何気無く大切な一日が、かけがえ無く今日も過ぎてゆく 高橋忠史・多系統萎縮症と生きる・唄い屋。

難病の多系統萎縮症に侵されても音楽を諦めない男のライヴ報告や日々の思い・命のメッセージ

1000年の歴史を越えて

2016年02月09日 21時00分46秒 | Weblog
つい数日前から「みんなちがって みんないい」金子みすずさんの詩が頭をよぎる。
10年以上前に、本屋さんで童謡詩集というタイトルがひっかかって手に取った、
金子みすず‥という名前も気に入って思わず買ってしまった。

難しい言葉は使っていなくって、やさしい文体のあったかい詩集だった。
生きているときは世間に知られる事も無く、若くして亡くなっている。
そんな彼女に恋をした。
数十年も前になくなった金子みすずさんに‥。
その時、全集まで手に入れて読みふけった。

短くて、分かりやすい表現のくせに、言葉の持つ意味がどこまでも深く。
何度読んでもその時その時に発見があり、恋する乙女のように胸がキューンとなった。

仏教思想が影響しているのか、全てのものに優劣をつけず平等に見て、「みんなちがって みんないい」に代表されるように、ひとつの出来事を一方方向から見ているだけの考えじゃなく、多方面から眺め観察してそれぞれ違った考え方がある事を良しとして作品作りがされている。

体調は戻ってないが今手元にないのでどうしても欲しくなって、熊野宮の二倍の距離を歩いて、アカシア通りにある大きな本屋さんに出掛けた。
恋心が蘇った僕に、よろつく足も、ふらつく身体も、旅の疲れも関係なかった。
愛しい人に逢いに行く、ワクワクドキドキ。
多摩地域に何軒もあるチェーン店の大きな本屋だったが残念‥無かった。

本を買うのも贅沢な事なので、小平市の都営アパートに住んでから、古本しか買った事がない。
恋する人の本だから、これからも何度も手にするだろうから、ちゃんとした本を買うつもりで来たので僕のガッカリ度は大きかった。


そのまま帰るのも悔しく、本棚をなにげなく物色していたら‥空海の書いた「般若心経秘鍵」の解説本を見つけた。
50日掛けて歩いた「四国・遍路旅」、空海と同行二人。
88ヶ所の寺を完全に歩き通した最後の寺で、太子堂の前で、回りに沢山いた観光客も気にせずに人生で一番大きな声を出して‥「ありがとうございます。」‥と叫んだのを覚えている。
神も仏も信じない僕が。

だが僕は空海の事は何も知らない。
命が縮んでいる今、金子みすずさんが、空海に出会わせてくれたのかも知れない。
「般若心経秘鍵」は、空海が61歳の時に書いたものらしい。
60を過ぎた今出逢うべくして出逢った本かもしれない。
1000年を越えた過去の偉人と出会えるなんて、書物とは偉大なものだ。