きらく堂日記

鍼灸師の喜楽堂が日々の出来事、過去の思い出、趣味にまつわる話などを綴った日記帳(=雑記帳)です

前腕回外障害・・・お母さんへの説明

2009年12月28日 | 日々の暮らし
K君の回外運動障害について・・・の続きです。
K君のお母さんには医者への紹介状を渡すと同時に、以下の説明資料に基いて「回外障害」について説明を行った。
障害をチャンと理解して、医者にいろいろ聞けるようにとの思いであった。
参考資料は、医学書院「標準整形外科学」、J.CASTAING著「関節・運動器の機能解剖」他

平成21年1月○日 調査結果

回内・回外運動の制限

○ 前腕の2本の骨(橈骨、尺骨)が同じ長さでない場合は、橈尺関節の回転点の1つが破綻するか、運動軸が偏位することにより、回内―回外は不可能となる。

→つまり、骨折した前腕の2本の骨がそれぞれ接合した時に一方の長さが短縮すれば回内―回外運動が制限されることになる。

○ 他動要素(近位橈尺関節、遠位橈尺関節、骨間膜)のうち一つでも損傷されると回内―回外運動が阻害される。

→つまり、骨に異常がなくても関節や骨間膜の異常でも回内ー回外運動が阻害される。

近位橈尺関節・・・橈骨頭が上腕骨小頭と円錐帯の間で完全に適合していないと回内―回外が不可能になる。橈骨頭と尺骨の橈骨切痕との接触維持は輪状靭帯と方形靭帯により確保されているが、重要なものは輪状靭帯であり、小児の肘内障(輪状靭帯亜脱臼)やモンテジア骨折(橈骨頭脱臼を伴う尺骨近位骨幹部骨折)で回内―回外障害が起きる。

遠位橈尺関節・・・三角靭帯は水平面での橈骨と尺骨頭との関係を維持し、回内―回外を制限する。骨折後の三角靭帯の尺骨頭への癒着は回内―回外域を減少させる。

骨間膜・・・・・・骨間膜のすべての要素は回内位で弛緩し、回外位で緊張する。回外位の制動は骨間膜・方形靭帯(近位橈尺関節)・三角靭帯(遠位橈尺関節)とにより行われる。

○ 回内―回外運動筋
回内運動筋・・・円回内筋(正中神経)、方形回内筋(正中神経)
回外運動筋・・・回外筋(橈骨神経)、
上腕二頭筋(筋皮神経)・・・最も強力。肘90°屈曲位のとき最大。
可動範囲・・・回内70°、回外80°、トータル150°の可動域がある。

以上である。

回外運動障害の原因は以上のように極めて明快である。
患者さんの努力だけでは回復が見込めない場合があるということです。
K君の母親は、「このような説明は今まで関った医師達は全くしてくれなかった。これまで医師からは「兎に角動かしなさい、運動させなさい」とだけ言われて6年経ってしまった。」と残念そうに話された。

「旦那さんやK君とよく相談して、手術という事も念頭に置いて、兎に角一度紹介した病院で診断を受けてみてください」とお話した。

その後は事ある毎に、お母さんやお父さんが来院してK君の状況を知らせてくれることになる・・・以下、続く。

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前腕回外障害・・・お茶碗が持てない!?

2009年12月28日 | 日々の暮らし
 今日、K君のお母さんが久しぶりに来院し、K君の術後の状況を報告していただいた。
夏休みに手術をしてから骨の固定まで大分日数がかかったが、やっとリハビリを開始するとのことで安心した。
橈骨と尺骨の長さをそろえ、捩れて接合された状態の骨を正しい位置に治したそうである。
まだ固定用の金属プレートは残っているという。

 回外10°で制限を受けていた前腕も75°まで回外が可能となったそうで、当初は専門医から「稀な事例で、困難な手術」と言われていたこともあり、とにかく良かったとお母さんはとても喜んでいた。

 K君のご両親は腰痛や肩こりで当院で年に数回鍼灸やマッサージの治療をしていたが、ある時お母さんから「息子の手の状態を一度見て欲しい」と相談を受け、初めてK君に会ったのは平成21年1月中旬であった。

 見てすぐ顕著な回外制限のあるのが分かり、その経緯と現状を聞いた。
これまで治療を受けてきた整形外科医の対応などに疑問を覚えることもあり、一度他の病院で専門の医師にしっかり診察してもらい、年齢も若いことだし手術も検討してみてはどうかと勧めて、これまで聞いた経緯を踏まえて、以下の紹介状を作成した。
病院はこの辺りではスポーツ医学関係で評判(ベイスターズの選手なども良く通っている)の病院をお奨めした。

