なんでもぐもぐもぐ= (なんでも-も)+(も+ぐ)+もぐ✕2

専門のマシン知能に限らず、身辺で感じたこと、なんでも、なぜ、という観点から
もぐもぐもぐ(深堀り)を試みるブログです.

<>感情表出にいたるまでの動機形成

2009-09-10 22:17:04 | 日記
前回のブログでは、感情や行動の側面から脳機能を研究
しているAntonio Damasioの研究を紹介しました.

判断は感情経験によって研ぎ澄まされる、その感情経験は、
社会性などに伴って得られるものだと考えられます.

生物の中でも五感を使って'明示的'に感情表現可能なのは
基本、人間の得意技ですから.
もちろん、自律神経機能をもっているのは人間のみではなく
爬虫類などもある刺激に対して攻撃行動をもったりするので、
いわゆる怒りのような感情(自律神経活動)はあるのです.

しかし、怒り以外にもうれしいや喜びなどのポジティブな
感情を表現し、時には、微妙なニュアンスでそれを伝え、
時には、誰でもわかるよう伝えるなど、実に多様性に満ちた
感情表現は人間ならではのものだといえるでしょう.

このような感情表現は、人に近いサルなどでも難しいのでは
ないでしょうか.(毎日サルの顔をじっとみていると若干
わかる、という人もいるようですが・・・)

ところで、人への親和性を向上させる目的で感情表現などを
ロボットに実装させようという試みがなされています.
今は、不況なので、そのような研究に対する投資は下火、
という状況もありますが、マシンを人に近けようとすると
どうしても避けて通れない課題であることは以前にもお伝え
したとおりです.

実際、人の感情表現と社会性の関連性についてはすでに多く
の知見がありますね.

典型的なのは、自閉症児のケースです.
自閉症の原因は、先天的な脳機能障害によるもの、とされて
おり、その多くは遺伝体因子が関与すると考えられています.

理化学研究所内のチームは、神経細胞の生存や分化に重要な
神経栄養因子の分泌を調節する遺伝子(CADPS2遺伝子)の
異常が、自閉症の発症メカニズムに関係しているとの研究成果
を最近発表しています.

脳機能の障害の観点からいえば、”ミラーニューロン”の
機能低下が指摘されいます.
ミラーニューロンとは、他者の動作を観察している際に自分
が動いている時と同じように反応する神経細胞(ニューロン)
で、イタリアにあるパルマ大学のGiacomo Rizzolattiらの
研究グループにより、1996年に発見されました.

ヒトのミラーニューロンは大脳のいくつかの部位に存在して
いると見られており、例えば、前帯状皮質の一部の領域は、
自分の痛みだけでなく、他人が痛がっている場面を見た場合
も同じように反応することが確認されていています.

「脳のなかの幽霊」の著書で有名なV.S.Ramachandranらの
研究チームは、対人スキルや共感の欠如、言語障害、模倣が
上手く出来ない等の自閉症の特徴はすべてミラーニューロン
の機能不全と同じ特徴を持つという説を世に出しました.

さらに、Ramachandranのチームで出された「突出風景理論」
(salience landscape theory)と呼ばれる仮説で、大脳の
感覚野と扁桃体のあいだの連絡が正しく行なわれない為に、
外部刺激に対する反応が正常に行なわれず、極端な感情反応
を示すことになるという説明も発表しています.

これらの説ですべてかたがつくわけではないのですが、
こうした知見を将来ロボットの研究開発に生かして自閉症児
を救済するこころみがなされています.

それに関連して・・・

EUが進めているFeelic Growingというロボットにユーザの
情動行動に反応できるようにすることを目標とする研究
プロジェクトがあります.

Feelic Growingとは、感じる、交流する、表現するなどの
学際的土壌における総合的な開発アプローチの略語で、
新しい環境や環境の変化が適応できるロボット開発を
手がけているようです.

ユーザ(人)とのインターラクションが可能なロボットは、
人の気分で歩き方が変わることを区別したり、飼い主が
見つけられると急に態度がおとなしくなるなどの感情表現
をもつことが要求されています.

このような人とマシンがインターラクション(交流)の中
でやり取りすることで生ずる複雑性に対し、知覚し、理解
し、何らかの感情表出を行なうためのルール作りやマシン
学習などによるモデルが使われています.

※モデルとは、ある状況を仮定した場合、それに対応した
感情が表されることを予測するものをいいます.

一部のロボット研究者は、社会に適応が難しい人たちへの
治療に役立てられるかどうか検討しているようです.

たとえば、自閉症児と健常児がロボットにどう反応するか
を調査している研究所がパリにあります.
重症度の自閉症児は、ロボットが悲しみの表情をすると
悲しみの表情を浮かべ、微笑むと嬉しそうな反応を見せた
ようです.
また、ロボットが表している感情がどれかを認識すること
も可能となって、と報告されています.

なぜ、自閉症児は、ロボットだと素直に反応できて人だと
ダメなのでしょうか?以前から、この疑問がわきます.

人とは違うから?
でも人とは形が似ている

なぜ、ロボットに感情表現させると、インターラクション
できるのか、については、なぜ、人をみて反応しない
ミラーニューロンが反応しするのか・・・

単純ですがとても不思議なのですね.

でも人間同士でも話しをしたくなる人とそうでない人との
違いが実際あるのですから、なんらかの感覚刺激を受けて
ある(感情)行動を走らせたり、ストップさせたりする
’動機’を作る部分が大事なのではないかと思います.

たとえば、仮に”かわいい”と知覚すると、その事物が
関心や興味の対象となったりして話しかけたくなります.

そうすると”かわいさ”とは何? となって、深堀が必要
のようです.

では.
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