世界一面白いミュージカルの作り方

早稲田発小劇場系ミュージカルプロデュースユニットTipTapのブログです。
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お金はなくても

2012-10-25 01:04:12 | tiptap
そろそろNY生活も2ヶ月目に突入です。
今学期の学校も半分が過ぎた事になるようです。
まあ学校の方はなんとなく勝手もわかり
顔見知りもできてそれなりにやってます。

先週はHipHop音楽劇の舞台稽古の見学にはじまり
ゲネまでみせてもらったものの
なかなか自分の好みと合わない作品だったために
見せてもらったのに終わってからうまく話せなかったなあ。

小さな小さな劇場でしたが昨日のnew york timesには
しっかり劇評が載ってました。
東京だと「劇」小劇場ぐらいの感じかな。
小さな劇場でもきちんと劇評が載るんだから
やっぱりこっちの人の演劇に対する感心は凄い。
内容は・・・まあ多くは語れません。

さてこの一週間は6本も観れました。
観劇費がかさんで大変ですが
6本中正価で観たのは1本だけ。
その一本は売り切れ作品でキャンセル待ちで仕方なく
全額払うことに。

それでも6本観て191ドル。
日本円だと1万7000円ぐらいでしょうか。

OFFの作品だと学割がきいてかなり安くなります。
ONの作品でも運が良ければラッシュが買えるので
本気で並べばかなり格安で観れちゃうわけです。

てなわけで大体一月の出費がわかりあまりの恐ろしさで
財布の紐をかなり閉めつつもなんとか劇場に足を運んでおります。



「DETROIT」
この作品にキャセル待ちで並びました。
なぜかというとなんと
「FRIENDS」の「ロス」こと
「David Schwimmer」が出てるのです。
かなりフレンズにはお世話になった私なので
これは観るしかないと劇場に向かったのですが
まあ人気作品らしく全日SOLDOUT。
来たついでにキャンセル待ちで並んでみる事に。
運良く奥さんと来る予定が奥さんが来れなくなったらしい人から
チケットを買う事が出来て観る事が出来ました!
作品はコメディータッチのドラマでした。
いやいやコメディーのストレートはなかなか言葉が難しい。
基本的なことはわかるのだが細かい所が聞き取れないし
笑い声にかき消されて聞こえない聞こえない。
それでも「ロス」が出て来た時にはちょっとこみ上げて来るものが・・・
目の前にあの「ロス」がいるんですからね。

脚本はピューリッツア賞ノミネート作品。
怪しいお隣さんとの交流によって現代アメリカ社会を描く社会派コメディー。
盆舞台の表と裏を使って飾り変えをしていく見せ方。
なんだか日本的。
もっと言葉がわかれば面白かっただろうに。
シットコムを観てるようで楽しい時間でした。
でもちょっと途中からだれた感。


「CLOSER THAN EVER」
80年代の終わりに上演されてかなりのロングランを行った
OFFのミュージカル作品。今回はリヴァイバル上演。
全編歌で「bookless musical」というジャンルを確立させた作品らしい。
出演者は四人でそれぞれナンバーごとに違うキャラクターとして登場する。
ただどのキャラクターもどこか中年の哀愁を帯びており
中年に入りかけ、まっただ中、そろそろ老人・・・
まあ今で言うアラフォーな人たちがそれぞれの中年あるあるを歌う。
歌唱力が半端なくて感動しました。
歌い手はマイクをつけずにピアノとウッドベースのみ。
曲後とにささやかなステージングがついてますが
小洒落てて好感がもてる。音楽も基本的にはよかったなあ。
途中いきなりピアノの人が歌い出したりベースの人が芝居したりと
プレイヤーのレベルの高さにもびっくり。
とりあえずキャストの歌のうまさとキャラクターであっという間に時が過ぎます。
この形式で二幕構成だから大変だよなあ。
二幕になるとやはりやや声に疲れが。
もう少し詰めて1幕ものにしたほうが本当はいいんだろうなあ。
でもとても上品な(内容は下品ですが)良い時間でした。



