★☆海の幸の日常日記☆★

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祖母を送る

2005年05月09日 | 海の幸の小さな哀しみ
先月の28日に、札幌在住の祖母が他界しました。83歳でした。
一昨年の夏にはすでに末期ガンだと宣告されていて、本人もすべてを理解した上での闘病でした。
とても気丈な人で、あとは死を待つのみと分かっていながら、最後まで取り乱すことなく天寿を全うしました。

葬儀は祖母の長男(=私の伯父)が住職を務める函館のお寺で執り行われました。
ゴールデンウィークとぶつかったため、祖母を送りたいと思っていた人全員が、仕事などの日常生活に煩わされることなく、純粋な気持ちで葬儀に参列することができました。
ただ、ゴールデンウィークにぶつかったということは、裏を返せば東京在住組はとにかく函館までの交通手段の確保が難しく、インターネットを駆使しながら、まるで松本清張か西村京太郎の小説のように時刻表を調べ、乗り継ぎを考え、チケットを手配し、宿泊先を探し…。
そんな東京在住組がたどり着くまで、北海道在住組は祖母を守って待っていてくれました。
そして、みんなで祖母を送りました。
祖母は僧侶になった自分の息子2人(=私の伯父と実父)、孫2人(=私の従兄弟たち)に葬儀をしてもらって、嬉しかったんじゃないかなぁ…と勝手に想像しています。
そのほかにも近隣のお寺からお坊さんが来てくださって、総勢13名ものお坊さんにお経をあげてもらいながらの葬儀でしたから、ひょっとしたら立派なお葬式すぎて照れ笑いしているかも知れません。

葬儀に全員が参列できたこと、ものすごく立派な葬儀だったこと。今思うと、すべては祖母の力だったんじゃないかと思います。
決して平穏無事な人生を歩んだ人ではなく、また平穏無事ではない人生を生き抜くだけの強さを持った人でしたから、祖母自身も、祖母の4人の子どもたちも、その周囲の人々も、いろいろと複雑な気持ちの行き交いがあったと思います。
でも、最後は立派なフィナーレを飾りました。
伯父も立派なフィナーレを飾らせました。
伯母は祖母を立派に看取りきりました。
私の両親も精一杯のことをし尽くしたと思います。
伯父が「親を亡くして悲しいという気持ちはあっても、あのときああしておけば…というような悔しい気持ちはまったくありません。むしろ母をこんなにも清々しい気持ちで送ることができて、変な表現かも知れませんが、嬉しく幸せだと思っています」と挨拶したくらい、本人にとっても、周囲の人間にとっても、もう、これ以上ないくらい立派な、文句なしの人生の終わり方だったと思います。

孫の私からすれば、大人たちの複雑な事情はなんにも分からず、また、あえて知ろうとせず、ただ「北海道のおばあちゃん」でした。
純粋に甘えた気持ちで過ごし、祖母に死が近づいていると聞いてはいても、手紙を書いたり写真を送ったりするのはごくたまに、気が向いたときだけ。
でも、そんな気まぐれな手紙や写真を、祖母は喜んでくれていたそうです。
抗ガン剤を使うと髪の毛が少なくなると聞いて送ったシフォンの帽子も、ずいぶん愛用してくれたようです。
決して出来の良い孫ではない私は、最後まで甘えた気持ちのまま、祖母を送りました。大人の事情に首を突っ込まず、ただ孫は孫らしく最後まで「おばあちゃん、大好きだったよ」とだけ思って祖母を送るのが、私にとって祖母にできる、唯一のことだったように思うからです。

葬儀を終えた今も、祖母はいろいろなかたちで私にたくさんのことを教えてくれています。
生と死の間には絶対に越えられないものがあるのだということ。そして、生きているものは、その越えられないものを越えて死ぬのだということ。葬儀や供養といった言葉の本当の意味。そして私がこれからの人生を幸せに生きていけるように、祖母の今までの人生を知り、その人生を手本にしたり反面教師にしたりすること…。

私は相変わらずなんにもできない孫です。
これからもなんにもできない孫でしょう。
でも、祖母はなんにもできない孫の私にいろいろなことを教えてくれました。
だから私は、なんにもできない孫だけれど、せめて祖母が教えてくれたことだけは忘れないようにしたいと思います。

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2 コメント

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お疲れ様でした (hiro093)
2005-05-11 20:05:11
近しい人との別れは何かと考えさせられるものですね。

今回は長旅お疲れ様でした。

でもみんなに送られて、おばあ様も本当に良い最後を迎えられたことでしょうね。

ご冥福をお祈りします。
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ありがとう (海の幸@管理人)
2005-05-13 10:51:27
ありがとうございます。

祖母との別れはいろいろと学ぶことが多い出来事でした。

もう三十路目前。

今回学んだことで、ちょっとは大人になれるかしら…??
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