Sleeping in the fields of gold

小麦畑で眠りたい

君、想ふ

2016-10-17 | Weblog

10月15日。
蜷川さん、お誕生日おめでとう。

ご存命であれば、81歳の誕生日であった。

5月に惜しまれつつも亡くなられた演出家、蜷川幸雄を偲ぶスペシャルイベントが、さいたま芸術劇場で催された。
無料ではあるが、事前予約で、結果は抽選。
劇場の会員メンバーの優先もあるそうなので、試しに出してはみたけれど「まぁ、当たらないだろうな」と思っていた。

それがね。
当たりました(笑)。

なんでしょね。
抽選と言いつつ、抽選ではなかったのかしらん?
葉書に一言添えたのですよね。

「蜷川さんのおかげで、シェイクスピア劇を観に行くようになりました。とても寂しいです」と。

そのおかげだったのでしょうか。

蜷川さんのシェイクスピア劇のほとんどを支えている翻訳家の松岡和子さんがMCでいらしていた。
蜷川シェイクスピアによく出演されていた瑳川哲朗さんや横田栄司さんが、蜷川さんとの様々な思い出話をしてくれて、楽しかったなぁ。横田さんはお話がお上手で、本当にエンターテイナー(笑)。皆さん、舞台俳優さんだから、本当にマイクなしでも見事な声量と美しい声質。たまらんねぇ。

蜷川さんのシェイクスピアは、それなりに足を運んで観ていたのだが、それでも観ていないのもたくさんあって。
観ておきたかったなぁというのが、結構あるなぁ。
有名な「蜷川マクベス」を観ていないのよねぇ。

さいたま芸術劇場では、蜷川さんのシェイクスピアシリーズをずっとやっていて、残る作品はあと5作品だったのそうだ。
そして、一番最後の作品は「テンペスト」を予定していたらしい。
これはシェイクスピア自身、晩年に書かれた作品で、身じまいのようなそういう作品であったと。
蜷川さんもそういうつもりでいたろうと。

観たかったですね、蜷川さんの「テンペスト」。
横田さんが、その一節を朗読してくださった。

なんかねー。
プロスペローのその口上を聞いているだけで、しんみりと涙がこぼれましたよ、アテクシは。
老いるって、切ないよね。

横田さんはまだお若いから、プロスペローには早いかなとも思うけれど。
松岡さんが「いつか演らないといけないわね」と横田さんに言っている姿が良かったな。

未見だが、「リチャード2世」の演出シーンもビデオで見せてくれて。
若い世代の俳優さんはまだまだなんだけれども、それを差し引いても、とてもいい演出であるのは確かだった。
あぁ、見逃して惜しいことしたなー。

そしてイベントの最後に重大発表。
さい芸の2代目芸術監督に吉田鋼太郎さんが就任したと。

あらぁ。
鋼太郎さんは素晴らしい俳優さんで大好きだけれど。
自身の劇団も持っているのに大丈夫なのかなー?と。
それに良き俳優さんが良き演出家になれるかというと、どうだろうねと思うのよねー。
蜷川さんは自身は俳優として大成しなかったから、いい演出家になれたのだろうとも思う。
そういうのって、たぶんあるのよ。

ま、でもシェイクスピアをよく知っている俳優さんだから。
安心だけれど。

劇場のロビーにはいままでの舞台写真の展覧会が開催され、大稽古場も開放されていた。
稽古場に蜷川さん所縁の机や椅子、舞台の大道具、小道具などが展示されいた。

「海辺のカフカ」で使われていたガラスケースも展示されていた。
アテクシ、これ、すごく好きな作品だった。原作を読んだことがなかったのだけれど、去年、海外公演の凱旋公演で再演していて、介護で時間も取れなかったのだが留守番を母に頼んでようやく観に行けた作品だった。
だから、より思い入れが強いのかもしれない。

冒頭、ガラスケースに人々が収まって、移動する。宮沢りえちゃんが青いドレスを着てね。
とても幻想的で綺麗な舞台だった。
阿部海太郎さんの曲も綺麗でね。寂しくて。

そのケースの間を、暗がりの中で一人で歩いた。
(周りにはたくさんの人がいたのだけれど。そのガラスケースの間を歩く人は、その時いなかったの。独り占めできて幸せだった(笑))

一度でいいから。
蜷川さんと直にお話してみたかったな。
稽古中にもものすごく罵倒される方だったけれど、その罵倒する語彙が豊富で、アテクシはそれを聞いていると「ぷっ」と笑いたくなってしまうところがある。刺さるしキツイのだけれど、当たっているんだよね。
オブラートに包まない直截なる物言いって、厳しいけれど、ある種心地よかったりもする。
あの人は、そういう人であった。
それに、冷たい人ではない。

とても、優しい人だったと思う。

奇しくもさいたま芸術劇場の創立記念日で。
蜷川さんのお誕生日で。

もう彼はいないけれど。
来年の蜷川マクベス再演。必ず観るゎ。
そして、鋼太郎さん演出のシェイクスピアも。

シェイクスピアは高尚なんかじゃない。
あれは当時の大衆演劇だもの。
でも、人の本質というものを確かにとらえている。
だから、何百年経っても、色あせない。

人間って結局。
何百年、何千年たとうが、変わらんのよ(笑)。

蜷川さんがシェイクスピアを選んだのも、そこでしょう。
そこに「全部」あるんだもの。


帰り道。
大きなまんまるとした黄金色の月が、静かに夜道を照らしていた。


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