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オオカミはイヌ科

2016-11-01 23:57:26 | ヨン様
こんばんは、ヨン様です。


突然ですが、みなさんは「イヌ」の生物学上の分類をご存知でしょうか。
「ネコ目(食肉目)―イヌ科―イヌ属」だそうです。
ものすごくイヌイヌしい。
ネコ目であるということ以外は、小学生にもわかりそうな分類になっていますね。

一方、イヌの祖先といわれるオオカミ(タイリクオオカミ)の場合はどうでしょうか。
ご存知の方も多いでしょうが、オオカミとイヌは交雑可能なほど近い種であり、オオカミもイヌと同じく「ネコ目(食肉目)―イヌ科―イヌ属」に分類されています。
見た目には一部の犬種とかなり近かったりしますし、このこともそれほど驚くべきことではないでしょう。

ですが、よく考えてみてください。
オオカミはイヌの祖先であり、種としてはオオカミのほうが早くから成立していたのです。
なのに、分類は「イヌ科―イヌ属」。
なぜ「オオカミ科―オオカミ属」の「イヌ」という分類にならないのでしょうか。

このような事例は、他にもあります。
例えば、我々ヒトは生物学的には「サル目(霊長目)―ヒト科―ヒト属」となりますが、チンパンジーやゴリラも「ヒト科」であるとされます。
ヒトの起源はアフリカの熱帯雨林に生息していた哺乳類であり、その後森林面積の減少に伴ってサバンナへと追いやられ、現生人類に進化したと言われております。
すると、現在に至るまで森林に生息するゴリラやチンパンジーのほうが「ヒト科」の古い形質をとどめている可能性があるわけです。
しかし、名目上はゴリラやチンパンジーも「ヒト科」となります。

こういった事実は、人間の世界に対する理解のありかたの一面を端的に表していると考えられます。
つまりある事実を把握しようとする際、我々は客観的に正しいかどうかという点よりも、その情報にアクセスしやすいかどうかを重要視するのです。
例えばイヌとオオカミの場合、客観的にはイヌの祖先であるオオカミをベースにイヌ科の動物を理解するという方略も考えられるわけですが、我々はオオカミを駆除したり信仰したりこそすれ、オオカミに対する具体的・感覚的な知識を持っておりません。
なので、仮に「オオカミ科」という分類名を設定してしまうと、その生物群がどのような特徴を持っているのかが、我々の知識からはアクセスしにくいのです。
一方、「イヌ科」という名称にすれば、我々のイヌに対する豊富な知識によって、その生物群の特徴を直観的に理解することが可能になります。
「ああ、あの嗅覚が鋭くて尾を持ったあの獣の仲間か」というふうに、「イヌ科」全体の特徴にも簡単にアクセスできるというわけです。

これは、ゴリラやチンパンジーに対する「ヒト科」という分類も同様です。
客観的に古い形態を持つと考えられる他の動物で分類を代表させるよりも、我々に身近な(というより、我々自身である)ヒトを代表に据えたほうが、ずっとその生物群のことが理解しやすくなります。
このように、私たちはある事実を新しく把握しようとする際に、私たちの知識からアクセスしたすい方法を採用する傾向があるのです。

このことは、逆に言えば、私たちが何か新しいものを理解しようとする際には、それまでの知識からの類推に頼っていることを意味します。
もちろん、これがポジティブに働けばなにも問題はないのですが、時としてネガティブな方向、バイアスや偏見といった形で作用してしまうこともあります。
新しい事実に対する理解がすでにある知識に依存してしまう以上、そういった問題を完全に取り払うことは難しいでしょう。

こういった事態を避けるためにも、いろいろな知識にアクセスできるようにしておくことが大切なのではないでしょうか。
なにか自分の意見を強引に押し通そうとしたり、他人の意見を受け容れられないとき、あるいは明確な悪意がなくとも、自分の間違えに気が付けないとき、その原因はたいてい自分自身の無知から来ているように思われます。
自らの過ちを受け容れ、また他人のそれに対して寛容になるためにも、多くの情報にアクセスできるようにしておくことが重要だといえるでしょう。


オオカミをイヌ科と捉えることは非常に合理的でありますが、一方でオオカミに我々の認識を押し付けてもいます。
自分の視野を狭量なものにしないためにも、折に触れてそのことを自覚する必要がありそうですね。

それでは!
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