★似ている
よくペットは飼い主に似るというが、高槻先生はタヌキに似ている。というか、「タヌキの親分」という感じだ。もともとはシカがご専門であるとのことだが、シカにはあまり似ていない(と私=棚橋は思う)。
話し方が丁寧で少しゆっくりな……ちょうど聞き入りやすい一定のスピードを保ち淡々と、でも温かみがあり、ときにユーモアを交えるので、聞き手は子どもが昔話でも聞いているときのように、心地よく聞き入ってしまう。なによりも話している様子が、いつもとても楽しそうである。
ゆったりペースで解説する高槻先生
楽しそうに説明する
その、淡々、堂々、のほほんと自分のペースで活動する感じが、タヌキのイメージに重なる気がする。顔はもちろん似ている(と思う)。
子供と話をする高槻先生
★魔法のバッグ
先生は子供観察会のとき、自分のことを「タヌフン博士」と紹介していたから、以下はタヌフン博士と呼ぶことにする。タヌフン博士の生態(…というほどは知らないが)はおもしろい。
まずスタイルは、薄茶色系の帽子に、たくさんポケットのついたベスト、チノパン、チェックのシャツが定番だ。
そしてリュック。このリュックの中からは、ドラえもんのポケットさながらに、ピンセットやルーペやポリ袋、ティッシュ、スケッチブックなどたくさんの便利グッズが登場する。どの道具も、コンパクトにきれいに整理されているので、いつでもパッと必要なものが出てくるのである。片付けが苦手な私はいつも関心してしまう。いろんなこと見習いたいと思い、観察会のときにはジップロックのような小さなビニール袋やビニール手袋は、私も持ち歩くことにした。
あるとき観察会を終えたお昼にカレーを食べに行った際、ビニールを取り出し、食べきれないナンを袋に入れながら
「この袋はこういうときにも役に立ちます」
と言っていた。なるほど。
これと対照的なのが、観察会に参加している探検家で医師の関野吉晴先生。関野先生はタヌフン博士と同じ大きさのリュックの中をいつも探りながら
「あれ?どこにいったかな…持ってくるの忘れたかな…?」
とお茶目にはにかみ笑顔を作りながら、なかなか必要なものが出てこない。この二人の先生を比較観察するのも観察会の楽しみだ。この二人は、玉川上水を通りすぎる人の視線を気にもとめず、仲良くうんちをつついていたことがある。
★100均のボード
タヌフン博士は最近はA4サイズほどのホワイトボードがお気に入りだ。観察会では散策をしながらたくさんの人に植物の解説をする。その際、多くの人に少し離れていても見える大きさで、ボードに図や文字を描きながら説明をしてくださる。「これは100均で買ったのですが、なかなかいい」と近くにできた100均もお気に入りのご様子。タヌフン博士がイギリスのBBCに取材されたとき、「狸」という漢字を100均のボードに書いて意味を説明し、取材クルーを喜ばせていた。タメフン場で糞を拾うときには日本の「割り箸」が活躍し、これもイギリス人を喜ばせていた。
100均で買ったボードで説明するタヌフン博士
★ネズミの死体事件
ある日、私がひとりでタヌキ調査のために津田塾大学を散策していたとき、茶色の小さなネズミが仰向けに死んでいるのを発見した。まだ死んだばかりのようで、とてもきれいな状態だった。それを一応写真に撮り、帰ってから報告のひとつとしてタヌフン博士にメール送信した。
すると
「できればそれをひろって私にください」
という。迷ったが、次の日再び拾いにいくと、ネズミはひどく傷んでいた。1日経っているため、体いっぱいに虫がうごめいている。意を決してビニール手袋をはめてうごめきを手に感じながら拾った。タヌフン博士の指示に従い、例の袋に5重くらいにいれてお菓子箱に入れて周辺をテープでとめた。
その日の夜、駅の改札でタヌフン博士に渡すことになり、そこまで私は車で移動したのだが、車中はなんとなく異様な匂いが立ち込めた。改札にいたタヌフン博士はちょっと笑みを浮かべながら
「ご苦労様です」
と嬉しそうにしている。箱を渡しながら、傷んでいる様子や匂いについて報告をすると
「あぁ、それはウジ虫ですね」
と当たり前のように言う。私は思わず
「ヒヤー!!!!」
となった。これをどうやって処理するのか尋ねると
「ちょうど今、亀の骨格標本をつくるために庭で亀を煮ているので、その鍋でグツグツ煮て骨格だけを取り出します」
という。この人はどういう毎日を送っているのか。
タヌフン博士が作ったネズミの骨格標本
★「速い!」
タヌフン博士は多くの本を出されている。どうしてそんなことができるのか不思議に思うが、その理由がわかってきた。
観察会を終えたその日の夜までには、観察会であったことを文章にし、写真とともに報告書を作成してしまう。データ化したものも、次の日くらいには送られてくる。このスピードは本当に脱帽ものだ。そして周囲は(特に写真記録係は)、このスピードについていくことがやっとの状況で、毎度「棚橋さん、写真を早く送ってください」とせっつかれることとなるのだった。
(つづく)