ちなみに「回外」とは、例えば気お付けの姿勢から肘を体側につけたまま肘を90°曲げ、手をパーの形に開いて、親指が天を指す位置が基本位置の0°、手首を返して掌を地面に向けた位置が「回内位」(max.70°)、逆に掌を空に向けた位置が「回外位」(max.80°)でK君は自動、他動とも回外10°しか動かせなかったのですー写真参照。


紹介状

○○病院整形外科
御担当先生 御机下

紹介患者氏名; K.Y 平成5年○月○日生(15歳)
現症状;左前腕の回外制限(肘90°屈曲位の機能的基本肢位より回外約10度)
回外・回内を含め、肘関節、手関節の運動に伴う疼痛は無い。

損傷・障害の経緯

平成15年(9歳)、遊んでいて友達に押されて倒れ左手を床に付き橈骨と尺骨を骨折。近隣の総合病院整形外科にてギプス固定(約6週間)。ギプスを外した後、自宅でリハビリ(腕を動かすように)を指示された。
痛みは無かったが怖くて動かせず、回外不可のため、ご飯茶碗が持てない、物が旨く掴めないなど気になってはいたが、そのまま推移。

平成16年(10歳)の時、跳び箱運動の突き手で前腕全体に痛みが出たため、近隣の整形外科に行ったが、骨には異常がないので、腕を良く動かすように云われた。
この時期に少年野球チームに入ったが、回外不可のためキャッチングやバッティングに支障があった(痛みは無い)が、代償動作で凌いでいた。
中学でも部活で野球を続けたが、回外制限に改善が見られないため、前記と異なる整形外科で診察を受け、以前と同様に骨には異常が無いので自分で動かすようにと指導された。

平成21年1月○日、今年高校進学後も野球を続けたいので何とかならないかということで当院へ初来院。回外は自動・他動ともに強固な制限が認められるが(疼痛は発症しない)、回外筋には自動・他動(負荷試験)運動面での異常は見られず、近位橈尺関節、遠位橈尺関節、骨間膜などの他動要素の損傷(変形、拘縮、癒着、短縮)が疑われます。

当方ではマッサージ(含む関節モビライゼーション)を中心に鍼灸を加えた治療を行う予定ですが、もし骨折に伴う橈骨・尺骨の骨長差や関節部の変形など器質的な障害があると改善は困難となるため、その点について御精査いただくとともに、施術の可否についてアドバイスを頂きたくお願い申し上げます。

平成21年1月○日
三浦市南下浦町上宮田3259番3 TEL:・・・・・
鍼灸マッサージサロン・セラピット  喜多 徹

以上が紹介状の文面である。
これをお母さんに渡し、また「回外障害」とはどういうものかを知ってもらうために、手元の何冊かの医学書を抜粋した説明資料を作り、それを基に母親に説明を行った。

以下、続く・・・・。

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元気ですか? 気 (Qi;チー)の話

2009年12月26日 | 日々の暮らし
タイ・バンコク市警の屋外射撃場にてベレッタM92Fを撃つ私。

アントニオ猪木が顎を突き出して、リングの上から観衆に向かって叫びます、「元気ですか?~~~。」このシーンをもし今から2千数百年前に書かれた中国最古の医書「黄帝内経(こうていだいけい)」の著者が見たら、びっくりして腰を抜かすかもね・・・。

 なぜなら「元気(原気ともいう)」は東洋医学(中国伝統医学)の用語であって、キーワードの1つなのですから・・・。東洋医学(中国医学)では生命エネルギーとしての「気」の存在を定義し、その「気」の状態によって健康状態を診断(弁証)し、それが最良になるように治療方針を決定(論治)します。中国伝統医学が「気の医学」といわれる所以がここにあります。

 気(経気)には「先天の気」と「後天の気」がありますが、父母から受け継いだ生命エネルギーである「先天の気」が「元気(原気)」なのです。
 元気は先天であるがゆえに人の活動によって消耗される一方で、増えることはありません。元気の消耗(浪費)の仕方には個人差が出てきますが、相対として年齢とともに身体が衰えていくのはこのためです。「先天の気」の消長が老化であるとするのが東洋医学(中国伝統医学)の立場です。
 先天の気の減少を補うのが「後天の気」であり、毎日の生活の中で飲食によって補充できるエネルギーです。「後天の気」が「水穀の気」と言われるのはそのためです。後天の気はその作用によって更に「営気(えいき)」「宗気(そうき)」「衛気(えき)」の3つに分けられています。

