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専門のマシン知能に限らず、身辺で感じたこと、なんでも、なぜ、という観点から
もぐもぐ(深堀り)を試みるブログです.

麻薬と脳、および知能との接点

2009-08-15 22:10:43 | 日記
最近、芸能人をめぐって覚醒剤騒ぎが巷を賑わしています.

専門ではないのですが、これに纏わる話しを今回は述べます.

以前、脳の研究絡みで、関連論文誌等をあさっていたときに、
米国の心理学会において2003年に発表された、
「Addiction Is a Brain Disease, and It Matters 」
という論文が興味深かったのを覚えています.

この論文は、Alan I. Leshnerが執筆したもので詳細は、
http://focus.psychiatryonline.org/cgi/content/abstract/1/2/190
から閲覧可能.

Addictionというのは、日本語で中毒にあたるわけですが、
この論文が示唆するとおり、慢性的なドラッグ中毒は、
行動に支障をもたらし、まともな社会生活さえ営めなく
なってなってしまうほどの悪影響を脳に与える、という
ことが示唆されています.

つまり、ドラッグへの依存症は、脳の機能を壊してしまう
ということです.脳は学習などの効果によって、その機能は
ある部分可変的でもありますが、そのためには、相当な時間
と本人の強靭な意志が必要ですので、ほとんど機能回復は
至難であるといえそうです.

昔、子供の頃に祖母と山へいったとき、ケシの木があること
を教わったのですが、赤や白、紫など美しい花を咲かせます.
落花後の子房が膨らんだものがケシ坊主で、それに切り傷を
入れて出てくる乳汁から麻薬の阿片が取れます.

阿片の歴史は古く、記録書によれば「少量では痛みを和らげ、
眠りを誘い、消化を助ける.
しかし、飲み過ぎると昏睡状態になり、死に至ることもある」
と書かれています.

鎮痛だけでなく、快感、恍惚感、浮上感など出現するようです
が、麻薬特有の中毒(依存)症状が伴います.

このように、使い方によっては、毒になるわけですが、
一方で、痛みを和らげる鎮痛作用があるので、医学の世界で
は麻薬は重宝されています.

自身は、通年、全身麻酔をして胃の内視鏡検査をするのですが
先生が、麻酔の薬を投与するときのスーとした感覚がなんとも
心地良く、それが快感になっていたりします.

もちろん、年に1,2度の投与なので、中毒や依存という所
までは至らないのですが、脳がその感覚を覚えてしまうよう
ですね.

この”感覚記憶”が中毒や依存を生むのではないでしょうか.

本来、脳は、ホメオスタシス(恒常性)を満たす傾向がある
といわれ、痛みなどの苦痛を和らげるための脳内麻薬が存在
しています.

たとえば、”エンケファリン”や”ベータ・エンドルフィン”
という物質は鎮痛作用が高く、モルヒネの6.5倍もある、と
いわれています.鎮痛作用のみならず、快感作用もあって、
苦痛のあとの幸せ感や満足感を生むのに貢献しています.

よくいわれるマラソンもそうですね.
毎日毎日続けることは苦痛ですが、苦痛が快楽などとなって
走らないといられない依存症になってしまうようです.

このとき脳の中でどのような作用が起きているのでしょうか.

脳の中には、ニューロンという神経細胞があります.
これらニューロンを鎖で結んでいるのはシナプスと呼ばれて
います.シナプスには神経伝達物質という液体ホルモンが
存在していて、痛覚もこの仕組みで起こるのですが、
脳内麻薬はこの痛覚神経を遮断(ブロック)します.

痛覚だけをみると、麻薬の役割はブロッキングなのですが、
以前にも述べたように人間の脳は、知能と関係が深い大脳が
あって、もう少しマクロ的にみると、前頭野を中心とした
脳内のネットワーク -  前頭葉の前部、下部と、側面
から前へ張り出した側頭葉との連合で、知覚した感覚を過去
の記憶と照合し、判断し、さらに運動系に指令して行動を
起こさせるメカニズムとなっていると考えられています.

これは、たとえば、前出の気持ちよくなる麻酔という感覚
を記憶し、その感覚を再び繰り返すような行動を起こすよう
関連部位に指令を送る、ことを意味します.

つまり、人の脳とは本来、苦痛よりも快楽を好む特性が
あると思えます.そして、いったん快楽を覚えたらそれを
繰り返す、という習性があるようです.また、快楽は、
うれぴー、や楽しいなどの感情を伴います.

これが、addictionであり、人はなぜ、ドラッグ中毒や依存
症に陥るのか、という脳内の本質的な仕組みを理解しつつ、
もう一つの観点は、addictionに対するリスクを脳がどう
捉えるかが、実際に行動を起こすかどうか、がキーとなる
のでしょう.

これについては、脳はシミュレーション機能をもっていて、
仮に、ドラックを使用したらどうなるのか、使用しても
中毒や依存症にならない方法は?など、リスク管理する
機能ももっています.

自己経験以外に、他人の行動や結果などをかんがみて自己
の行動に投影する能力、反面教師的な側面をもっていると
考えられるでしょう.

つまるところ、リスク管理には、事態の「予測」という
部分が深く関与しています.

人の知能は、実際に行動する前に事態の予測を可能とする
ことで、自己に迫るリスクを最小化する、という形で進化
した、といわれています.

「予測」の実現は、前出の前頭連合と密接に絡んでいて、
予測が当たることで得られる”快感”という経験を味わっ
た経験のある方も多いでしょう.

たとえば、投資、為替などのファイナンスなどですね.


機会があればまたこれについて述べたいと思います.
コメント
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