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東京都新宿区・妙典山戒行寺 長谷川平蔵の墓

2011年04月10日 | Weblog
日蓮宗 妙典山 戒行寺 (新宿区須賀町9-3)

 「戒行寺」(監修・星弘道 発行 妙典山戒行寺)[資料1] という本を杉並区立図書館で探して読んでみた。 昭和60年度蔵書となっている。
 それを主に参考にして、縁起をまとめてみると、
文禄4年(1595) 玉泉院日養上人(?-1612)により麹町に戒行庵として創草された。 日養上人は、後に駿州(沼津市岡宮)の日蓮聖人を開山とする法華宗本門流の大本山・光長寺(こうちょうじ)の第十世となった。
寛永の頃までは、麹町一丁目御堀端にあったとする説と、麹町八丁目谷にあったとする説がある。
寛永11年(1634) 2年後に江戸城々郭が拡張されることが決まり、四谷御門外の地に移転することになった。同年、徳川家光より現在の地に三千七百坪の寺地を拝領し、麹町より移転した。 この時、中興開山として第4世玉泉院日城上人。開基は宮重作兵衛信秀(?-1646、妙典院殿蓮経日珠居士)(注1)。
 ちなみに、戒行寺の西隣の曹洞宗・法輪山勝興寺は、天正10年(1582)に麹町清水谷に草庵を建てるが、寛永11年(1634)に江戸城拡張のため、この地に移されたという。 場所、時期などが戒行寺とよく似ている。

 「江戸名所図会」など、明暦年(1655-1657)に移転したと記すものがあるが、現存最古級の江戸全図であることが分かった臼杵市立図書館蔵の「寛永江戸全図」(寛永20年(1643)頃の江戸城下を描いたもの)には、現在地に戒行寺および勝興寺が記されており、明暦年中ではなく、寛永20年までには移転していることがわかる。
[参照:2008.9.11 発掘された日本列島2008 「…江戸の誕生」初期のキリシタン遺物]

 日城上人は、養寿院(お万の方、1580-1653)と子息の頼宣(よりのぶ)の外護を得、諸堂、両尊、四菩薩の寄進を受けた。
 中興開基の宮重作兵衛信秀は、藤原氏の支流を汲む名門の氏で、松平清康の代から仕えた直参という。 御天守番を勤めていた。戒行庵の隣に住居していて、檀那となり一寺となすために尽力した。
 宮重作兵衛信秀の墓は、杉並区堀の内の共同墓地にある。(下左写真)
 
 戒行寺は、池波正太郎の「鬼平犯科帳」の長谷川平蔵(宣以)の菩提寺として有名であり、その供養之碑(平成6年7月建立)が本堂前の参道横に建てられている。 碑には「火付盗賊改方 長谷川平蔵宣以供養之碑 法名 海雲院殿光遠日耀居士 寛政七年五月十日 享年五十歳」と刻まれている。
 それでは、長谷川平蔵の墓はというと、あるのかないのか明確でない。
 参道を進んで、右に長谷川家の墓(①)がある。 明治時代のものである。 杉並区堀の内にある戒行寺の墓地に移してあったものを、再度寺に運んできたらしい節がある。 資料1に長谷川平蔵宣以の墓の写真(②)が載っている。さらに、杉並区堀の内に戒行寺の墓地があるといい、長谷川平蔵宣以の墓がここに眠っていると記載している。 だが、長谷川平蔵宣以の墓の写真(②)というのは、虫眼鏡でよく見ると(①)の墓と同一のようである。
 長谷川家の墓(①)の最上部にある家紋は左が「丸に根笹」、右が「丸に蔦」(下の写真左)であった。前回の日蓮宗 長廣山 立法寺の長谷川正次系の墓の最上部にあった家紋(下の写真右)と並べて見比べると違いが歴然とするのではないだろうか。


 長谷川平蔵の墓が、あるのかないのかという結論(推測)であるが、明治末期に、戒行寺内にあった墓は、杉並区堀の内の共同墓地に改葬移転され、この時に、遺族の立会がなかったので、墓は無縁のものとして処分されてしまったのではないだろうか。 共同墓地の戒行寺の墓域にある、無縁仏にたくさんの墓石が縦に積まれている。外からはそれらしきものはなかったが、中の方にひっそりと眠っているのかもしれない。

(注1)宮重作兵衛信秀を宮重作兵衛忠次と書いていたが、あるいは書いているものがあったが訂正する。寛政重修諸家譜には幼名忠次(ただつぐ)とし、その後に作兵衛と記している。(2016.6.3)


2014.6.25 追記
開基・宮重作兵衛信秀の五男・信利の4代後八郎左衛門信量(のぶかず)の四男・信敏が本因坊11世元丈であり、その子岩之助が13世本因坊丈策である。

関連情報
 長廣山 立法寺
 徳栄山総持院本妙寺




キーワード: 長谷川正長、長谷川正成

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