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試写会「宮廷画家ゴヤは見た」

2008-09-27 16:08:33 | 映画感想
2008/9/26、有楽町、よみうりホールでの開催。

ここではいつも1階前列中央に陣取るのだが、
1階中央が満席だったため、珍しく2階席を選んだ。
スクリーンが小さくなってしまうデメリットはあるが、
傾斜のため、前席は全く気にならなかった。

さて、こういう歴史物の場合、当時の時代背景を知らないと、
話がよく見えない状態になりやすい。
このころのヨーロッパ、とりわけスペインの置かれた状態には疎かったため、
観ていた段階では、映画の意図するところがよくわからなかった。

**

原題、GOYA'S GHOSTS。
ナタリー・ポートマン、ハビエル・バルデム、ステラン・スカルスガルド。

時代は18世紀末頃のスペイン。

少し歴史をおさらいすると、
ゴヤ、フランシスコ・デ・ゴヤ(1746~1828)は、1786年にカルロス3世、
1789年にはカルロス4世の宮廷画家となったが、1792年に病により聴力を失う。

一方、1789年にはフランス革命が起き、
1793年にはカルロス4世の盟友ルイ16世が処刑されている。

1807年、ナポレオンがスペインに進攻、1808年にはカルロス4世は退位、
多少の紆余曲折はあったが、
ナポレオンの兄のジョゼフ・ボナパルトがホセ1世として即位した。

ホセ1世は異端審問の廃止、封建制の廃止などで近代化を進めたが、
教会からは反発を受けた。
また、駐留フランス軍による圧政もあり、民衆の支持を失う。

その後、スペイン、ポルトガル、イギリスの連合軍が1808年に反攻、
一旦はフランス軍を撤退させる。
ゴヤもこのときフランスに亡命している。

しかし、ナポレオンがフランス軍を率いてスペインに進攻、
1809年にはスペイン軍が壊滅、イギリス軍は撤退。

イギリスはなおもスペインに再侵攻、フランスもまた再侵攻など、
スペインを舞台にした戦争は続く。

1812年、ナポレオンがロシア進攻で敗退し、
フランス軍はスペインからも撤退を余儀なくされた。

この結果、いわゆる半島戦争は1814年に終結したが、
スペインはその後も1850年ころまで内戦が続いた。

**

1790年ごろ、教会ではゴヤ(ステラン・スカルスガルド)の画集を
異端かどうか議論していた。

ゴヤは宮廷画家として著名であったことから、異端審問にはかけられなかったが、
ロレンツォ神父(ハビエル・バルデム)は一般人への異端審問の強化を唱える。

ロレンツォ神父と同時期にゴヤに肖像画を書いてもらっていた
イネス・ビルバトゥア(ナタリー・ポートマン)は、
居酒屋で豚肉を食べなかったという理由で、
隠れユダヤ教徒の疑いで異端審問にかけられる。

拷問による自白強要の末、イネスはユダヤ教徒であると告白し、
獄中に囚われの身となる。

イネスの父トーマスは、異端審問が拷問であり、
嘘の告白を強要するものだとして、
ロレンツォを拷問に掛け「私はチンパンジーとオランウータンのあいの子である」
との告白書にサインさせる。

脅迫と金の力でイネスを釈放させようとしたトーマスが
ロレンツォに託した工作は失敗に終わり、
トーマスは告白書を暴露するが、イネスは釈放されず、
ロレンツォを逃亡させるだけになってしまった。

