THE KUROSAKIC RADICAL

こちらは『闇の末裔』の密を幸せにするサイトでしたが、
サーバー廃業により、当面、ブログで密を愛することにしました。

18禁閻密小説『in Dei Patris』7

2017-04-21 09:16:22 | 小説
それからというもの、密は毎晩、閻魔の元へ通った。
数日後、今度は、いつでも傍に侍るようにと命じられて、密は一日中、閻魔の傍で過ごすことになった。
召喚課へは、閻魔が密の分身を作り出し、玉兎と名付けられたその分身が、召喚課へ出勤し官舎に帰る、という、かつて密が送っていた毎日を過ごしている。
閻魔の生み出した分身は精巧で、数ヶ月経った今でも、誰も気づいていないそうだ。

閻魔が政務の為執務室へ移ると、密は朝日の差し込む閻魔の私室で、ぼんやりと窓の外を眺めていた。
ほんの少し、一人になる朝のひと時。
密は、ふと、以前に読んだ本の一節を思い出した。
愛情というのは無償のもの、という一節。
閻魔との関係は、主従関係で、報酬に愛情を貰っている。
その愛情を、精神感応能力は確かに閻魔から愛されていると感じ取っている。
もしも愛情が無償のものなら、この自分の感覚は、間違っているのかもしれない。
でも、それでも、たとえこの愛情が偽りのものだとしても、構わない。
自分が閻魔の支配欲を満たす為だけの存在でも、構わない。
今までずっと、誰からも、ひとかけらの愛情も貰えずに、自分は生きてきた。
ずっと愛情を望んでた。ずっと愛情を欲しかった。ずっと誰かに愛して欲しかった。ずっと誰かに愛してるって言って欲しかった。
それが閻魔に出会えて、ようやく叶った。ようやく愛してもらえた。
今まで、何一つ、欲しかったものは手に入らなかったのに、やっと手に入れることができた、愛情。
それが本物でなかろうと、構いはしなかった。
自分はそれを愛情と感じ取れるのだから。愛情と感じるよう仕向けられているのかもしれないが、それでも愛情と感じるのだから、構わない。
愛情が欲しいだけの自分は、どんなものであれ愛情さえ貰えるならば、それでいい。
今まで誰もくれなかった愛情を貰えて、嬉しいと思う傍から、もっと欲しいと望む欲深な自分がいる。
愛されたい、なんて身勝手な欲望なのだろう。

しばらく窓の外を眺めていると、自分とまったく同じ顔をした分身が、閻魔庁の門を一人でくぐる。
自分の分身である玉兎が、閻魔庁へ出勤する様子を見るのが、密の新しい日課だった。
女官が自分を呼びに来たので、密は中華風の衣の裾を払いながら、閻魔の執務室へと向かった。
閻魔は長椅子に凭れるようにして、書類に目を通している。
「密」
優しく手招く閻魔の声に、密は幸せを感じながら、いそいそと閻魔に駆け寄った。
膝の上の示されて、いつものようにその膝の上に頭を乗せる。
「昨夜も遅くまで付き合わせてしまったからの。少し眠るといい」
愛しむように髪を撫でられ、閻魔の大きな手のぬくもりを感じる、穏やかな時間が始まる。
「退屈になったら申すがいい」
「でも、ずっと傍に居てもいいんですよね?」
「構わぬ。愛い奴」
身体ごと閻魔の愛情に包まれて、密はそっと目を閉じた。
日がな一日、こうして閻魔の膝で過ごすこともあるが、退屈を感じたことは一度もない。
閻魔からは、柔らかく守られて包み込まれるような、頼りきってもいいと全てを受け入れてくれるような愛情が感じられる。
離れたくないのを知っているかのように、抱いていてくれる。縋りたいのを分かっているかのように、離してくれない。
そんな愛情を感じ取っているだけで、時間は流れるように過ぎていく。
そんな愛情を感じ取っていることに、安心する。

たとえ、この愛情が偽りのものだったとしても、もう手離せない。


 完
※in Dei Patris(イン・デイ・パトリス)…父なる神のうちに。ラテン語。2003年1月26日~2004年5月23日までサイトに連載していたものを加筆修正しました。
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