よくペットは飼い主に似るというが、高槻先生はタヌキに似ている。というか、「タヌキの親分」という感じだ。もともとはシカがご専門であるとのことだが、シカにはあまり似ていない(と私=棚橋は思う)。
話し方が丁寧で少しゆっくりな……ちょうど聞き入りやすい一定のスピードを保ち淡々と、でも温かみがあり、ときにユーモアを交えるので、聞き手は子どもが昔話でも聞いているときのように、心地よく聞き入ってしまう。なによりも話している様子が、いつもとても楽しそうである。
ゆったりペースで解説する高槻先生
楽しそうに説明する
その、淡々、堂々、のほほんと自分のペースで活動する感じが、タヌキのイメージに重なる気がする。顔はもちろん似ている(と思う)。
子供と話をする高槻先生
★魔法のバッグ
先生は子供観察会のとき、自分のことを「タヌフン博士」と紹介していたから、以下はタヌフン博士と呼ぶことにする。タヌフン博士の生態(…というほどは知らないが)はおもしろい。
まずスタイルは、薄茶色系の帽子に、たくさんポケットのついたベスト、チノパン、チェックのシャツが定番だ。
そしてリュック。このリュックの中からは、ドラえもんのポケットさながらに、ピンセットやルーペやポリ袋、ティッシュ、スケッチブックなどたくさんの便利グッズが登場する。どの道具も、コンパクトにきれいに整理されているので、いつでもパッと必要なものが出てくるのである。片付けが苦手な私はいつも関心してしまう。いろんなこと見習いたいと思い、観察会のときにはジップロックのような小さなビニール袋やビニール手袋は、私も持ち歩くことにした。
あるとき観察会を終えたお昼にカレーを食べに行った際、ビニールを取り出し、食べきれないナンを袋に入れながら
「この袋はこういうときにも役に立ちます」
と言っていた。なるほど。
これと対照的なのが、観察会に参加している探検家で医師の関野吉晴先生。関野先生はタヌフン博士と同じ大きさのリュックの中をいつも探りながら
「あれ?どこにいったかな…持ってくるの忘れたかな…?」
とお茶目にはにかみ笑顔を作りながら、なかなか必要なものが出てこない。この二人の先生を比較観察するのも観察会の楽しみだ。この二人は、玉川上水を通りすぎる人の視線を気にもとめず、仲良くうんちをつついていたことがある。
★100均のボード
タヌフン博士は最近はA4サイズほどのホワイトボードがお気に入りだ。観察会では散策をしながらたくさんの人に植物の解説をする。その際、多くの人に少し離れていても見える大きさで、ボードに図や文字を描きながら説明をしてくださる。「これは100均で買ったのですが、なかなかいい」と近くにできた100均もお気に入りのご様子。タヌフン博士がイギリスのBBCに取材されたとき、「狸」という漢字を100均のボードに書いて意味を説明し、取材クルーを喜ばせていた。タメフン場で糞を拾うときには日本の「割り箸」が活躍し、これもイギリス人を喜ばせていた。
100均で買ったボードで説明するタヌフン博士
★ネズミの死体事件
ある日、私がひとりでタヌキ調査のために津田塾大学を散策していたとき、茶色の小さなネズミが仰向けに死んでいるのを発見した。まだ死んだばかりのようで、とてもきれいな状態だった。それを一応写真に撮り、帰ってから報告のひとつとしてタヌフン博士にメール送信した。
すると
「できればそれをひろって私にください」
という。迷ったが、次の日再び拾いにいくと、ネズミはひどく傷んでいた。1日経っているため、体いっぱいに虫がうごめいている。意を決してビニール手袋をはめてうごめきを手に感じながら拾った。タヌフン博士の指示に従い、例の袋に5重くらいにいれてお菓子箱に入れて周辺をテープでとめた。
その日の夜、駅の改札でタヌフン博士に渡すことになり、そこまで私は車で移動したのだが、車中はなんとなく異様な匂いが立ち込めた。改札にいたタヌフン博士はちょっと笑みを浮かべながら
「ご苦労様です」
と嬉しそうにしている。箱を渡しながら、傷んでいる様子や匂いについて報告をすると
「あぁ、それはウジ虫ですね」
と当たり前のように言う。私は思わず
「ヒヤー!!!!」
となった。これをどうやって処理するのか尋ねると
「ちょうど今、亀の骨格標本をつくるために庭で亀を煮ているので、その鍋でグツグツ煮て骨格だけを取り出します」
という。この人はどういう毎日を送っているのか。
タヌフン博士が作ったネズミの骨格標本
★「速い!」
タヌフン博士は多くの本を出されている。どうしてそんなことができるのか不思議に思うが、その理由がわかってきた。
観察会を終えたその日の夜までには、観察会であったことを文章にし、写真とともに報告書を作成してしまう。データ化したものも、次の日くらいには送られてくる。このスピードは本当に脱帽ものだ。そして周囲は(特に写真記録係は)、このスピードについていくことがやっとの状況で、毎度「棚橋さん、写真を早く送ってください」とせっつかれることとなるのだった。
(つづく)
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