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コードネームは合理的な表記体系である

2017-02-21 23:16:59 | ヨン様
こんばんは、ヨン様です。


今日はコードネーム表記について書きたいと思います。
コード“進行”ではなく、コード“表記”についてであるところがポイントです。
コードを表記として捉えると、どのようなことが見えてくるのでしょうか。

コードネームというのは、音楽の教科書で楽譜の五線の上などに併記されている、和音を示すための記号のことです。
具体的には、


C Am Dm7 G C


といった表記が、コードネームにあたります。
これらはそれぞれ和音を表しており、「C」であれば「シー(・メジゃー)」となり、「CEG(ドミソ)」、Amは「エイ・マイナー」で「ACE(ラドミ)」、Dm7は「ディー・マイナー・セブンス」で「DFAC(レファラド)」、Gは「ジー(・メジゃー)」で「GBD(ソシレ)」です。
初めてきくとちょっと分かりにくいかもしれませんが、ようは根音(和音の一番低い音)と補助的な記号を記すことで、三度の堆積を基本とする和音を表す表記方法なのです。

私は、常々コード表記が非常に合理的な表記方法であると思っていました。
というのも、その表記体系は一貫して「無標な要素は表示しない」という原理を貫いているからです。
ここでいう「無標」というのは、「頻繁に用いるためにごく当たり前のこと、特殊性のないこと」などといった意味です。
「無標な要素は表示しない」というのがどういったことか、以下で説明いたします。

ここで、最も基本的なコードネームである「C」を見返してみると、これは字義的には「Cの音(ド)」しか表していません。
しかしコードネームとしては、「ドミソ」の和音を表しています。
つまり、「C」というコードネームには、簡単に見つもっても


(1)コードネーム「C」に含まれる情報
a. 「根音がC(ド)であること」
b. 「根音(ド)と第3音は長三度である(ミ)こと」
c. 「三和音であること」


という情報が含まれていることになります(その他、厳密には「転回形でないこと」などの情報も含まれていると考えられますが、ここでは省略します)。

比較するため、今度は「Cm」(シー・マイナー)というコードネームを見てみましょう。
こちらの場合は、「C」に「m」という記号が付されているので、字義的には根音の「C」と「短和音である(=根音(ド)と第3音は短三度である(ミ♭)こと)」が表記されています。
そしてコードネームとしては「ドミ♭ソ」の和音を表しており、全体としては


(2)コードネーム「Cm」に含まれる情報
a. 「根音がC(ド)であること」
b. 「根音(ド)と第3音は短三度である(ミ♭)こと」
c. 「三和音であること」


という情報を有していることになります。

これらの違いはなんでしょうか。
(1)と(2)を比べてみると、bにおいてのみ対照的な関係にあるということが分かります。
このとき注目してほしいのは、(2b)の情報が「Cm」という表記が字義的に表示していた情報である、という点です。
つまり、「Cm」においては明示的に示されていた根音と第3音の音程が、「C」においては示されていないのです。
これは極めて重要な点で、まさにこの点にコード表記の合理性の秘密があります。

一般に、西洋音楽では短調よりも長調のほうが機能的に完成されており、古典的な和声において好まれる傾向にありました。
すると、長三和音(「C」で表示される和音)は、長調の主和音であり、その点で短調の主和音である短三和音(「Cm」で表示される和音)よりも“無標”(特殊性がなく一般的に用いられる)だといえます。
このことから、最も頻繁に用いられる長三和音に何か特別な記号を付けて表示するよりも、より使用頻度の低い短三和音に補助記号を付けて“有標”(無標の逆)であることを示すほうが、はるかに認知的な経済性が高く、合理的であるということになります。
先ほどの例に照らして言えば、頻繁に用いられる「C」にわざわざ記号を付けて「根音と第3音の音程が長三度であること」を示すよりは、より頻度の少ない「Cm」に記号を付けて「根音と第3音の音程が短三度であること」を示す方が計算のコストが低い、ともいえるでしょう。
「三和音と言えば長三和音が当たり前なんだから、わざわざ書かなくてもいいでしょ」ということなのです。
「C」はまれに「Cmaj」などと表記して「根音と第3音の音程が長三度であること」を明示することもありますが、こういった表示法がほとんど採用されないのは、分かりきったことを表示することでかえって不経済な表記になってしまっているからだと思われます

このように、コード表記は「無標な要素を表示しない」(「C」という表記においては、「根音と第3音の音程が長三度であること」をわざわざ表示しないということ)という方針を徹底することにより、非常に合理的な表記体系になっています。
ちなみに、「Cm7」などといったセブンス・コードと「C」などの三和音の場合にも、同じような情報の明示性の差異があります。
「Cm7」という表記は、字義的に「根音がCであること」、「根音と第3音の音程が短三度であること」、「四和音(七の和音)であること」が表示されているといえますが、これはコードネームとしての「Cm7」が有しているコアな情報とほとんど格差がありません。


(3)コードネーム「Cm7」に含まれる情報
a. 「根音がC(ド)であること」
b. 「根音(ド)と第3音は短三度である(ミ♭)こと」
c. 「四和音であること(七の和音であること)」


(1)と(3)を比べてみると、bcにおいて対照的であることが分かります。
当然、三和音に対して四和音は有標であるため、「7」という表記を付して明示したほうが合理的であるということになります。
「C」というコードネームが持っていた「三和音である」という情報も、無標の要素を省略することによって含意されていることがお分かりいただけるでしょう。
やろうと思えば「Cmaj5」のようにして情報を明示することもできるわけですが、無標な要素はわざわざ明示しなくても理解できるため、このような表記はむしろ認知的なコストを高めてしまうのです。


というわけで、コード表記がいかに合理的な体系となっているかを見てきました。
今日ご紹介した以外にも、コードにはさまざま情報が詰め込まれています(たとえば「C」では、「五度が減音程でないこと」など)。
このような観点からコードネームを見返してみると、また新たな発見があるのではないでしょうか。

それでは!
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