじゃ!」
 「……嘘だ」
 「嘘なものかっ!ザマーミロと言いに参っただけじゃっ!」
 「ひどい」
 都筑はぽつりと呟いた。
 「それが、主人に対する態度か?確かに、密は年も若くて、力だって倶梨伽羅からすれば全然足りないだろうけど、でも一旦は密を主人と認めて、その式神になったんだ。もっと密を気遣うべきだよ」
 「なんじゃとっ!お主に式の心得など、講釈されたくはないっ!」
 都筑の言葉にブチ切れた倶梨伽羅に、都筑も負けじと叫び返した。
 「だったら、もっと密を思い遣れよ!」
 「儂に指図するか、この無礼者めが!お主の命をきかねばならぬ筋合いなどないぞっ!」
 「でも肝心の式がそんなんじゃ、密が可哀相だ!」
 「そんなんじゃ、だと!?この儂を侮辱する気か!」
 「ああそうだよ!主人の密が疲れている時に、心配もしない式なんて、絶対おかしい!俺はそんなの認めないっ!」
 「お主が認めようが認めまいが、儂の勝手じゃ!お主が口を挟むことではないぞ!」
 「そんなことはないっ!密は俺の大事なパートナーなんだから!」
 「そのパートナーをのこのこ浮遊砂漠まで独りで行かせて、何が、どこが、大事にしているというのじゃ!申してみよ!」
 「そんなこと言われたくない!ちょっと密が気に食わなかったからって殺そうとしたお前なんかに!密をあんな酷い目に遭わせたお前なんかに!もう許せない!お前なんか」
 「うるせーーーーーーーーーっ!!!!!!」
 
 密はガバっと起き上がって叫んだ。
 二人はその大声にぴたっと口を閉ざした。
 「やかましいんだよこの犬!てめぇ、人が寝てる傍で大声で喚くんじゃねぇよっ!」
 密は都筑の胸倉を掴むと、腕の向くまま都筑を殴った。
 「ごめん」
 謝った都筑の次に、密は倶梨伽羅に目を留めると、不機嫌極まりない声で怒鳴った。
 「おい、倶梨伽羅っ!!!脱げっっ!!!」
 「ぇ」
 倶梨伽羅が驚いて小さく唸る。
 「脱げよ!」
 「な、何を申すのじゃ、密」
 「脱げっつったんだよっ!さっさとしろっ!」
 「ど、どういうつもりじゃ、密」
 狼狽する倶梨伽羅に、密はイライラして怒鳴り散らした。
 「ぐだぐだ言ってねーで脱げつってんだろーがっ!俺のいうことが聞けねぇっていうのかよっ!」
 「そ、それは命令、か?」
 「当ったりめーだっ!脱げっ!」
 倶梨伽羅は当惑しきって、躊躇いながらそれでも帯に手をかけた。
 「ここは幻想界じゃねぇんだ!ここは日本の冥府だぜ!?土足で俺の家を歩き回られてたまるかよ!」
 「土足っ?」
 倶梨伽羅は自分の足元を見つめた。
 「この靴を脱げと申すのか?」
 「ああそうだよっ!日本人の家に土足で上がるんじゃねぇよ!さっさと脱げ!!!」
 靴のことだったのかと倶梨伽羅はホッとして、靴を脱いだ。
 「脱いだ靴、玄関に置いとけよ。あと、てめぇが歩き回ったとこ、綺麗に拭いておけ。都筑、倶梨伽羅にスリッパ出してやれ」
 密は命令をし終えると、またすぐに眠りに落ちた。
 
 素足にスリッパを履いて、倶梨伽羅が密の寝室に戻ると、都筑は大人しく床に雑巾がけをしていた。
 「何でお主が密の家におるのじゃ?」
 倶梨伽羅が不服そうに都筑に声をかけた。
 「あれから密を送って、密が心配だから、居るんだよ。俺、密のパートナーだから」
 都筑もむくれて倶梨伽羅に答える。
 「あんな元気にしておるのじゃ。もう心配は要るまい」
 「でも心配だ。倶梨伽羅も来たし」
 倶梨伽羅はムカッときて、けれど寝ている密を憚って小声で言った。
 「なんじゃその言種はっ。儂を何だと思っておるっ」
 「密に初めて会った時、密を殺そうとして大火傷させて、生死の境を彷徨わせた元逆賊の倶梨伽羅龍王様だろ?密もよく、そんな危険な式を得る気になったな。初志貫徹はいいが、余りに危険過ぎる」
 「お主、犬の分際で儂を侮辱するつもりか!身の程知らずの痴れ者め!」
 「なら聞くが、何で密の式になったんだ!密をあんなに傷つけて、あんな酷いことばかりして、殺そうとさえしたくせに!それでも密の式になるだなんて、お前、密をどうするつもりだっ!!!」
