のくたーんの駄文の綴り

超不定期更新中orz

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眠り姫は夢の中 7章-12

2010-04-28 23:06:58 | 眠り姫は夢の中
「ねえ、リヴァ。
わたしの子供を殺した魔女は、元気かしら――?」
「――アリオーシュ!」
 いきり立ったリヴァの横を聖花はすり抜けた。
「アリオーシュ……無事でよかった」
 抱きつかれる格好となったアリオーシュは、一瞬きょとんとした表情を浮かべ、微笑みながら聖花の髪を撫でた。
「ごめんなさい。――あら……」
 傷だらけの手を取ると、「聖花、あなた……」
 苦笑。「エレメンタラー」アリオーシュの周りを舞っていた炎の残滓が、水滴へと姿を変えた。
「わたしを助けようしてくれたのね……」
 水滴が傷を潤すたびに、痛みが遠のいていく。「すごい……」
 ものの数秒で、聖花の手の傷は、すべて消えていた。
「さあ、行きましょう」
 聖花の手を取って歩き始めたアリオーシュ。困惑する
「行っちゃだめだ!」
 空いた手をリヴァが引いた。
 思いがけない強い力に聖花はよろめき、転びそうになった。
 文句を言おうと口を開きかけた聖花は、リヴァの、今まで見たことのない表情に思わず息を飲んだ。
「……あなたじゃ無理よ」
 アリオーシュの静かな声。「あなたじゃ、その子は救えない。自分でもわかっているんじゃなくて?」
 嘲笑するでもなく、あくまでも真剣な表情のアリオーシュ。リヴァの表情が険しくなった。
「ぼくが――あの頃のままだと思うなよ、アリオーシュ」
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ごめんなさいごめんなさい

2010-04-25 10:12:13 | 暇人日記
放置してごめんなさい。

まだ生きてます。

近々更新再開します。以前もこんなこと書いたけど・・・

書きたい話も何個かあるので、まずは眠り姫を完結させまふ・・・
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眠り姫は夢の中 7章-11

2010-02-24 10:05:21 | 眠り姫は夢の中
 どれだけ走ったのだろうか。荒い息をつくリヴァの姿に、聖花は胸が痛くなった。
「聖花、手を見せて。ひどい傷だ」
 言うが早いか、聖花の手を取るリヴァ。聖花は思わず手を振り払って叫んだ。「わたしのことよりも、アリオーシュを助けて!」
「……アリオーシュ?」
 ようやく事態を把握したらしい、リヴァが目を剥いた。「こ、これは――なんだ?」
 轟々と鳴り響く風の音に、リヴァはようやく気がついたらしい。聖花は脱力そうになりながらも、リヴァに説明した。
「あの中に、わたしを助けてくれた人がいるの。あの黒い風は、わたしを狙ってきた人で――」
 言い切る前に、リヴァが手で制した。
「……そうだろうね」
 そのどこか余裕を感じさせる態度に、聖花は口をわななかせると、
「アリオーシュ……ぼくが知っている彼女なら、この程度の障害――」
 突然、黒い風の一部が弾けた。
「――取るに足らない事だろうね」

「ば、馬鹿な!」
 風を裂いて、悲鳴に似た声が響き渡る。
「なんだ、これは……貴様、体のうちに何を飼っている!」
 風の勢いが弱まっていく。黒い風を飲み込むように、真っ赤な炎が食指を伸ばす。
「――わたしの身体は、わたしの物よ」
 どこか、愁いに帯びた声――風と炎の合間から、アリオーシュの姿が見えた。
「アリオーシュ!」
 半泣きになりながら、聖花は叫んだ。
「おの……れ! このままでは、終らんぞ!」
 風の一部が矢じりのように変化すると、聖花を狙って打ち出された。
「えっ?」
 我ながら間抜けな声だ。はたから見ると、自分は相当、呆けた顔をしているに違いない。
 後になって、そう自虐するくらいに聖花は愚かで、普通の人間だった。
「聖花!」
 いち早く異変に気がついたリヴァが、その傷だらけの腕を引く。
 だが、まるで予想していたかのように、黒い矢じりは聖花の胸を捉えていた。