 「営気」は飲食物のエッセンスから生成したもので「水穀の精華」とも呼ばれ、「脈(血液の循環経路)に注いで血と化す」とされて「血気」ともよばれます。孔子の書いた論語には「若き時は血気いまだ定まらず・・・色(セックス)を戒む」といったことも書いてあります。
 「衛気」は営気と同様に飲食物のエッセンスから出来ていますが、営気と異なり脈の外を流れ、主に身体の表面を循環します。皮膚を潤し、外界に対するバリアの役目を担い、免疫力に関係しているとみられます。
 「宗気」は呼吸で吸い込まれた大気と後天の気が結びついてできたものです。呼吸や発声に関係し、また心に働いて営気を全身に巡らせる推進エネルギーの役割を担っています。

 これらの気血が少なくなる状態が「気虚(ききょ)」「血虚(けっきょ)」といわれ、また気血の流れが滞ることを「気滞(きたい)」「血於(けつお)」といわれ、いずれも病の原因と考えられています。
気が病んでしまったのが「病気」ということになります。

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肩こりと肺がん

2009年12月17日 | 日々の暮らし
近くのビル・オーナーのAさん(80才代)が肺がんで亡くなったということを別の患者さんから聞きました。
 Aさんが肩こりがひどいのでマッサージをして欲しいと来院したのは半年ほど前のことでした。初診時から息切れ、咳、夜間の肩背部痛、体重減少を訴えており、痛みは左側腋下から肩甲部にかけた局所にあり、安静時にも痛みがあるということから単純な肩こりではなく、肺の疾患からくる関連痛が推定(確信)できたので、「息切れと咳が気になるので、一度呼吸器科で検査を受けたほうが良いですよ」と伝えました。2回ほどマッサージを受けに来て、その後ぱったり来なくなり、心配していたところ、Aさんから突然電話があり、「近くの内科でX線検査を受け、肺に影があるので、総合病院で精密検査を受けるように言われた」との報告がありました。

 その後数ヶ月音沙汰がなかったが、ある日突然「先生、マッサージしてもらえますか」とパジャマにガウンを羽織ったかっこうで飛び込んできました。聞くところによると、「検査結果で左肺全体に影があるというので即入院させられ、薬物療法を受けてきたが、影も無くなり症状も治まったので、退院が許可された」とのこと。「なんかまだ肩が痛いので、前と同じマッサージをしてもらいたい」とのことでした。

 「良かったですね~」と口では言いましたが、数ヶ月前の初診時に比べてなにも良くなっていない感じで、息切れも、咳も激しくなっていました。マッサージを丁寧にしてあげたら、「ああ、気持ちが良い、気持ちが良い・・・」と満足されたようでしたが・・・、それがAさんに会った最後でした。

 ご本人は末期癌であることを知っていたのか否か定かではありませんが。おそらくは手遅れの状態と判断されて、家に戻ったのではないかと思います。肺がんは初期では自覚症状が無いために一般には早期発見が難しいとはいうものの、あれだけの強い症状が出るまで何でほっておいたのか?・・・と悔やまれる事例でした。

 肩こりは、筋肉自体の問題(オーバーワーク、自律神経由来の血行障害など)、末梢神経障害(胸郭出口症候群、頚椎症など)、中枢神経障害(頚椎症性脊髄症、脳腫瘍ほか)と内臓疾患関連(胃がん、狭心症、肺がん、肝臓癌、すい臓癌ほか)と原因は様々で、
単に肩こり、されど肩こりですので、なにか異常を感じたら早めに診察を受ける方が賢明です。鍼灸院で相談されるのも結構です。

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鼻呼吸 vs 口呼吸

2009年12月17日 | 日々の暮らし
 腰痛で鍼灸治療に通ってくる70才代のA(女性)さんいわく、
「先生、呼吸は口でするのが良いんですよね~?。いつも通っている体操教室の先生がそう言っていたんだけれど~、ホントですか?」。
ちなみに、その方はいつも鼻が詰まってる感じの方でしたが・・・。

私「なぜ口ですると良いのか聞きました?」。
Aさん「聞かなかったけど、体操の先生がそう言っていたんです・・・」。
私「口は、ものを食べるところで、鼻が呼吸をするところでしょ~」。「ちなみに中国の五行論でも、口に関係する経絡は太陰脾経と陽明胃経で、鼻に関係するのは肺に属する太陰肺経となっているからネ~。」、「なにか体操の仕方の関係で特別な意味があったのかもしれないけれど、無意識で行っている通常の呼吸は鼻でするものですよ。」、「その証拠に、鼻には鼻毛があったり、鼻粘膜があったり、複雑な経路があったりして、それで空気に混じっている異物の除去や吸気の温度や湿度の調節がされてるんですよ・・・口から吸気するとそれらの防御機構を通さないことになり、直接汚れたり乾燥したりしている空気が肺に入っていくので・・・良い筈はないですよ。」と自分では分かり易く説明したつもりでも、ついついくどくなるのが私の性分で・・・。