 睨みを据えて叫んだ都筑に、倶梨伽羅は一気に頭に血を昇らせた。
 「馬鹿も休み休み言え!式が主人にすることなど、たった一つしかないわっ!!!」
 「何だって!?密が心配しろと命じなければ、心配もしないってことかっ!?」
 「倶梨伽羅、その犬散歩に連れ出せ」
 密は煩さにむくっと起き上がり、不機嫌な声で倶梨伽羅に命じた。



 
 倶梨伽羅は密の命令に従って、都筑を散歩させに北の丸公園までやって来た。
 都筑は芝生を踏んで人気のない場所まで来ると、倶梨伽羅に向き直って、その隻眼をじっと見つめて訊いた。
 「なあ、倶梨伽羅。何で、密の式になったんだ?」
 「昼間、暇潰しと申したろう?聞いてなかったか?」
 「ああ言ったの、本当だったのか。それで、密のこと、本当はどう思ってるんだ?」
 都筑が暗い声で尋ねると、倶梨伽羅はいちいち煩い都筑を睨み上げて答えた。
 「小うるさいただのガキじゃ」
 「それだけか?密のこと、好きじゃないのか?」
 「誰があんなの、好きになるものかっ!」
 売り言葉に買い言葉で言った嘘に、倶梨伽羅自身もそこまで言うことはなかろうと自分にツッコミを入れたが、都筑はそんな倶梨伽羅に気付いていなかった。
 「ひどい。そうだよな、密の式になれば、幻想界に帰れたんだ。
 だが俺は、密を好きでもない慕いもしない式なんて、危なくて密の傍に置いておけないっ!!!」
 都筑はそう叫ぶと、召喚呪文を唱えた。
 「出でよ蒼龍!」
 大空を割って現われた蒼龍を見て、さすがに倶梨伽羅は息を飲んだ。
 「何を考えておる」
 「倶梨伽羅に密は任せられないっ!倶梨伽羅なんて、いなくなればいい!最強だから密は倶梨伽羅を式にしたんだっ!倶梨伽羅がいなくなれば、密は別の、もっとまともな式を探すからっ!蒼龍!」
 都筑に従って蒼龍が倶梨伽羅に襲い掛かる。
 その場に凍りついた倶梨伽羅の身体を、何かが攫ってドサッと芝生の上に押し倒した。
 「ひ、密!?」
 倶梨伽羅をきつく抱きすくめて、密は背に蒼龍の攻撃を受けて血を流していた。
 「バカモン!お主が儂を守ってどうする!」
 「生き、てるか?怪我……」
 密は苦しそうに言い、倶梨伽羅をぎゅっと抱き締めて、倶梨伽羅に癒しの力を奮った。
 「怪我してるのは密の方じゃろう!バカモン、儂なら無事じゃ!!」
 してもいない傷を治すのを止めさせようと、倶梨伽羅は密の両頬を包んでこっちを向かせた。
 密は蒼白の顔で、泣きそうな瞳をしていた。
 「大丈夫、なのか?」
 「当たり前じゃ!儂を誰だと思っておる!それにじゃ、龍同士の喧嘩に割って入る奴があるか!」
 それを聞くと、密はほっとしたように大きく息を吐いた。
 「また、亡くすかと思った……」
 しっかりと倶梨伽羅を抱き締めて、密は虚ろな声で呟いた。
 「俺の所為で、また……。リコみたいに」
 小刻みに震える密に、倶梨伽羅は言葉を失った。
 「亡くすかと……」
 その存在を確かめるように、密は倶梨伽羅の背を何度も何度も撫でる。
 「……密、す」
 「密!ごめん、ごめんな!大丈夫かっ!?」
 都筑は泣いて大声で謝りながら、密を倶梨伽羅からべりっと引き剥がした。
 すまなかった、そう言おうとした言葉を喉に詰まらせ、密を抱きしめ返そうとした腕のやり場をなくし、倶梨伽羅は都筑をギロリと睨んだ。
 「リコは……?」
 密は朦朧とした意識のまま、腕の中にも、どこにも居ない式の名を呼んだ。
 「リコはね、倶梨伽羅が殺したんだよ」
 都筑は密を胸の中に抱き締めて、倶梨伽羅を恨みがましい瞳で睨み返した。
 「……儂の前に連れて来るからじゃ」
 本当はそんなことを言いたいわけではないのに、心苦しさに力のない声で倶梨伽羅は言い返した。
 「責任転嫁は見苦しいぞ!それが龍王のすることか!?」
 「そりゃ、幻想界での常套手段だろ?所詮、よそ者が損するような仕組みになってんだ」
 ついさっきまで苦しそうにしていた密は、再生が済むと元気に起き上がって、蒼龍にガンを飛ばして言った。
 「テメェの管理不行き届きまで、よそ者の所為にする所だよな、幻想界ってのはさ?
