『湖中の女』
レイモンド・チャンドラー(米:1888-1959)
清水俊二訳
"The Lady In The Lake" by Raymond Chandler(1943)
1986年・ハヤカワ文庫
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フロントグラスの右下のすみの裏がわに大きな白いカードが貼りつけられ、大きな文字で次のように書かれてあった。
有権者諸君に告ぐ!
ジム・パットンを警官の職にとどめよ。
他の仕事を見つけるには年をとりすぎている。
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チャンドラーの長編推理小説7本の4作目。
短篇の『ベイ・シティ・ブルース』(38年)と『湖中の女』(39年)をつなぎ合わせて書かれている。
台詞までほとんど一緒。
短篇の時の主人公はどちらもジョン・ダルマス。
この長作ではフィリップ・マーロウ。
数年経って、過去の短篇2つをくっつけて長編小説を書くのはどんな気分なんだろう。
長編に取り組む地位を与えられ、過去に手探りで書いた短篇を再構築して、ドッシリとした作品にしたい気持ちは理解できる。
ミュージシャンが同じことをやると、たいてい初期の輝きが失われた蛇足の、そのまたウンチのようなトラックができあがるが、チャンドラーの場合、この本が過去の長編4作で最も売れたそうなので、ひとまず成功なんだろう。
でも、どういうわけか、俺は短篇の『湖中の女』が好き。
あれは瑞々しいよ。
リトル・フォーン湖の保安官、ティンチフィールド(本作ではジム・パットン)に魅力があってね。
■チャンドラー 自己中心派
(1)長編
・『長いお別れ』 (1976年・ハヤカワ文庫)
・『さらば愛しき女よ』 (1976年・ハヤカワ文庫)
・『湖中の女』 (1986年・ハヤカワ文庫)
・『高い窓』 (1988年・ハヤカワ文庫)
・『リトル・シスター』 (2010年・早川書房)
(2)短篇
・『ヌーン街で拾ったもの』 (1961年・ハヤカワミステリ)
・『赤い風』 (1963年・創元推理文庫)
・『チャンドラー短篇全集』 (2007年・ハヤカワ文庫)
(3)トリビュート/アンソロジー
・『プードル・スプリングス物語』 (1997年・ハヤカワ文庫)
・『フィリップ・マーロウの事件』 (2007年・ハヤカワ文庫)
(4)チャンドラー研究
・『レイモンド・チャンドラー読本』 (1988年・早川書房)
(5)映画でチャンドラー
・『三つ数えろ』 "The Big Sleep"(1946年)
・『ロング・グッドバイ』 "The Long Goodbye"(1973年)
・『さらば愛しき女よ』 "Farewell My Lovely"(1975年)
(6)ドラマでチャンドラー
・『ロング・グッドバイ』 (2013年・NHK・浅野忠信主演)
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湖中の女 (ハヤカワ・ミステリ文庫) | |
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