THE KUROSAKIC RADICAL

こちらは『闇の末裔』の密を幸せにするサイトでしたが、
サーバー廃業により、当面、ブログで密を愛することにしました。

広告

※このエリアは、60日間投稿が無い場合に表示されます。記事を投稿すると、表示されなくなります。

闇末小説『GO!漢密』1

2017-04-21 08:48:56 | 小説
漢は都密アクションで#1



 密はコンクリートの地べたに座り込んで、片膝を立てて頬杖をついていた。
 黒のハイネックのセーターと茶色のスラックスに身を包んで、つまらなそうに、けれど間断なく前方を凝視する。
 「何の気配もないな、密」
 延々と続くコンクリートの壁際で、都筑は密と背を合わせるように立っていた。トレンチコートのポケットに手を突っ込んで、瞳を凝らして前方を見据えたまま、背後の密に問いかける。
 「ああ、何も感じない」
 密の精神感応能力が感じているのは、背中に居る都筑だけだった。
 「この廃ビルの駐車場が一番怪しいけど、場所を変えるか?」
 「そうしてみるか」
 頷いた密に、都筑は振り向いて微笑んだ。
 「密、素直になったな」
 突然の都筑の言葉に、訳が分からないといった様子で、密は都筑を振り返った。
 「幻想界で、人の言うことを聞くことを覚えたのは、いい傾向だと言ったんだ」
 「バカ」
 呆れたような密の言葉には、明らかに照れが入っていて、都筑は笑みを深くした。
 「密、可愛い!」
 そう言って都筑は密にがばっと抱きついた。
 「何すんだ、バカっ!!」
 次の瞬間、二人は同時に息を飲んだ。
 「来たぜ!」
 ビュンと、何か飛んできたものを、密は懐から取り出した呪符で打ち砕いた。
 「随分待たせてくれたじゃねぇか!」
 密は立ち上がり様、そう叫んで呪符を構えると、何かが飛んできた方に鋭い視線を送った。
 都筑も緩んだ表情を引き締めて、唸り声のするその闇の彼方を睨んだ。
 「おのれ、死神め。わしはまだ死なんぞ」
 呪わしげな声が聞こえたかと思うと、スーツを着た初老の男性が闇の奥から現われた。
 「うるせぇ!てめぇが石山だな!?鬼籍に載って死んだくせに1ヵ月も生きてんじゃねーよ!」
 密がそう怒鳴ると、ビュンと唸りを上げて、大きなコンクリートブロックが飛んできた。
 「ざけてんじゃねぇよ!大人しく十王庁の裁きを受けろってんだ!」
 密がヒュッと呪符を放つと、そのコンクリートブロックは甲高い音を立てて砕け散った。
 「このビルの会社の社長サンだったんだよね。もう、会社も何も無くなったのに、どうしてまだ?」
 同情を滲ませて都筑が問うと、怒声とともにまたコンクリートブロックが飛んできた。
 「わしはまだ死なん!」
 都筑がその飛んできたブロックを呪符で打ち砕く。
 ビュンビュンと、あとからあとからコンクリートブロックが飛んできて二人に襲い掛かった。
 「聞く耳持たないってことか!」
 飛んでくるブロックから呪符で身を庇いながら、そう都筑が叫んだ。
 「失せろ、死神め!」
 大きな塊のコンクリートブロックが飛んでくる。
 「失せるのはてめーの方だ!!」
 密が呪符でそれを打ち砕くと、ガラガラと音を立てて破片が二人の足元に転った。
 「やるか」
 「待て、都筑」
 式を召喚しようとした都筑を制して、密がきっと前方を見据えたままで言う。
 「てめえみてぇな相手にゃもったいねぇが、見せてやるぜ!」
 そう叫ぶと、密は、革靴の底で床のコンクリートをガッと擦り、足を踏み締めた。
 すっと半眼に瞳を閉じると、密は虚空に手を翳した。
 「伏して願い奉る」
 召喚の呪文を綺麗な声が紡ぎ出す。
 「我を加護する神よ!」
 力強い声で密が続ける。
 「真黒き鋼の鱗は岩をも砕き、鉄をも溶かす息吹もて、その身に宿る炎よ、万障を焼き滅ぼせ!」
 そして息を深く吸い、さらに精神を集中させる。
 「我が前に姿現し給え!今度はてめぇの力を見せてもらうぜっ!出でよ!倶梨伽羅龍王!!」
 密はカッと目を見開き、腕を振り上げながら、声の限りに叫んだ。
 その瞬間、ドンと大音響が響き、赤黒い炎があたりを覆った。
 密は爆風に髪を嬲らせながら、倶梨伽羅を導くようにすっと右手を差し伸べ、コンクリートの闇の向こうを指し示した。
 「あそこだ、行け!!」
 倶梨伽羅の龍身がビュっと疾風のように駆け抜けたかと思うと、ゴウと炎が湧き上がり、ひしゃげたような悲鳴を残して、その死にきれなかった魂は冥府に送られた。
 倶梨伽羅は煤を払いながら、すぐに密の元へと舞い戻って来た。
 密の目の前に着くや否や、倶梨伽羅はその龍の手でぺしっと密の頭をはたいた。
 「いって、何すんだよ!」
 「それはこっちのセリフじゃ!密よ、一体さっきの言葉はなんじゃ!!」
 崇高な龍の顔でぷりぷり怒りながら倶梨伽羅は叫んだ。
 密はムッとしたものの、召喚は初めてのこともあり、怒声を飛ばすのをやめた。
 「ちぇっ。何だよ、どこが気に入らなかったってんだよ」
 密は倶梨伽羅を軽く睨みながら言うと、倶梨伽羅は唾を飛ばして怒鳴った。
 「どこもなにも、なんじゃ、あれは!!!今度は儂の力を見せてもらうとは!!密、お主、儂を誰だと思っておるのじゃっ!」
 密は腕を組んで冷たく倶梨伽羅を見た。