時代はフランス革命を経て15年の後、フランス軍がスペインに進攻、
フランス軍は、ナポレオンの兄、ジョゼフを即位させ、
スペインの解放を進めるとした。

その先導は、フランスに逃れていたロレンツォその人であり、
異端審問は廃止、カソリックの司教は投獄。
異端者は監獄から解放され、イネスも釈放される。

しかし、既に精神を病んでおり、フランス軍進攻の間に一家は皆殺し、
全資産は略奪されていた。
やむなく、イネスはゴアを訪ねる。

その変り果てた風貌に驚くゴアだったが、
イネスの告白は更にゴアを驚かせるに十分だった。

**

映画自体は散漫で、何を言いたいのかあまりよく分からなかった。
キャッチコピーのいう「それは、立ち入り禁止の、愛」に至っては、
勘違いしているとしか思えない。

ナタリー・ポートマンを物語の中心に置くとしたら、
テーマは「スペインの異端審問」であろう。

何の罪もない一市民が、異端審問の「被害」に遭い、
救われることなく時代の波に翻弄される。

禁断の愛とか、危険な愛ではなく、異端審問の非道さを明らかにする、
と言うことではないのか。

**

物語は、イギリス、スペイン、ポルトガル連合軍の進攻に加え、
スペイン民衆の蜂起により、フランス軍を撃退し、
ロレンツォを処刑するところで終わっている。

先にも書いたように、このとき、国王派と思われた多くの人は
スペインを捨てフランスに逃げており、ゴアもその一人だった。

「異端審問」はそもそもキリスト教徒の中で
誤った信仰=異端信仰を持つものを糾弾するものだった。

当初教会には処罰する権限がなかったことから
大した実効はなかったようだが、
政治的権力者が異端者の処罰に加担するようになり、変質していった。

当時の異端審問では、今日考えられているほどには
死刑になる者は少なかったとされる。

スペインの異端審問は、また少し変わっていて、
ユダヤ教やイスラム教から改宗したキリスト教徒を
異端として裁くことが主眼だったとされている。

これは、異教徒による混乱を防ぐとの名目で、
裕福な改宗者の資産没収が目的でもあったようだ。

他の地方の異端審問よりは格段に多くの審問対象者、処刑者を出したが、
徐々に減少し、18世紀末当時は、あまり機能していなかったようだ。
映画ではそのあたりが表現されていて
「もっと厳密に異端審問をしなければならない」と考えたとされている。

魔女狩りを含めて死刑宣告を受けたものは少なく、
魔女とされたものは精神異常者として釈放されたとされる。
(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

しかし、それがすなわち、異端審問の非情性を否定し、
平穏な生活を約束するものとはとても思えない。

この映画のように、自白強要の拷問は当然のように行われたであろうし、
動物以下の扱いの監獄、監禁するだけの精神病院、
劣悪な環境に長期間閉じ込められることによって、
肉体的にも精神的にも破綻をきたしたり、
獄死するものも少なくなかったと思われるからだ。
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6 コメント

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TB・コメントありがとうございます。 (mezzotint)
2008-10-27 23:40:13
KGRさん
今晩は☆★
すみません!他の記事をTBしてしまい・・・。
改めてTBさせて頂きましたので、宜しくです。
そうなんです。ゴヤから出発したわけではないと・・・。18世紀末のスペインが過去の歴史ではなく現代を見たそうです。価値観が移ろいやすく先行きが不安な時代の空気が驚くほど似ているということだそうです。ゴヤを登場させた理由は、彼の目が常に人間の真の姿を見極めようとする力があったからだそうです。その目で、今を生き抜くために、本当に必要なものは何かを見出そうというのが監督の狙いだったそうです。つまり、ゴヤの目を借りて神父と少女のスキャンダラスな愛の行方と数奇な運命を見つめれば、やがて人間の真実と愛の本質なたどりつけるということだと・・・・・。長くなりましたが、如何でしょうか?
mezzotintさんへ (KGR)
2008-10-28 00:20:43
TBの件は了解です。

監督のお考え解説ありがとうございます。

邦題はある意味、的を得ていますが、
ある意味ピンボケととらえられる危険もありますね。

ゴヤの目を通して時代を見つめようと言う
意図はわかりましたが、
現代を見ようとしていたとは思いませんでした。
こんにちは! (由香)
2008-11-23 14:14:57
お邪魔します♪
私の住む地域で急に上映が決まったので、全くのノーチェックでとりあえず鑑賞してみました。
何をどう考えたらいいかよく分からないところはありましたが、それでも見応えのある映画だったなぁ~と思います。
鑑賞後にゴヤの絵の数々を眺めてみたら、映画のシーンが色々と思いだされて、、、
本作に関しては、観た方が色々な観点で何かを感じていらっしゃるようですよね~
そういう映画もいいなぁ~と思います。錆びついた知的好奇心を刺激してくれますし(笑)
由香さんへ (KGR)
2008-11-23 18:12:19
コメントありがとうございます。

ゴヤの絵をエンドロールでダラダラと出すだけでなく、
もう少しストーリーに絡ませた方が良かったかも知れません。

単なる宮廷画家ではないゴヤの怒りや悲しみが、
絵にどう反映されたのかがあってもよかったです。
おじゃまします (ピロEK)
2009-11-30 15:34:58
おじゃまします。

…いつ頂いたコメントのお返しなんだよ…ということでKGRさんにとっても私にとっても、全く時期を逸したコメントになってしまいますが、ご容赦くださいませ。

私が偶々そういう作品ばかりをチョイスしちゃうからなのか?
スペインってのはずっと、不幸な歴史に苛まれてる国ですねぇ(各種映画を観る限り)。
異端審問なんて…ほぼ宗教観の無い私からすれば本当に怖い話で…兎も角スペインに生まれなくて良かったとこの映画を観ても思いました。

では、また来させていただきますね。今後とも宜しくお願いいたします。
ピロEKさんへ (KGR)
2009-11-30 17:16:03
コメントありがとうございます。

>全く時期を逸したコメント
いえいえ、いつでも結構ですし、
後々になって新たなコメントがあるのも大いに歓迎です。
改めて映画を思い起こすいいきっかけです。

ところで、宗教は人々の幸福のためにあるはずなのに、異端審問は矛盾ですね。

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