goo

環境に関わる市民活動とNPO/NGO

『よくわかる環境社会学』より 環境を守る/創るたたかい 地球環堺問題の時代の環境運動

市民活動NPO/NGOとは何か

 「市民活動」という言葉を聞いたことがあるだろうか。ここでは、環境保全をはじめ、幅広い分野においてさまざまな思いをもった一般の人びとが、自主的に集って活動することを「市民活動」と呼ぶことにしよう。「市民活動」という言葉がいつから使われたのかという点を明確にすることは難しいが、1970年代頃から使われ始めたと考えてよいだろう。

 それまでに展開された公害問題を契機とした「住民運動」や、平和・環境・人権などめさまざまな分野で展開された「市民運動」に関わっていた人びとだけではなく、運動に関わっていなかった人びとも含めて、生活に密着した課題(まちづくり・環境・福祉・人権・草の根レベルの国際交流・教育・平和など)の解決をめざす市民の試みを「市民活動」と呼ぶようになった。とくに80年代後半以降、「ネットワーク/ネットワーキング」を合い言葉に、さまざまな領域、種類の団体の緩やかな連携が模索され、市民活動の裾野は広がっていった。一方で住民運動や市民運動と対立していた行政も、「運動」ではなく市民「活動」という表現を用いて市民の主体的、自発的な活動を評価し、自治体の公共政策の中に市民活動を位置づけてきたという側面も確認しておきたい。

 さて、最近ではNGOやNPOという言葉のほうをよく耳にするだろう。NGOは「Non Governmental Organization」の略で非政府組織と呼ばれる。その起源は19世紀初期の人道支援活動にあり、 NPOに比べて歴史は古い。一方、IMPOは「Non Profit Organization」の略称で、非営利組織と呼ばれる。NPOには、公益法人(社団法人や財団法人)や労働団体、経済団体などを含むような広義の定義もある。日本において一般的に議論されているNPOは、NPO法人のほかにはボランティア団体や市民活動団体が含まれる。また、町内会や自治会・自治会・婦人会・PTAといった伝統的地域団体の活動は、行政の末端組織という位置づけもなされるが、地域のまちづくり活動や社会問題の解決の主体として機能することも少なくない。さらに上で述べたNGOも当然NPOの中に含まれる。NPOの定義をめぐって組織の規模の大小と他益性(「他者のため、社会のために活動する度合い」)と共益性(「仲間内のために活動する度合い」)という軸でNPOの類型が議論されている(図1)が、他益性と共益性の区分をつけることも難しく、現場の多様な実態をみると「何かNPOか」という定義に関わる厳密な議論はあまり意味がない。

環境に関わる市民活動・NPO/NGO

 環境に関わる市民活動・NPO/NGOといってもその内容や活動形態は千差万別である。図2は独立行政法人・環境再生保全機構による「環境NGO総覧オンラインデータベース」(平成26年7月現在)に登録されている環境団体(5,249団体)の活動内容を示したものである。環境教育、自然保護、まちづくり、森林の保全・緑化などの活動が多いことがわかる。ところで、市民活動・NPO/NGOの類型の方法にはさまざまあるが、ここでは活動内容が行政当局や企業に対する働きかけなのかそれとも、活動の参加者に向けられたサービスなのかという点と、その活動に団体メンバーが直接的に参加するのか間接的に参加するのかという点から活動のパターンを類型化しよう。

 ①は公害反対の住民運動のように、行政当局や企業などに対して抵抗・告発型の抗議活動を伴う活動である。 1960年代の公害反対運動やその後の大規模開発問題(コンビナート建設や原子力発電所など)や高速交通問題(新幹線・空港建設など)に反対する住民運動・市民運動などが該当する。

 ②には「○○の自然を守る会」など、自然を守りながら参加者自身が自然に親しむ活動などがあてはまる。また、1970年代半ば以降の都市部で問題になった生活公害(ゴミ問題、洗剤公害など)に対して各地で展開された使用自粛運動や、環境配慮の啓蒙活動なども該当する。

 ③には事業活動を行う市民運動・NPO/NGOが該当し、たとえば環境保護を目的に自然体験学校を開催する団体や、リサイクル活動を事業として運営する団体、市民出資による風力発電事業をするNPOなども例としてあげられる。社会的なミッションに対して活動をする「社会的企業」もこの類型に含まれる。

 ④の議会に代表を送る活動は、議会や審議会などの既存の制度やロビー活動を通じて、法整備のような新たな制度形成を求める活動である。たとえば、ドイツの緑の党や日本の生活クラブ生協の代理人運動、市民活動などが行政から補助金を受けながら行政の審議会などに参加する「政策受益団体」、さらに地球温暖化防止に向けた京都議定書(1997年)の議決に際してロビー活動を展開し成果を収めた環境NGOがあげられる。

 留意すべきは、活動類型はそれぞれ独立しているのではなく、1つの市民活動団体・NPO/NGOの中に併存していることも多い。また、活動内容が変化ずることもあり、③への変化は「事業化」、④への変化は「制度化」と呼ばれる。最後に市民活動の事業化・制度化の課題についてみてみよう。

市民活動(市民運動)の「制度化」と「事業化」の課題

 市民活動・NPO/NGOの活動を継続的に展開するためには、「手弁当的な活動」では困難であり、活動費の捻出や事務所の維持のための資金調達が必要になってくるよそのために何らかのサービスを提供し事業活動をする市民活動・NPO/NGOも少なくない。有機農産物や産直提携、風力発電や太陽光発電の事業化、廃食油を原料としたバイオ燃料、石けん製造などの活動は、非市場的なニーズを事業化した成功例である。その一方で、市場化した領域は営利企業との競合にさらされ、活動の内容も企業と変わらなくなる可能性もある。それぞれの活動が元来もっていた社会変革のピジョンや社会的ミッションに立ち返ることが,,市民活動・NPO/NGOらしさを保つことにつながる。

 また、新たな制度形成を求めるために既存の制度の中で活動する団体の場合、政治や政策決定に影響力をもちうるが、同時に体制側からみれば、制度化され た団体は体制内部に取り込まれたことになる。実際に1990年代以降、市民の自発的な活動を調達し公的サービスの限界を補おうとする行政セクターの政策(NPM : New Public Management 型政策)が広がり、市民活動の振興政策と市民活動団体やNPOと行政との「協働」(パートナーシップ)政策が進展している。

 一方で、市民による事業が行政政策の都合で調達され、市民活動・NPOが行政の下請け化する実態や、補助金の交付や指定管理者としての業務委託を盾にして、とくに福祉の分野では行政にとって都合のよいNPOが選別化される動きも見られる。日本の市民活動・NPO/NGOの活動のための財源確保は、官庁・自治体やその関連財団からの補助金や助成金に依拠しているが、体制に絡み取られない努力が重要になってくるといえる。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« 客となってス... 地政学から配... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。
数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。