 「別にいいじゃねぇか。俺、てめぇの力をハタからちゃんと見たことねぇしな」
 倶梨伽羅に襲われたことはあったが、密が倶梨伽羅の力を客観的に見ることができたのは、今日が初めてだった。
 「密!!」
 びしっと、倶梨伽羅は龍の爪を密に突きつけて怒鳴った。
 「その態度はなんじゃ!!密の式になってやった時は、涙腺が壊れたのかと思うくらい、礼を言いながら泣いておったくせに!!!」
 「ああ」
 密は喚く倶梨伽羅を真っ直ぐに見つめると言った。
 「勿論、今でも俺の式になってくれて、感謝している。ありがとう倶梨伽羅」
 それを聞くと、倶梨伽羅は息を飲んで、大きな龍の瞳をぱちっと瞬かせた。
 今の密の心からの言葉が、その胸にきゅんときて、思わず倶梨伽羅は密からぷいと顔を背けた。
 人型ならば、顔が真っ赤になっていた所だったと密かに思いながら、倶梨伽羅は咳払いをしてから言った。
 「ふん、この儂が密のような青二才の式になってやったのじゃ。たんと礼を申すがいい」
 偉そうに肩をそびやかしながら言うと、突っかかってくると思われた密は、驚いたことに素直に礼を言った。
 「ああ、ありがとう。感謝してる」
 それを聞くと、倶梨伽羅はその嬉しさに思わず目が潤みそうになった。人に感謝されたことなど何十年、何百年ぶりのことだったから。
 倶梨伽羅は照れを隠すのに、わざと密にきつく言った。
 「ふん、こんな雑魚に儂を呼び寄せおって。こんなものを退治する為なら、儂じゃなくてもよかったであろう」
 「違うさ。お前が、欲しかったんだ。誰かを倒す為でも、自分を誰かから守る為でもなく。そんなのは関係なしに、ただの俺が、お前を欲しかったんだよ、倶梨伽羅」
 真摯な声で言う密の顔を、倶梨伽羅はちらっと横目で見た。
 初めて会った時と同じように、密の瞳は真っ直ぐに倶梨伽羅を見つめてくる。
 決して逸らされることのない、強い意思を持つ翡翠の瞳。
 (なんだって儂に限って、そんな瞳で見つめるのじゃっ!!!)
 倶梨伽羅は内心、訳もなく焦った。
 こんな風に、密がはっきりと自分の本心を口にして、求めてくるのも、儂だけ。
 真っ直ぐに、本当に真っ直ぐに密が向かう合うのは、儂に限ってのこと。
 潤む瞳を隠す為、倶梨伽羅はまたそっぽを向いた。
 (龍がこんなことで泣いてたまるかっ)
 本当は、かなり嬉しかったのだが、口をついて出たのは別の言葉だった。
 「ふん、密に付き合ってやったのはただの暇つぶしじゃっ。我ら神の寿命は人間の魂の及ぶまでもなく長いからのっ」
 言ってから倶梨伽羅ははっとして、酷いことを言ってしまったと思い、密の方をそーっと見ると、密は表情一つ変えていなかった。
 (憎たらしい・・・)
 「てめぇの暇つぶしでも、俺にとっちゃ一生だ。まぁもう死んでるけどな。とにかく、ありがとう、来てくれて。倶梨伽羅」
 「ふん!今度、こんなつまらぬ相手で呼ぼうものなら、絶対に来てやらぬぞ!密の力だけで片付けるがいい!」
 「あははっ、違う違う、倶梨伽羅」
 そばで聞いていた都筑は、可笑しそうに涙さえ浮かべて笑った。
 「違うんだよ、倶梨伽羅。密は、倶梨伽羅に会いたかっただけなんだ。幻想界から帰ってきて、ずっと会ってなかったからさ。
 やっと召喚する機会ができたから、呼んだんだよ」
 「バカ」
 密がそう呟くのも気にせずに都筑は笑顔で続けた。
 「だって、倶梨伽羅は密の大事な友達だから」
 「ばかもん!誰が密の友達だ!!儂は人間の子を友に持った覚えなど、ないぞ!!!!」
 倶梨伽羅は銅鐸を振り回さんばかりに怒鳴った。
 「龍王様のご友人、か。まぁそれも悪くねぇけどな」
 密が一つ大きく息をついて、呆れ返る。
 「なんじゃ密、そのバカにしたような態度は!
 密、お主、あれだけ儂にまとわりついてた時と比べ、可愛げが全然ないぞ!儂を式にしたいとピーピー喚いていたくせに、式にした途端、その態度の豹変振りはなんじゃ!
 釣った魚に餌はやらぬと申すのか!!」
 倶梨伽羅は幻想界でのことを思い出して、ぷんぷんと怒りながら言った。
 初めて会った時あんな酷いことをしたのに、なのにまだ儂を式にすると求めてくれて、そんな人間は初めてで、それが嬉しくてどうしようもなかった。
 ・・・・・というのは、もう絶対に言ってやらん!
 「そうか?感謝してるって言ってるじゃねぇか」
 密は何言ってるんだか、な顔して言う。
 隣りで都筑が声を立ててまた笑った。
 「密、お兄さんが教えてあげるよ。どういうことかというとね、つまり、倶梨伽羅は、密にもっと可愛がって欲しいって言ってい」
 ゲシン、と今度こそ倶梨伽羅の銅鐸が都筑を殴り、都筑はコンクートの壁にのめり込んだ。
 密は、まん丸に目を見開きながら倶梨伽羅をじっと見つめた。
 「可愛がってって」
 「ええい、うるさい!儂はもう帰るぞ!もう用はないのだろう!?」
 「え?ああ、今日はありがとう」
 倶梨伽羅は密から大げさに顔を背けると、シュンと消えて幻想界に帰っていった。
 「可愛がってって・・・」
 そう言って密は自分の手の平を見つめた。
 「よくやったとか言って、撫でたりすればよかったのか?」
 それじゃあまるで犬のしつけじゃねぇか、と思いながら、密は都筑が半ば埋まっている壁に向かって歩き出した。