 最近、「ぽかん口」の若者がやたら多い様に思う。若者だけでなく中年のおじさん、おばさんの中にもまま見かけます。鼻呼吸はヒトの成長過程で訓練(学習)によって身につけるのです。ヒトはもともと鼻呼吸であり、だから赤ちゃんがおかあさんのおっぱいを飲んでいる最中に窒息死することはないし、ご飯を食べながら呼吸困難に陥ることもない。さらにいえばヒトは赤ちゃんの時におっぱいを飲む行為によって、鼻呼吸の方法を学習するのです。近年は離乳が早くなったせいで、充分に鼻呼吸が訓練されないまま、言葉を話すようになっていくため、ますます鼻呼吸ができなくなってしまうらしい。

 鼻呼吸の訓練のためには授乳期間を長くする必要があるが、それが出来ないときには、おしゃぶりが有効であり、欧米では3~4才頃までおしゃぶりを使わせているが、なぜか日本では「おしゃぶりをしていると歯や顎の形が悪くなる」という迷信を信じている人が多く、早い時期に幼児からおしゃぶりを「みっともない」と取り上げてしまうのです。取り上げられた幼児こそいい迷惑ですね。お陰で将来「ポカン口」を親から注意されることになってしまうのだから・・・。責任は親にあるのに・・・。

 健康のためには鼻呼吸が大切です。思わぬ疾患の原因(背景)に口呼吸があったりするといわれます。人は天の陽気、地の陰気を吸収して、その陰陽のバランスの上になりたっている訳であり(天地人三才思想)、地の陰気は飲食で、天の陽気は呼吸で体内にとりいれていますが、食べ物もおかしくなってきているし、呼吸もおかしくなってきている現状では平均寿命はいくら延びても、健康寿命(元気で社会生活が営める)はだんだん短くなっていくのでしょうね。要注意!要注意!

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健康系「フリー・マガジン」

2009年12月13日 | 日々の暮らし
先日、所用で某総合病院に出かけた。
いつものとおり、休憩室や廊下の展示場所で病院や市が行っている健康セミナーや、講習会のテキストや記事に目を通そうと思った。
この日はめずらしく目新しい綺麗な冊子が積まれていて、表紙には良く見かける「無料、どうぞご自由にお持ち下さい」の文字があり、いわゆる「フリー・マガジン」。
 健康や医療に関する解説があり、その後にそれに関する健康食品やサプリメントの広告が満載という例のパターンのもの。

 掲載されている食品や材料をざっと見てみると・・・黒糖バナナ黒酢、DHA、EPA、サメ生肝油、スクワレン、オメガ3脂肪酸、ベータグルカン、グルコサミン、ラクトフェリン、コラーゲン・・・・などなど。
 今話題の名前が並んでいて、これらの効果・効用の解説が一見科学的ではあるが、相変わらずの「針小棒大」で・・・。

 私がよくチェックしている独立行政法人「国立健康・栄養研究所」のホームページの中の「健康食品の安全性有効性情報」では、これらの材料は・・・
「ヒトでの有効性については信頼できるデータが見当たらない」、「○○薬との併用でおそらく有効と思われる」、「適切に用いれば経口摂取でおそらく安全と思われるが、妊娠中・授乳中の使用は避けるべき」、「食事以外から一度に過剰摂取するときは注意が必要」・・・
などと、慎重な表現になっている。

 「こんな実験結果も出ています。」程度のもので、必ずしもヒトを対象にして科学的・医学的に実験検証されていない(例えば医薬品で行われる2重盲検ランダム化比較試験などされていない)ものばかりであることをキチンと認識しておく必要がある。

  時間つぶしで見るフリー・マガジンとは言っても、病院に置かれていればそれなりに信頼できる内容と患者さんは思ってしまうのではないでしょうかね・・・あきらかに疑似科学に属する誇大広告満載のこのようなフリーマガジンは病院側でちゃんとチェックして排除すべきではないでしょうか・・・。
フリーマガジンが何たるものかを理解しているヒトばかりではないのですから・・・「なんでこんな良い本がただなの!?」と不思議がり、かつ有り難がっているおばあちゃんもいるのですから。

