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今後の政策課題と欧州各国・中国間の関係変化

『EUは危機を超えられるか』より EUと中国 ⇒ アテネの玲子さんからはギリシャを中国が支配しようとしていると聞いている。狙いはEUだということ。

現在、EU・中国間にはどのような課題・懸案があるだろうか。同時に、EU主要国と中国との個々の関係はどのような方向に展開していくだろうか。

以下、政策課題と欧州各国・中国間の関係変化という二つの観点から検討したい。

先ず、EU・中国間の貿易について、EUは中国にとって最大の貿易相手であり、中国はEUにとって米国に次ぐ第二の貿易相手国である。しかし中国と欧州を含む先進国との間では、従来から貿易面の紛争が絶えなかった。

中国が2006年に、自国が生産するレアアース、モリブデン、タングステンの3品目に高額の輸出税を課した。さらに2010年からは、輸出数量自体にも制限を加えた。これに対し、EU・日・米はWTOの協定違反であるとして、2012年、WTOに提訴した。議論を経て2014年には中国の敗訴が確定した。

さらに2012年、欧州委員会は、中国製の太陽光パネルについて、不当廉売の疑いで、アンチダンピング調査を開始した。2011年当時、中国の同製品の約8割以上を海外に輸出し、さらにこの内約7割が欧州向けだったとされる。2013年、EU委員会は、この調査に基づいて、48%という相殺関税を課すことを決定した。この一連の措置に対抗するかのように、同じ時期、中国は欧州産ワインのダンピング調査に入ることを発表したが、その1か月後にはEUとの合意が成立した。

環境問題について、EUは従来から世界の基準を先導する立場にあり、1995年の京都議定書採択に当たっても同じ先進国である日本との協力により、大きな役割を果たした。経済発展を急ぐ中国の環境政策は遅れていたが、EUは中国との間で1992年、「環境対話」を開始した。しかし2009年末、コペンハーゲンで開催された国連の気候変動枠組み条約締結国会議(COP15)において、途上国グループが先進国側が主張した規制内容に反発し、閣僚級会議をボイコットした際に、主導的役割を果たしたのが中国だった。さらに、その後、先進国グループと途上国グループとの妥協が成立した際、米国と中国が中心的役割を果たしたことも、環境問題で先導的な立場を自負するEUにとってはショックだったとされる。

最後に人権問題はEU・中国の間で、一貫した懸案となっている。既述の通り、1989年の天安門事件発生により両者の関係は一時悪化した。

その後、1995年、中国とEUは、「人権問題に関する特別対話」を高級事務レベルで交互に年2回開催することとし、そこでは、EU側の人権尊重に対する強い態度が示されてきた。

2008年の中国政府によるチベット・ラサにおける暴動鎮圧の際も、EU各国の首脳が、北京オリンピックの開会席出席をボイコットする事態に至った。しかし全体として、議論はそれほど進捗しておらず、以上のように、EU・中国間の懸案事項は貿易面を中心に多岐に亘っている。さらに貿易と人権との関係では、EUが中国との経済関係を維持するため、人権問題への言及に配慮し、「特別対話」などの枠組みで主張を継続するにとどめている、という面がうかがわれる。

以上のような経緯から、EU・中国関係がこう着状態に陥ることがある中で、欧州の主要国はより自由に、中国に対し経済外交を進めてきた。

ドイツがその代表格であり、メルケル首相の中国訪問は、2016年6月まで9回に上る。フォルクスワーゲン社・シーメンス社など、中国に深く根付いたドイツ企業も多い。メルケル首相自身がチベット問題や、最近では南シナ海における「法の支配」に言及することはあるが、経済面への影響を配慮しながらバランスを取っているようにうかがえる。産業の高度化を急ぐ中国にとっても、技術力の高いドイツ企業との関係強化にはメリットがある。

ドイツと対照的に、フランスは伝統的に人権問題へのこだわりが強く、2000年代には関係の冷却した状態が続いた次期もあった。しかし2009年に「中仏共同声明」の発表後、ドイツと同様に経済重視の関係を維持しようとしているようだ。

最後に、英国は、金融業が自国の主力産業であるため、近年、中国人民元ビジネスなどの取り込みを狙い、中国との関係強化を図ってきた。その延長線上で、2014年春、中国のAIIB計画に対し、英国は欧州で初めて、参加を表明した。米国が不参加であるにもかかわらず、英国が参加を決めたことが、その後、フランス・ドイツーイタリアなど欧州主要国が相次いでAIIBへの参加を表明したことにつながった。その後、2015年秋に、習近平が訪英した際には、当時のキャメロン首相との間で中国製の原子力発電施設を納入することで合意した。

しかし、このような英中の蜜月関係は、2016年6月の英国国民投票によるEU脱退決定以降、どのように変化するだろうか。中国からすれば、英国との関係強化は、ロンドンという金融センターを利用することだけでなく、既述のAIIB加盟時の経緯にみられるように、欧州各国との関係強化への足掛かりと捉えていた面がある。英国がEUを離脱した場合には、金融センターを含む「欧州への窓口」としての英国の利点が薄れる可能性がある。英国のEU離脱がより現実的なシナリオとなって具体化した時に、中国が英国に代え、ドイツなど大陸諸国との一層の関係強化を図るかどうかという点が注目される。
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