『夜間飛行』

また靴を履いて出かけるのは何故だろう
未開の地なんて、もう何処にもないのに

『地球の長い午後』 ブライアン・W・オールディス

2010-01-28 | Books(本):愛すべき活字

『地球の長い午後』
ブライアン・W・オールディス(英:1925-)
伊藤典夫訳
"Hothouse" by Brian Wilson Aldiss (1962)
1977年・ハヤカワ文庫


++++

「ヤトマー!助かったんだ!陸にあがるぜ!」

グレンははじめて沈黙を破った。


ヤトマーが立ちあがった。

ポンポンたちは立っている。


五人はたちまち心を一つにして抱きあった。

<うつくしい>が鳴きながら頭上を飛んでいる。


「四五年のあの<沈黙抵抗同盟>の事件を忘れたのか?

堂々と権利を主張するのだ。

やつらの言い分などに耳を貸すな―――どうせ嘘っぱちだ、プロパガンダだ。

デリー官僚政治や共産主義者の策謀に巻き込まれてはいけない。

今こそサルなみの労働から足を洗うときだ!」

++++


すげぇなぁ、オールディス。


人類の繁栄が過去のものとなった時代。

地球上は植物の世界に変わってて、しかも植物たちは極端に凶暴化してて、まあ、ナウシカの腐海みたいな感じ・・・って、本書の方が元祖か。


動物は5種しか残ってない。

トラバチ、木蜂、草蟻、ハガネシロアリ、そしてサル並みに小型化した人類。

いちばん脆弱で、皆からカモにされるのが人類。


基本的に植物は走ったり、鳥に擬態して飛んだり、刺したり、溶かしたりしておっかない。

こいつらが全部、脳を持たない植物ってのは無理があるJ、

なんて言うのはやめようJ。


そんな異様な世界を構築した、この1アイディアで1冊書いちゃうかと思ったら、とんでもない。


クモの糸で月まで渡ったり、月に渡った人間たちが鳥人化して、地球を侵略しに帰ってきたりの大暴走・・・ってだいぶストーリー書いちゃったよ。

でも、平気だねぇ。こんなん序の口だから。


主役は少年グレン、その彼女のヤトマー。

2人のことは、読んでてどんどん好きになる。


グレンの頭にとりついて支配する、高度の知能を持ったキノコ”アミガサタケ”。

後半に登場する、アミガサ以上に知識を持った魚、ソーダル・イー。


この曲者2人の化かし合いも、面白い。

キツネと狸じゃなく、キノコと魚ってとこがまた一興。


ん?

魚?

動物、5種類じゃないじゃん・・・。



<尼孫>

地球の長い午後 (ハヤカワ文庫 SF 224)
伊藤 典夫
早川書房

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