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シヌソナススの鼻が気になる



シヌソナススは、白亜紀前期オーテリヴィアン(Yixian Formation)に中国遼寧省に生息した小型のトロオドン類で、2004年に記載された。ホロタイプは仙前椎、肩帯、前肢を除く全身骨格、つまり頭骨と後半身からなる。なかなか見事な化石である。

トロオドン類の顔つきの変遷を確認する上で重要な種類であるが、ちょっと気になる点がある。
 シヌソナススの第一の特徴は、鼻骨が側面から見て波状にカーブしていることであるという。しかしまず、記載論文の写真と比べて、線画では鼻骨のカーブがかなり強調されているように見える。また写真では、鼻骨の輪郭はごくゆるやかなS字状にみえる。S字状というなら理解できるが、著者らが本文中で言っていることはそうではない。Xu and Wang (2004) は、「鼻骨は外鼻孔の上で凹んでおり、maxillary fenestraの上で再び凹んでいるので、正弦波状sinusoidの輪郭をなす」と言っているのである。外鼻孔の後半の上で凹んでいるのはわかる。しかしその後方では、鼻骨は額にかけて盛り上がっているだけのように見える。つまりmaxillary fenestraの上では、むしろ盛り上がっているように見える。著者らのいう通りとすればS字状ではなく、W字状ということになるが、そうは見えない。シヌソナススの鼻骨に詳しい方は教えていただきたい。前頭骨あたりの感じから少し斜めにつぶれているように見えるので、鼻骨も斜めになっており、曲面形状としてW字状という意味かもしれない。

それ以外のシヌソナススの特徴は、前眼窩窓とmaxillary fenestraをつなぐ通路がない(詳しい説明はない)、比較的大きな歯、尾の大部分に沿ってプレート状の血道弓が帯状の構造をなす、大腿骨頭と骨幹の間に長い頸状部がある、であるという。

涙骨はT字形で、長い前方突起と、下行突起の上に張り出した顕著な側方の突起(図のlateral flange)がある。他のトロオドン類と同様に、三角形に近い歯骨の側面に、神経血管孔の入る溝がある。ただし溝は比較的浅いという。
 図では名称は示していないが、上顎骨には比較的小さい前眼窩窓、大きなmaxillary fenestra、スリット状のpromaxillary fenestraがあるという。maxillary fenestraが大きいので、確かにinterfenestral bar は細くなっている。

上顎骨には約19本の歯がある。上顎骨歯も歯骨歯も、前方では小さく密集しており、後方では大きく間隔が空いているというトロオドン類の特徴を示す。中央の上顎骨歯は最も大きく、他のトロオドン類と比べて比較的大きい。前方の歯には鋸歯がなく、後方の歯の後縁だけに鋸歯がある。それらは比較的小さく、鉤状の先端はない。つまり後の進化したトロオドン類の鋸歯とは異なる。

約30個の尾椎が保存されている。後方の尾椎は、背側の溝sulcusなどのトロオドン類の特徴を示す。シヌソナススの特徴として、中央と後方の血道弓はプレート状で、互いに接して尾椎の腹側に帯状構造を形成している。恥骨は関節していないが、関節面の形状などから前腹方を向いていたと考えられている。坐骨はサウロルニトイデスのような派生的なトロオドン類とよく似ており、大きな三角形の閉鎖突起が中程に位置している。

中足骨は典型的なアルクトメタターサル状態を示す。また他のトロオドン類と同様に、第 II 中足骨は短く細く、第 IV 中足骨は太い。派生的なトロオドン類やドロマエオサウルス類と同様に、第 II 指は高度に特殊化している。


感想としては、植物の実や昆虫をついばむ小鳥のようなメイの顔に比べれば、シヌソナススはやや顎が大きく、小型ながらドロマエオ的な肉食恐竜の顔つきになっている。トカゲくらい捕食してやるという気持ちが感じられる。
 早くもアルクトメタターサルとなり、鋸歯があるなど、地上性のハンターとして進化し始めた先駆け的な種類なのだろうか。


参考文献
Xu X, Wang X (2004) A new troodontid (Theropoda: Troodontidae) from the Lower Cretaceous Yixian Formation of Western Liaoning, China. Acta Geol Sin-Engl 78: 22-26. 

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