 健康食品(健康補助食品)はほんとに要注意です。
「食べました」、「効きました」、「治りました」的表現には、眉に唾をつける必要があります。ほんとうに効くなら医薬品とすべきで、ただし、そのためには医学的エビデンス(効用の科学的な実証)が必要であり、実験検証のためには、莫大な費用と時間がかかります。
 健康(補助)食品には十分な科学的エビデンスは必要ないのです。
どこかの学者が実験した結果「こんな効果があるらしい、ただしラットの実験で、大量に食べさせた場合・・・」なんていうのを、あたかもヒトに大きな効果があったように宣伝していたりします。

 宣伝のうたい文句は、こんな症状の人がこんなに良くなった、こんなに効果があった・・・癌に効いた・・たぐいの経験談ばかり(ゴーストライターの捏造が多い)ですからね。いわゆるバイブル本を使った違法商法もはびこっています。

 ダイエットのための中国茶で死亡した人が出たのは大分前ですが、新奇なものを試すなら命がけの覚悟が必要ですね。
 ヒトは大昔からそうやって試行錯誤を重ねて、多くの犠牲者の下に毒薬と良薬を選別してきた訳ですが、かといって何も自分から積極的にそんな実験に協力する必要はありませんね。


五十肩の話

2009年12月13日 | 日々の暮らし
「四十肩」とか「五十肩」とか呼ばれる肩の痛みと、それにより肩の動きが制限される疾患は鍼灸治療が良く適応する疾患です。痛みが出ても「いつの間にか直っちゃった。」という場合もあるし、「2年間も痛みが続いている。」といった場合もありますが。回復期間に長短があってもいつの間にか直ってしまうのが五十肩です。

 上肢を体幹に引き止めている(ぶら下げている)上肢帯(棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋の回旋腱板が中心)がなんらかの原因で痛んだり、上腕二等筋長頭腱炎が進行して肩関節周りの軟部組織(関節包、靭帯など)が広く傷害されたのが五十肩(肩関節周囲炎)といわれる疾患です。
 髪を結ったり、梳かす動作(結髪動作)や手を背中側に回して帯を結ぶ動作(結帯動作)で肩関節部に痛みが生じますが。高速道路で通行料を払おうとして、あるいはお釣りをもらおうと手を伸ばしたときにズキンとくる(上腕二頭筋腱長頭炎)。または自分の左隣の人にビールを注ごうとした時にズキンとくる(腱板炎)。がはじまりで、腕を動かした時に生じる痛みがしだいに激しくなっていきます。

 続いて安静時にも痛んだり、夜間に痛みで目が覚める時期が続きます。その後痛みは次第に和らいでいきますが、肩関節の拘縮がはじまり、痛みは無いけれど腕が思うように上がらない、またはある位置に腕が来た時にのみズキンとするなどの症状がいつまでも残ってしまう場合があります。そのうち回復するのですが、人によっては2~3年間も悩まされる場合があるようです。

 ほかの治療で鍼灸院に通っている人は、「なんか最近肩が痛くて、ついでに見てください。」と訴えますので、早い時期から鍼灸の治療を受けることができますので、比較的早い回復が見込めますが、多くはかなり症状が進んでから鍼灸院に来られます。「整形にかよって電気かけてても良くならないから、鍼灸でなんとかして。」と言って来るわけですが、そんな人の多くが肩甲上腕リズム(肩甲骨の外転角度と肩関節の外転角度の比率が一定に保たれていること)が狂ってしまっていたり、棘上筋と三角筋の作動順番が狂っていたりして、正しい腕の挙上動作ができないため、つまり腕を挙げるために使う複数の筋肉の作動シークエンスが狂ってしまっているために、痛い、腕が上がらない状態になってしまってるのです。

 痛みを避けるためや、痛くて筋肉を使わなかったために起こっていた異常な動きが学習されてしまっていて、その異常な動き方のために痛みから抜け切れないでいるのに気がついていないのです。初めから患側の肩が上がってしまっている人、肩関節を回転させる前に肩が上がってしまう人、など第三者がみればいかにも変な姿勢や動きになっていると分かりますが。ご本人は意外と気が付いていない、気が付いていても痛みを避けるために自分が意識して行っている動作だと思っているのです。異常な動きが痛みの発生源であることに気が付くことが必要です。一旦身に付いた動きを矯正するためには正しいリハビリが必要になります。これが結構時間が掛かる作業になってしまうのですが、人任せで治るものではないので、あせらず取り組んでもらいたいものです。

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