『夜間飛行』

また靴を履いて出かけるのは何故だろう
未開の地なんて、もう何処にもないのに

『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド&ニコ』 ジョー・ハーヴァード

2010-04-12 | Books(本):愛すべき活字

『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド&ニコ
もっとも嫌われもっとも影響力のあったアルバム』
ジョー・ハーヴァード
中谷ななみ訳
"Velvet Underground's Velvet Underground Ahnd Nico" by Joe Harvard(2004)
2010年・ブルース・インターアクションズ


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ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの設立メンバーのひとり、ルー・リードはかつてこう語った。

「もし偉人について語るなら、レイモンド・チャンドラー以上に偉大な人間はいない。

つまり、レイモンド・チャンドラーを読んだあと誰か違う人間と関わりあったとする。

それはまるで、キャヴィアを食べたあとに本当にまずい食べ物を口にしなければいけないのに似ている」

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もう二度と普通のロックじゃ興奮できないと思った。

バナナジャケをはじめて味わった時、友達んちの狭いワンルームで、わし、もうブルブル震えた。


残念ながら、今、ヴェルヴェッツを聴いても、あんな興奮はもう味わえない。

全く味わえない。


でも、あのときの衝撃だけは、何度でも胃袋からお口に戻して反芻できる。

俺の体のどっかに深く刻まれたからだろう。


1995年にスターリング・モリソンが死んで

「もう2度とオリジナル・メンバーの4人での演奏を見ることはないんだな」

と思ってから、もう15年も経った。


ちょっと怖いくらいの、時の早さだ。


本書はジョー・ハーヴァードがヴェルヴェット・アンダーグラウンドのデビュー・アルバム『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド & ニコ』について、1曲1曲徹底的に掘り下げた解説書。


かなり私見も入ってる。

まあ、私見抜きに音楽を語るのことなんて出来ないよね。


あと、ヴェルヴェッツと直接関係ないんだけど、この本で一番好きだったのは、ジョナサン・リッチマンが、自分が少年だった頃に知り合った、アンディ・ウォーホールのことを語るところ。

やがて犬猿の仲となりバンドを去ったルー・リードとジョン・ケイルが、再び、バンドを組んだのは、1987年のアンディの死がきっかけだったと思うけど。

きっと、アンディ・ウォーホールは、世間一般でイメージされているような人じゃなかったんだろう。


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たとえ相手が初対面の16歳の子供だったとしても、ウォーホールは本当にきちんと他人の話を聞く人だった。

しばらく経ってから、ジョナサンはウォーホールのファクトリーを訪れ、ギャラリーがあった最上階まで、エレベーターを使わずに階段を昇っていった。

ボストンでその子供と話したことを覚えていたウォーホールは、ジョナサンに声をかけた。

「どうして階段で来たんだい?」

ジョナサンはこう答えた。

「ぼくは運動が好きなんです」


それから3年ほど経ち、ある日顔を合わせたジョナサンにアンディはこう尋ねたという。

「また階段を昇ってきたの?」

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この、ジョナサンが語るエピソードは、アンディの優しさが、ほんのりと伝わってくるような話だ。

時代の寵児が自分のことを覚えていて、洒落た(?)言葉をかけてきてくれた時、16歳の男の子がどんな気持ちになるかは、それこそ想像がつこうというものだよね。




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ヴェルヴェット・アンダーグラウンド&ニコ もっとも嫌われもっとも影響力のあったアルバム (P‐Vine BOOKs)
解説:大鷹俊一,中谷ななみ
ブルース・インターアクションズ

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