「魂の欠片も残すな――エレメンタラー」

 ぱんっ! と風船が弾けるような音とともに、矢じりはその姿を消した。
「……え? なに、が?」
 その場にへたり込んだ聖花が呟く。
 その視線の先で、アリオーシュが鬱陶しそうに手を振った。
 黒い風は炎に飲まれ、老人は断末魔を上げることもなく、消えてしまった。
「……あら、久しぶりね。リヴァ。
 あなたがここにいるということは、狐は勧誘に失敗したのかしら?」
 自然に、まるで、何事も無かったようにアリオーシュが言う。
 その身体の周りに、炎の残滓が絡みついていた。
「エレメンタラーを収めろ、アリオーシュ。
 ――それとも、この場でぼくを焼き殺そうというのか?」
 苦々しそうにリヴァが言った。
「……昔のように、アーシュとは呼んでくれないのね」愁いを帯びた表情でアリオーシュ。「どうして、わたしがあなたを殺さなければならないの?」
 すう――とアリオーシュの目が細まった。
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眠り姫は夢の中 7章-10

2010-02-13 10:58:55 | 眠り姫は夢の中
「……安心して、これからはわたしがあなたを守ってあげる」
 そう言い、手を差し伸べてくる女性――アリオーシュ。だが、聖花は落としたピュラの羽を拾うと、躊躇いも無くアリオーシュに向けた。
 羽は――聖花の意思に応えて、ナイフへと姿を変える。
「あらあら……」
 アリオーシュは少し困った表情を浮かべ、身を屈めて視線を合わせた。
「傷ついているわ」
 突きつけられたナイフなど、まるで気にすることなくアリオーシュは聖花の頬に触れた。
「さ、触らな――」
 顔をそむけた聖花を、静かな声で制す。
「じっとして」
 アリオーシュは手持ちの水筒から指先に水を垂らすと、聖花の頬へ塗った。
「これで大丈夫。女の子だもの、顔に傷を残しちゃだめよ」
 優しく微笑むアリオーシュに、聖花はぽかんと口を開けて見ているしかなかった。
「教団騎士が一人、『ハイエルフ』アリオーシュよ。よろしくね、騎士見習いさん」

「教団騎士……」
 聖花は疑惑の目を向けた。「あなたも、わたしをさらおうとしているの?」
「……パンドラは有能な人だけど、遊びが過ぎるわ。こんないたいけな子をだしに使うなんて」
 アリオーシュは本気で怒っているらしい、眉を顰めたのも一瞬、すぐに微笑むと、改めて手を差し伸べた。
「一緒に行きましょう。ここはまだ、安全とは言えないわ」
 聖花は躊躇いながら、おずおずとその手を握ろうとした時――
 アリオーシュの身体を黒い風が包みこんだ、