「FALLING」
自閉症の18歳になる息子を抱えた家族の物語。
家族物には弱いのでかなりやられました。
わけあって心に傷を持つ人と接する機会が多いので
この手の話には本当に心をつかまれてしまいます。
個人的なベストミュージカルは「next to normal」という作品で
これも精神疾患を持つ母親を持った家族の話でして。
このジャンルに弱いのです。
芝居がとてもよかった。
自閉症の息子を演じる俳優は恐ろしほどリアルに感じられて
家族に暴力をふるうシーンなどは恐ろしさと悲しみと色んな
感情がこみあげてきた。母親の愛情と立ちはだかる現実。
孫の病状を理解して祖母が母親に神様に祈ればなんとかなると本気で語るところなど
とてもアメリカ的なアイロニーを感じた。
悲劇ではなくあくまでハートウォーミングストーリーなのだが
現実の厳しさ、苦しさ、葛藤がきちんと描かれていて
脚本、俳優ともに素晴らしかった。
セットもとても写実的に家の中を表現していて本当にありのままの
家族を傍観している様な気になる。答えはでないが涙がでた。


「FUN HOME」
同名ヴィジュアルノベル(マンガ小説)のミュージカル化作品。
この本かなり売れたらしく日本でも翻訳版が売られてるそうです。
読んでみたいなあ。
この作品はPublicTheaterの製作で実験作品の上演というシリーズ。
いわゆるまだトライアウト状態だそうで
開演前に演出家が出て来てその旨を伝えてました。
因にこのPublicTheaterは由緒ある団体であの「コーラスライン」を製作したとこです。
内容はレズビアンのマンガ作家が自分の家族についてのビジュアルノベルを書くという筋。
父親はカミングアウトしなかったゲイで結局自殺してしまっている。
幼少期の主人公、大学生に主人公、今の主人公の三人が
同時に舞台上に存在してそれぞれの時間を過ごして行く。
なかなか面白かった。音楽も心地よくていい。
映像の使い方がとても上手でよかった。
マンガ作家である主人公が描くイラストを上手く使えていた。
セットはまだなんだか作りかけのような感じで
俳優達は客席のよこの椅子に座って出番を待っている。
なんだか不思議な感じである。
それでも舞台の上にはきちんと演劇的空間が見える。
感心したのは主人公の幼少期を演じる子役だ。
本当に自然でコミカルでかわいらしい。
日本の子役はこの自然さがなかなか出せない。
きっとあの子自身が楽しんで演じてるからいいのだろう。
こんな実験的に作品を上演できる環境が
日本にもあればいいなと心から思う。
これも家族物。やっぱり心にくる。


「THE OTHER JOSH COHEN」
OFFのコメディーミュージカル作品。
とても面白かった。
出演者6人で主人公と主人公のナレーター以外は
それぞれ楽器を担当していて入れ替わり立ち代わり
キャラクターを演じて行く。
ほとんどがロックナンバーで演奏もキャストだけで
行われるのだから本当に俳優達は素晴らしい。
経歴を観るとミュージシャンもいれば俳優もいる。
垣根がないのがまたNYらしい。
「ONCE」も俳優が全編演奏するがこのような形式での上演は本当に難しいと思う。
音楽的クオリティーを劣化させない程俳優達が演奏できることはなかなかない。
みんな芸達者だなあ。
内容は泥棒に入られてニールダイヤモンドのCDだけしか手元に残らなかった主人公に
高額小切手が同じ名前の宛先と間違って届いてしまう。
全てが実話ではないらしいが小切手のくだりは実話を元に書かれたらし。
ナレーターがスタンダップコメディーのように語りとても面白かった。
このナレーターが本と音楽を書いて出演までしているのだから素晴らしい。
直前まで「PETER AND THE STARCATCHER」に出演していたらしい。
本当に才能豊かである。馬鹿馬鹿しくもどこか哀愁漂ういい塩梅のコメディー。
このぐらいのさじ加減なら日本でもなんとかなるのかな。

