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リーダーシップにおける孤立

『ハーバードのリーダーシップ講義』より

孤立というリスク

 孤立してはいけない--そう言うと、誰もがすぐに同意します。たとえ「孤立」が意味することがわからなくても、ネガティブなことだと理解しているのです。

 私が考える孤立とは、自分やまわりの状況が見えない状態をいいます。よく見えないせいで、状況を分析するのも、行動するのも、人のために価値を作り出すのもうまくできなくなるか、あるいはこうした能力が失われていきます。

 もちろん誰にでも盲点はあります。問題は、一歩踏み込んで自分の盲点を見つけ、それを認識する気があるか否かです。何もしなければ、毎度同じ盲点に気がつかないまま、孤立し続けるでしょう。世の中には、自分が問題を引き起こしていることに気づかない人がいます。あなたがその盲点を指摘してあげたら、彼らがどれだけ救われると思いますか? この種の孤立を防ぐにはコミュニケーション--人にフィードバックを求め、もらったフィードバックを受け入れること--が不可欠なのです。

 エグゼクティブと話をすると、彼らは一様に孤立するような状況は避けるべきだと主張し、孤立している人に同情します。ところが、彼ら自身の状況について話し出すと青ざめてきます--思っていた以上に自分が孤立していたことに気づくのです。

 わからないことを人に訊けない人や、すべての答えを知っていると思い込んでいる人は、ほぼ間違いなく「余計な口出しをするな」という雰囲気を醸し出しています。あなたがそうなら、周りの人々は黙ってあなたに従うでしょう。人生は短いですし、いい気になっている人をあえて打ちのめすほど暇ではないのです。さらに上司であるあなたは、部下よりも強い権力を持っています。部下は上司を怒らせたくないですし、たとえ聴いてもらう必要があっても上司が聴きたがらないことは言いにくいものです。繰り返しますが、他人に意見を求めて孤立した状態を打破するには、第一歩を踏み出さなければなりません。そしてそれをすべきなのは権力と責任を持っているあなたなのです。

 孤立は時間をかけてゆっくりと進行するため、おそらく本人はその状況に気づきません。孤立しているかどうか判断したい人は、以下を自問してみてください--人にアドバイスを求めますか? 部下と面談しますか? 人の話を黙って最後まで聴きますか? 携帯端末をテーブルに置いたまま人と話しますか? いつも人とどうやってコミュニケーションを取りますか--電子メール、電話、それとも直接会いますか? あなたの重大な盲点を教えてくれる〈早期警告システム〉はありますか?--たとえば無記名の投書箱(手紙またはオンライン形式)、あなたの助言役を務める部下と定期的に一対一でミーティングを行うなど。

孤立に気づくとき

 大抵の場合、何らかの転換点を迎えるまで、自分の孤立には気づかないものです。たとえば、昇進、新しい仕事、他の地域への異動、自分または家族の生活の変化、チームの変化などです。退職が転換点となる人もいます。さらに、経済動向の変化、業界の変化、主力商品の寿命、競合他社の動きが転換点となる場合もあります。

 きっかけが何であれ、転換期を迎えると、リーダーは自分の状況を正確に見極めて状況にうまく適応しなければならなくなります。というのも転換期が来たということは、状況が変わりつつあるということであり、うまく適応しなければ変化に乗り遅れいつか脱線してしまうからです。状況の変化に適応するには、戦略を変えるか、チームメンバーを変えるか、あるいはリーダーシップスタイルを変えなければなりません。

 孤立している人は、状況をあまり客観視できておらず、迅速にリーダーシップスタイルを変えられないことがあります。経営幹部が判断を誤るのは、ほとんどの場合、転換点をすばやく察知できなかったことが原因です。その結果、大きな問題を回避できなかったり、絶好の機会を逃したりするのです。リーダーの失敗談には、転換点となる問題に気づかなかったために、対応が遅れたことを後悔する話がたくさんあります。

孤立のリスク

 前述したように、リーダーは孤立を避けるために何らかの対策を採らねばなりません。エグゼクティブや野心的なリーダーは、十分に孤立対策を施していると思い込みがちです--しかし困った事態に陥ると、そうでなかったと気づきます。ビジネス上の難題にぶつかったときや、自身に関するアドバイスが必要なとき、彼らは往々にして相談相手やアドバイスをくれる人が見つからなくて苦労するのです。

 本章では、人と協力するための重要な要素についてご説明します。といってもよくあるアドバイスとは違います--好印象の与え方、説得力のある話し方、人を魅了する方法といった話ではありません。もちろん、こうした能力がある方が有利には違いありませんが。本章ではむしろ、振る舞い方や他人との接し方を学びます。たとえばあなたの情熱を人に話す、アイデアを共有する、悩みや不安を打ち明ける、他人の意見を求める、相手への理解を深めるために質問する、人の話を素直に聴く、フィードバックやアドバイスを請う、などです。

 仲間たちと効率よく仕事をするには、一対一でのやり取りとグループでのやり取りの両方が必要になります。協力して働くには、両方をマスターしなければならないので、人と交流する手腕を向上させる方法についてもお話します。

孤立する起業家

 会社の経営者には、フィードバックをもらうのはかなりの難題に思えるようです。というのも、彼らは「頼める人がいない」と思い込んでいるからです。私のオフィスには起業家たちがひっきりなしに訪れます。そしてその多くが、会社で困難な状況に陥った、自分のリーダーシップスタイルの見直しが必要だと語ります。私が上級管理職たちからフィードバックをもらってはどうかと訊ねると、彼らは大体こう答えます。「フィードバックなんて無理ですよ。みんな萎縮して何も言えませんよ」さらには「有益なフォードバックをくれるほど尊敬する人がいないからねぇ」などと言う人もいます。

 このような人には、私はこう伝えます。「そんなはずはありません。優秀な人を雇って上級管理職の質の向上をはかればいいではないですか。いや、ひょっとしたらチームは優秀なのに、あなたに問題があるのかもしれませんよ。あなたは、部下たちに彼らの能力にふさわしい敬意を払っていません。彼らのフィードバックは役に立つはずです。しかし、あなたから頼まない限り、彼らは何も言わないでしょう。上司であるあなたには、自覚している以上の権力があるのです。彼らは上司であるあなたに従う立場ですから、リスクを冒して率直な意見を言おうとはしないでしょう。彼らの給料を払っているのはあなたなんですから」

 起業家から部下たちにアドバイスを求めると、部下たちは有益なフィードバックをくれますし、チームとの関係も劇的に良くなります。そうなると、チームのメンバーは早い段階から--つまり手遅れになる前に--問題点を報告してくれるようになります。
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