「な、なに?」
 目を見開いた聖花は、悲鳴をあげそうになった。
 黒い風がアリオーシュの細い身体を飲み込もうとしている。苦しそうな表情を浮かべたアリオーシュが、忌々しそうに呟く。
「まだ、生きていたのね」
「わしが水弾ごときで滅されるとでも思ったか?」
 轟々と鳴り響く風から聞こえる声――振り返った聖花は、倒されたはずの老人がいないことに気がついた。
「ほう――これは素晴らしい。ハイエルフは当に絶滅したと思っていたが」
 舌舐めずりするように風が蠢く。
「わたしの中に入ってこないで……!」
 自由を奪われたアリオーシュが苦しげに呟く。
「アリオーシュさん!」
 ナイフを構えた聖花は、しかし、どうしていいのか分からず、おろおろするばかりだ。
 そんな少女を気遣うように、アリオーシュは静かに微笑んだ。
「そのナイフではだめ……。意識を集中して、ルナ・ロッサを――」
 ひときわ大きな風の音に、アリオーシュの姿が飲み込まれてしまった。
「ああ、あああ……」
 無力な自分に、聖花はただ立ち尽くすだけだ。
「やめて! お願い……もう、わたしのせいで、誰かが傷つくのは嫌なの!」
 黒い風に爪を立てる。
 鋭い刃のような風に、手や腕は一瞬でぼろぼろに傷つき、弾かれた。
「あうっ!」
 激痛にあえぎながら、聖花は涙をこぼしながら、風に拳を叩きつけようとして――
「聖花!」
 懐かしさすら感じるその声に、聖花はすがる思いで声を張り上げた。
「助けて……お願い、アリオーシュを助けて、リヴァ!」
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眠り姫は夢の中 7章-9

2010-01-20 22:55:42 | 眠り姫は夢の中
ミストが近づいてくる気配を感じながら、ピュラはただ、その時を待った。
首をのけ反り、瞳を閉じる。くすり、という微かな笑いはミストのものだろう、ピュラは苛立ちを憶えずにはいられなかった。
「ピュラったら、かわいー」
 思いのほか近くから聞こえたミストの声に、ピュラは身を固くした。
「早く、やれ!」
 はいはい、とピュラの首筋に近づいたミストだが――
「……ピュラ?」
 か細い声に、ピュラは眼を開いた。
「飛花? 起きたのか?」
 ミストを押しのけ、ピュラは起き上った。
「あ、ちょっと待って」
 自分の姿を思い出したピュラが慌てて、ミストの後ろに隠れた。
「間が悪いなぁ」
 ミストが不機嫌になる。服を着たピュラは無視して飛花の元へと向かった。
「ピュラ……せーかは?」
 ジルハに抱かれた飛花が訊いた。
「……少し、散歩に出ているだけだ。すぐに帰ってくる」
 飛花の髪を撫でながら、ピュラはほほ笑んだ。
 その様子を見ていたミストは、小さくため息をついた。



 重苦しい空気が、部屋の中を支配する。
 困惑を隠せない二人の男女――山崎と由香。
 一人、離れた位置に座っていた栞は爪を噛んだ。
 四人は山崎の家に戻っていた。
横たわる聖花の姿――しかし、その姿は栞の目にも透け、今にも消えそうなほどか細い。
 実際、聖花はこの世界から忘れ去られようとしている。
 ――そんなこと、わたしがさせない。
 だが、どうしたらいいの? 栞は一人苦悩する。
 そんな栞を、ただ見ているだけしかできない二人の友人。意を決して、山崎が口を開いた。
「なあ、その、聖花? は、俺の姉貴と同じ状況にあるのか?」
「そうねぇ」
 栞は振り返らずに応えた。その言葉は重い。
 山崎と由香は顔を見合わせ、ため息をついた。
 苦悩の渦に飲み込まれていた栞、しかし、山崎の言葉に、引っかかりを憶えた。
「……ん?」
 忘れている。何か、大切なことを――
 栞は音を立てて立ち上がった。
「な、なんだ?」
 突然の行動に、山崎たちもそのあとを追う。
 山崎の部屋の前――何もないはずの壁を前に立ち止まる栞。
 視える――栞には視えた。
 忘れられた未春の部屋。まるでそこだけ色あせ、朽ちてしまったような空間が広がって視えた。
 固く閉ざされた扉から、白いもやのようなものがこぼれていた。
「どうしたのよ、栞」
 由香の言葉に、ようやく栞は振り返った。
「ねぇ……」
 うっすらと笑う。明らかに異質の笑みだった。
「私に何かあっても、忘れないでいてねぇ」
「なにを――!」
 二人の言葉を無視して、栞は見えない部屋へと飛び込んだ。
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