「THE PERFORMERS」
ONのストレートコメディー。
プレビューの初回に観劇。
ラッシュが買えたのでかなり格安で観劇。
ポルノアウォードの授賞式に再開する高校の同級生。
一人はポルノスター、一人は新聞記者。
まったく違う二人だがそれぞれのパートナーと
それぞれの方法で愛を確かめ合って行くロマンチックコメディー。
まさ豪華なシットコム。
客席は最初から最後まで割れんばかりの爆笑。
笑えば笑う程こちらは言葉が聞き取れず悔しい所ですが
とても楽しい作品でした。
作品全体のトーンがとてもポップでセットや衣裳が小洒落ててなかなか楽しめる。
想像するにかなりお下劣なシーンが多々あったが
子供は観れないけど大人がこぞって観に来そうである。
日本だとこういうテーマは扱ってもどこか暗くどろどろとした
雰囲気になりがちだがこのあっけらかんとしたポップさには
本当に元気をもらえる。上品さにはかけるがとても面白い作品になると思う。
脚本家は現役の大学院生。
カナダ出身で去年OFFBROADWAYデビュー。
異例の早さでONにデビューとのこと。
同じ学生VISAホルダーとしては本当に凄いなあと思う。
言葉の壁がなければこうやって実力ある人がチャンスをつかめるのがNY。
早く壁を取っ払っていつの日か勝負してみたいものです。


先週はOFFを中心に観たんですがなかなか良作にあたった気がします。
作品選びも結構難しくて事前のリサーチがかなり物をいいます。

さて今週はどうなることやら。
気になる作品もあくことだし楽しみ楽しみ。


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3 コメント

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読むのが楽しい! (judy)
2012-10-25 22:45:21
時間がないとなかなかじっくり読めないのですが
読み始めると一つ一つの舞台のお話を伺うのが楽しくて楽しくて(^_^)
もっとお聞きしたい、これは私も見てみたい!と思ってしまいます。

今回の記事だと「FALLING」と「THE OTHER JOSH COHEN」、「THE PERFORMERS」の感想に心惹かれました。

「next to normal」、上田さんの言葉で
トニー賞の授賞式でのパフォーマンスを動画で見てみたら、凄かった!!
たった1曲なのに何だか涙が出てきてしまって、
思わずアマゾンでCDをぽち。
これから英和辞書とお友達にならなくては…
日本での上演も決まっているみたいですね。
足を運ぶことができたらいいなぁと思います。

それにしてもNYは、観劇にかかるコストがその気になれば節約できて、ハイレベルなものが見られる土地なんですね。うらやましいなぁ。
Unknown (ikko)
2012-10-27 15:22:58
next to normal は本当に良い作品なのでおすすめです。
こちらはどうもかなり大きなハリケーンがやってくるとかでなんだか物々しくなっております。
自分の作品を発表できないぶんせめてNYの劇場の雰囲気が届けばいいなあと思ってます。
読んでくれてる方がいるのは励みになります。
どうぞまたお付き合い下さい。
上品、アイロニー、バランス。 (N.N)
2012-10-27 18:36:47
今週も沢山感想をありがとうございます!
もう、NY生活二ヶ月目突入ですか?
何だか速い!!中身の濃い毎日のご様子ですね☆

今週は、「CLOSER THAN EVER」、「FALLING」、「THE OTHER JOSH COHEN」の三作品を、特に観てみたいなと思いました。
下品な内容なのに上品な時間と感じられるとか、
アメリカ的なアイロニーとか、
馬鹿馬鹿しくもどこか哀愁漂ういい塩梅のコメディー。など、
上田さんの感想に凄く惹かれます。

「next to normal」は、ネットで色々拝見してみました。
まず俳優の方々の素晴らしさ!!
しっかりこの舞台を観たい!!・・・と心から思いました。
(まず英語勉強しなくてはなぁ・・・)

そんなこんなで、毎回、ブログ更新とても楽しみにしています。
でも、お体も心配です。
自分のことを書かせて頂いてしまいますが、
私もしばらくアゴや耳が痛かった事があって、
顔の右半分、頭の右、右耳、右顎。かなりの痛みでしたが、原因は右奥歯を異様にかみ締めていた為でした。
睡眠中に特に力が入り過ぎていたらしく、
歯科医でマウスピースを作り、ロキソニンと筋肉弛緩剤(何か恐ろしい響きですが・・・)を処方され服用していました。
仕事の環境が変わってストレスが溜まっていたらしいのです。
今は全然大丈夫なのですが、人間の体って色々繋がっているのだなと思いました。
上田さんの場合とは違うかもしれませんが、もしかしたら歯も関係していらっしゃるかも・・・。

寒くなりますし、早く良くなりますように祈ってます(^-^)/



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