 「龍王様!?いかがなさいましたか!?」
 布都は焦りながら、隻眼からぼろぼろと涙を零す倶梨伽羅に言った。
 「下がっておれ布都!人間界が埃っぽくて、ゴミが目に入っただけじゃ!!」
 龍王の一喝に布都は申し訳ございませんと言って下がっていった。
 目をごしごしと擦っても、涙は全然止まらずに、涙で何も見えないくせに密の顔が浮かんでくる。
 『ありがとう、倶梨伽羅』
 もう一度、密の口からその言葉が聞きたかった。



 「痛たたたた」
 そう呻きながら、都筑はコンクリートの壁の中から這い出る。
 その都筑に、密は手を差し伸べた。
 「何でいつも、倶梨伽羅に銅鐸で殴られるんだろう」
 ぶつぶつ言いながらも、内心、ごく自然に手を差し出してくれた密に喜んで、都筑はその手を取った。
 「!?」
 密の手を支えにして身を起こそうとしたが、逆に、密の顔が間近に迫ってくる。
 「密!?」
 都筑に手を引かれた形になった密は、都筑の上に倒れ込んだ。
 「密!?大丈夫か!?」
 召喚術は、術者の体力を大きく消耗させる。
 それを初めて行ったのだから、疲労していて当然だ。
 「密!?」
 呼びかけても返事がなく、都筑は胸元の密の顔を覗き込んだ。
 顔色が悪く、意識もないようだが、規則正しい呼吸をしていて、一安心する。
 「密、お疲れ様」
 ぽんと密の頭を撫でても、反応は無い。
 「少しだけ、こうしていてもいい?」
 大人しく頭を撫でられている密が可愛くて、都筑はそっと胸の中の密を抱きしめた。
 そのままの体勢で、片手でポケットのスマホを取り出すと、召喚課に連絡を入れる。
 2コールで巽が出て、報告をして直帰の許可を貰う。
 「帰ろうな、密」
 胸の中の温もりに微笑んで、都筑は密をお姫様抱っこして、密の家に向かった。
 
ジャンル:
ウェブログ
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 闇末小説『闇の取引』 | トップ | 闇末小説『GO!漢密』2 »

コメントを投稿


コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

あわせて読む

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
  • 30日以上前の記事に対するトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • 送信元の記事内容が半角英数のみのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • このブログへのリンクがない記事からのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • ※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。