goo

シシアサウルス


大きい画像

シシアサウルスは、白亜紀後期コニアシアンからカンパニアン(Majiacun Formation)に中国河南省の西峡盆地Xixia Basinに生息したトロオドン類で、2010年に記載された。モンゴルのビロノサウルスやウズベキスタンのウルバコドンに続く、歯に鋸歯のないトロオドン類で、ビロノサウルスと最も近縁と考えられている。
 ホロタイプ標本は部分的な頭蓋、下顎の前方部分、橈骨・尺骨の断片(中央部)、完全な第I指を含む部分的な右手からなる。(ここでは手の指はI, II, II)

他のトロオドン類と区別されるシシアサウルスの特徴としては、上顎骨歯が22本であることがあげられる。これはビロノサウルス(30以上)やメイ(24)よりも少なく、シノルニトイデス(18)、ザナバザル(20)、サウロルニトイデス(19)よりは多い。また、前上顎骨の鼻骨突起の基部に顕著な孔があること、上顎の前端がビロノサウルスよりも先細りのU字形をしていること、歯骨の先端の顎間結合の部分がわずかに内側に曲がっていることもあげられる。
 ビロノサウルス、メイ、ウルバコドン、アンキオルニスと同様に、シシアサウルスの歯には鋸歯がない。またビロノサウルスと同様に長く延びた二次口蓋をもつ。


Lu et al. (2010) によると、シシアサウルスは以下のような形質に基づいて、トロオドン類に分類される。他の多くの獣脚類よりも歯の数が多いこと、歯冠と歯根の間がくびれていること、下顎の前端で歯骨歯が密集していること、歯骨の側面に神経血管孔を容れる顕著な溝があること、である。歯列については上顎でも同じ傾向があるので、不均一な分布と異歯性といってもいいだろう。歯骨の側面の溝については、論文の写真では他のトロオドン類ほどくっきりしてはいないように見えるが、保存の問題かもしれない。また歯骨の前端部では個々の歯槽が癒合して、ひとつながりの溝になっていることも記載している。

アジアでは多数のトロオドン類が報告されているが、歯の形態は非常に多様である。もともと白亜紀後期のトロオドン類では、多数の小さい歯と特徴的な大きい鋸歯が知られていた。白亜紀前期のシノヴェナトルの歯はドロマエオサウルス類のような小さい鋸歯をもつので、これが祖先形と考えられた。ところがジュラ紀後期のアンキオルニスの発見により、これが最古のトロオドン類となってきた。アンキオルニスの歯は鋸歯がないので、トロオドン類の祖先が鋸歯を失うという変化はさらに古く、ジュラ紀前期に起きたことになる。そして白亜紀後期のトロオドン類には大きな鋸歯をもつものと、鋸歯をもたないものがいるというように、トロオドン類の歯は非常に複雑な歴史をもつことがわかってきたようである。

ビロノサウルス、ウルバコドン、シシアサウルスの歯に鋸歯がないことは、おそらく食性の変化と関係しており、植物食あるいは雑食だったかもしれないといっている。ただし、あまり詳しい議論はしていない。トロオドン類の大きな鋸歯自体がもともと、肉食にも植物食にも適しているという議論があったのではなかったか。鋸歯を失うイコール植物食という論法にはちょっと引っかかるものを感じる。鋸歯を失っただけでは、大型動物の肉を切り裂くには適さないというだけで、積極的に植物食に適応していることにはならないように思える。
 タカがハトを解体して食べる際は、くちばしで肉を引き裂いて飲み込んでいる。それに比べれば、シシアサウルスの歯は鋸歯こそないが、鋭い稜縁があり、後方の歯は強く後方に反っている。顎に並んだ多数の歯自体が、全体としてのこぎりの機能を果たしうるのではないか。丸のみできる、あるいは少し引き裂けば飲み込めるくらいの小動物を捕食するのには、鋸歯がなくても大して困らなかったということはないのだろうか。スピノサウルス類は鋸歯を失ったが、魚などの小動物を捕食するためとされている。鋸歯のあるトロオドン類に比べて、より小型の獲物を捕食したということならわかる。
 また歯列が異歯性であることからトロオドン類全体として雑食性で、白亜紀後期の大きな鋸歯をもつ種類は肉食傾向が強い(肉食に特化していた)、ということかもしれない。鋸歯のないものはより雑食性で、動物質は昆虫やトカゲくらい、ということか。

参考文献
Lu, J.-C., Xu, L., Liu, Y.-Q., Zhang, X.-L., Jia, S.H., and Ji, Q. (2010) A new troodontid theropod from the Late Cretaceous of central China, and the radiation of Asian troodontids. Acta Palaeontologica Polonica 55 (3): 381-388.
(Luはウムラウト)
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« ジャニエンフ... アンキオルニ... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。
数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。
 
この記事のトラックバック Ping-URL