 そうだろ?
 何でもかんでもよそ者の所為にしちまえば、自分達のミスも失策も隠せるってことなんだろ?
 大体、俺がワームホールに落ちて浮遊砂漠に落っこちたのだって、そもそもテメェのワームホール対策がそれこそ穴だらけだったってことじゃねぇか。
 俺は単に浮遊砂漠に落っこちただけで、好き好んで浮遊砂漠に行ったわけでもねぇのに、それで倶梨伽羅の脱獄を手助けしたとか言われちゃ、呆れて開いた口も塞がらねぇよ。
 倶梨伽羅が脱獄できたのは、直接には狐太郎のミスだ。それだって、俺を助けようとしてのことだ。
 それでこの俺は偶然ぐ・う・ぜ・んワームホールから浮遊砂漠に落ちたとあっちゃ、悪いのは、重罪人を閉じ込めておくような浮遊砂漠と次元を繋げるワームホールの出現を許してるテメェだろ?
 それに、こんな重罪人を閉じ込めておく場所に俺が落ちたら、真っ先に気づけよ、馬鹿。セキュリティシステムも穴だらけかよ。
 テメェが最高責任者だっつーんなら、天狗よりも先に気付いてテメェが真っ先に俺を助けに来いよな。テメェが天狗より先に気付いてりゃ、狐太郎が布都を外へ逃がすこともなく、倶梨伽羅だって脱獄しようにもできず、あんな大事には発展しなかったんだ。
 つまりテメェが何もかも悪いんだよ。
 ま、人に罪をなすりつけるしか能がねぇんじゃ、何言っても無駄だろうがな」
 密は蒼龍に背を向けて、わざと尻を突き出してついている芝をペンペンと払った。
 「倶梨伽羅!このような人間の式になるとは、どういう了見だ!」
 蒼龍が怒ると、都筑も一緒になって倶梨伽羅に叫んだ。
 「そうだ!密のことなんかこれっぽっちも思ってないくせに、どういうつもりなんだ!」
 「黙れ!黙れ!黙れーー!!かようなこと、何でお主らに言わねばならぬのじゃ!」
 倶梨伽羅は地団駄を踏んで甲高い声で絶叫した。
 密の式になった理由は、絶対に絶対に口にしないと昼間決心したばかりだ。二度も声を掛けられて嬉しかったからという、そんな理由はおいそれと口にできることではない。
 「つーかお前、俺の式に何してんだよ。俺のモンに手ぇ出すな」
 密は都筑に注意すると、ぜぇぜぇと荒い息をする倶梨伽羅の芝を払ってやった。
 「倶梨伽羅は、密に相応しい式じゃない」
 目に涙を溜めて怒っている都筑に、密はあくまで冷静に答えた。
 「そんなの分かってるさ。俺にとっちゃ過ぎた式だ」
 「そういうこと言ってるんじゃない!いいか、強いだけの式なんて、決していいものじゃないんだ!密が力で抑えてるうちはいいけど、術者が弱くなったりすると攻撃するって、始めに言っただろうっ!?
 だから、密をちゃんと慕ってくれるような式でないと、友達みたいな式でないと安心できないんだって、俺言ったよなっ!?」
 「ああ、聞いたさ」
 そう言って密は倶梨伽羅の頭をポンポンと撫でた。
 「帰るぞ、倶梨伽羅。晩メシできたぜ」
 倶梨伽羅はその言葉にびっくりして、密の顔を見上げた。
 「折角来てくれたのに、茶も出さなかったからな。食ってけよ」
 密に促されて、歩き出した倶梨伽羅の背に、蒼龍が問いかけた。
 「倶梨伽羅、その人間の式になって、後悔しておらぬか?」
 「後悔するような選択など、儂がするものか」
 倶梨伽羅は振り向いて蒼龍に笑って見せると、蒼龍も微笑した。
 「そうか、達者でな」
 「うむ」
 倶梨伽羅は蒼龍に背を向け、密の手を取って言った。
 「晩メシはなんじゃ?」
 楽しそうに言った倶梨伽羅に、密は気まずそうに言った。
 「オムライス。悪かったな、明日はもっといいもん、食わせてやるから」
 (明日は……?)
 その言葉に、明日も一緒に居られるのだと、倶梨伽羅は胸の奥から嬉しさが込み上げた。そして、何も言わずに握らせてくれる密の手を、もう一度きゅっと握りなおして、もっと密の家が遠かったらこのままずっと手を繋いでいられるのにと、フッと思った。
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