小林正法律事務所 【ブログ】

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利率について

2017年05月15日 13時40分53秒 | 法律論

現行民法404条は、「利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、年五分とする。」と定めています。

例えば、100万円を支払わなければいけないのに1年間放置したという場合、利息が生ずべき債権であれば、1年後には105万円を支払わなければいけないということです。


この年5%という数字は、現代の社会情勢からすると、とてつもなく高い金利だと思いませんか?

例えば、預貯金の利率を思い描いてみてください。100万円を預けておいたら1年後には105万円になっているという世界です。

「1年前に100万円支払ってくれていれば、今頃105万円になっていたはずだ」「だから、元金100万円と遅延損害金5万円を支払え」

こういう話です。

そうすると、逆に、「将来もらえるはずのお金を、今もらったらどうなるか」

例えば、交通事故により後遺障害を負ったという事例で考えてみましょう。


*****************************


「後遺障害(労働能力の全部または一部喪失)により、将来得られる収入が減少した」

という損害は、逸失利益といいます。

この逸失利益は将来得られるはずの収入が減少した分の補てんを求めるもので、本来は将来得られるお金を、現時点でもらうことになります。

そうすると、現時点でもらったお金を年利5%で運用することで、本来将来得られるはずのお金よりも大きな利益を得ることになる、という理屈が成り立ちます。

逸失利益は、本来得られるはずの利益の補てんを求めるものなので、本来得られるはずの利益以上の請求をすることはできません。

そこで、運用益により大きくなる部分については、控除することになります。

これを中間利息の控除といいます。


やや話を戻しますが、逸失利益をどのように計算するかというと、

基礎収入×労働能力喪失率×ライプニッツ係数

という式によります。

基礎収入というのは事故前の収入をもとに算定されますが、未成年者だったり将来の収入が増減する蓋然性が高い場合には別途考慮されます。

労働能力喪失率というのは、後遺障害の内容や程度によって、事故前の状態を100とした場合、何%喪失したかということです。

自賠責基準では例えば14級だと5%、12級だと14%を喪失したという扱いになっております。
なお、裁判においては評価が異なる場合があります。

利率が関係してくるのは、ライプニッツ係数です。


まず労働能力喪失により収入に影響を与える期間(=労働能力喪失期間)が何年か、という計算をします。

例えば10年後には後遺障害の影響がなくなるとすれば、労働能力喪失期間は10年ですし、稼働年齢が67歳までで、症状固定時が47歳である場合、例え生涯影響を与える障害であるとしても、20年間となります。
なお、これらは例外もありますので、詳しいことは直接ご相談いただければと思います。


具体的に見てみましょう。

基礎収入が500万円で、労働能力喪失率が5%、労働能力喪失期間が10年間の場合どうなるでしょうか


単純計算をすると、1年間で25万円減収したということになり、これを10年間となれば250万円が損害となりそうです。

しかし、10年後の収入を、現時点で支払ってもらった場合、運用利益を得ることになります。

年利5%で250万円を運用した場合、10年後には250万円以上の収入を得ることになる、ということです。

本来よりも大きな利益の部分を控除するために、ライプニッツ係数というものが使われます。

例えば、10年後では、ライプニッツ係数は「7.7217」となります。

計算方法については割愛しますが、わかりやすくいうと、今もらったお金を「7.7217年間」運用すると、1年後に25万円、2年後に25万円というように、分割でもらい続けて合計250万円を支払ってもらった場合の利益と同じになる、という理屈です。


ここで使われるライプニッツ係数は利率5%を前提としています。

では、利率が引き下げられて、3%になった場合はどうなるでしょうか。

結論を言えば、ライプニッツ係数の数値は、高くなります。


5%の利率で運用する場合には、7.7217年間で10年後の利益と同じになるというわけですから

3%で運用する場合には、より長い期間運用しなければ、10年後の利益と同じにはなりませんよね。


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一時金払いで逸失利益を払ってもらう場合、損害額が大きくなればなるほど、労働能力喪失期間が長くなればなるほど、定額払いでもらう金額との乖離が著しくなります。

例えば、年収500万円で、労働能力喪失率が50%、労働能力喪失期間が50年としましょう。

このとき、1年間では250万円の収入減があり、50年間ということですから、中間利息を控除しない分割払い(定期金払)では、合計1億2500万円を受け取れるはずです。

ところが、一時金では、年利5%の運用利益を考えることになりますので、50年のライプニッツ係数は、「18.2559」ですから、500万円×0.5×18.2559という計算により、4563万9750円となってしまいます。

中間利息を考えなければ1億2500万円のところが、約3分の1になってしまうわけです

しかし、冒頭で申し上げたように、年利5%というのは、現代社会ではとてつもなく高い金利です。

リアル社会では定期預貯金で0.02%ぐらいじゃないでしょうか。

そのため、いま4500万円をもらえば50年後にそのお金が1億2500万円になっている、というはずがない!という不満が生じ、ひいては、これしか賠償してもらえないのか!という不満につながることがあります。

こういった不満を解消するには、将来得られる利益分については、毎月あるいは毎年分割で支払ってもらうという手段(定期金賠償)が考えられますが、残念ながら、基本的には認められていません。

寝たきりになってしまった場合の将来の介護費などのように、一時金で減額されたお金をもらうよりも、将来の現実の支出に対する補てんをすることが重要、というような場合には定期金賠償が認められる場合があります。

なお、定期金賠償では、実際に介護を要している期間に応じて支払いを受けられる可能性があるという点で優れていますが、債務者側の経営状態や資産状況によって支払いが滞ってしまうというリスクが考えられるところです。



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民法改正により、利率は原則として3%に引き下げられます。

そうすると、遅延損害金は下がりますが、逸失利益は事案によって著しく高額になります。

これにより大きな影響を受けるのは保険会社だと言われているのは、上に述べたような事情によるのです。


<文責 長田>


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