山岳文学永遠の古典ともいわれる北杜夫の”白きたおやかな峰”を
読んだ。
1965年に行われたカラコルム(ディラン登頂)遠征隊に
ドクターとして加わった北杜夫氏の作品だ。
小説であり、登場人物も、すべて仮名ではあるが、非常に忠実に
書かれており、面白く読めた。
登山家の方の愛読書の一つのようだ。
読んでみて、まず、その情景描写の美しさに驚いた。格調高いのである。
一方、会話は、非常にフランクであり、現地のポーターの片言の
日本語や英語が機関銃のように出てくる。
ドクターであるから、ベースキャンプでの待機が多く、実際の登頂アタック
のような場面は、あとから話を聞いて書いているのだろうが、その危険に
面した場面が目に浮かび、名作と言われる理由がわかる。
さて、この作品は、登頂の成否を告げずに終わっている。
最後のアタックした二人のうち、一人は、体調も悪くなっており、一人だけで、
危険を冒してアタックしている。天候は悪くなりつつある。体力の消耗は極限に
達している。トランシーバーは風で飛ばされ、ベースキャンプとの交信は途絶えた。
上記状況の中、不幸な結末を予測するのだが、何も書かれてないのだ。
ただ、最後の解説の最後に撤退したことが追記として書かれている。
遭難者は出なかったのだろうか?全員無事だったのか?と考えたのは私だけでは
なかったようだ。
この遠征に参加した登山家の一人が自身のブログで、全員死なずにすんだと書いて
おり、私同様、ホットした読者がいたようだ。