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公物の要件 行政主体による供用

『行政法概説Ⅲ』より 公物法の基礎概念 公物の要件

公物法の基礎概念

 1)行政主体が直接に公の用に供する有体物を公物という。

 2)国有財産、公有財産であって、行政目的に供されているものを行政財産、行政目的に供されていないものを普通財産という。

 3)いまだ公物ではないが、将来公物とすることが決定されたものを予定公物といい、これについては、公物に準じた取扱いがなされることが多い。

 4)公物は、行政主体自身が利用する公用物と直接に公衆により利用される公共(用)物に分類される。

 5)私人が所有権を有するのが私有公物である。私有公物が存在するのは、公物であるための行政主体の権原が所有権に限らないからである。

 6)個別の公物管理法の適用を受けない公物を法定外公共物という。

 7)里道、水路は、地方分権改革の結果、市町村に譲与(無償譲渡)され、財産管理、機能管理の双方が、市町村の自治事務とされることになった。ただし、譲与の対象になったのは、現に公共の用に供されていた|日建設省所管の里道、水路のみであり、公共用物としての機能を喪失しているものは、国が普通財産として直接管理することになった。

 8)1999年の海岸法改正と地方分権一括法制定により、法定外公共物である海浜地は存在しなくなった。

 9)公物が物に着目した概念であるのに対し、行政主体により公の目的に供される人的・物的施設の総合体を営造物という。しかし、今日では、営造物概念に代えて公共施設概念が広く用いられるようになってきた。公共施設とは、公共の福祉を維持増進するという目的のために国民の利用に供するものとして行政主体が設ける施設である。

私人による供用

 私人が公の目的に供していても公物ではない。たとえば、私人が私道を一般に利用させていたり、自己の所有する空地を一般に開放し、公園として自由に使用させていたとしても、公物ではない。道路運送法は、自動車道事業者が国土交通大臣の免許を受け、一般自動車道の使用料金を定め国土交通大臣の認可を受け、当該道路を供用する義務を負う制度(道運65条)を設けているが、この一般自動車道は民間の自動車道事業者が供用するものなので公物ではない。国土交通大臣の免許や認可が行われていること、一般自動車道が道路交通法上の道路とされ、同法の規制を受けることをもって公物になるわけではないのである。地下水については、立法政策としては公物とすることも考えられるが、わが国では、土地所有権に包摂されており、公物ではない。

 私有地が建築基準法42条2項の規定に基づく指定を受けて建築基準法上の道路(いわゆる「2項道路」)になったとしても、当該道路は私道であり、行政主体により直接公の用に供されているわけではないので、公物ではない。しかし、2項道路は、準公道としての性格を持つ。東京地判平成19・2・22判時1963号78頁は、「自己の所有地がいわゆる2項道路として指定され、当該2項道路に接することにより自己所有の建物が建築基準法上の接道義務を満たしている場合には、その土地の所有者は、私法上、他人の通行権を一般的に否定したり、一般的な通行禁止を命ずる裁判を求めたりすることは、特段の事情のない限り、権利の濫用であって許されないものというべきである。けだし、道路は、本来公共の需要を満たすために存在するものであり、自己が建築確認を受けることができたのも、自己のみならず、他人の通行も許容し、その結果都市の安全さ、快適さを確保することを社会一般に対して許容したからなのであって、そのような者は、自己所有の2項道路を他人が通行することも受忍すべき地位にあるからである」と判示している。そして、「2項道路の所有者が通行妨害をした場合に私法上妨害を受けた者が所有者に対してその妨害排除請求をすることができるかどうかはともかく、2項道路の所有者が私法上自ら通行妨害行為をすることができる地位にあることの確認を司法機関に求めることはできない」としている。他方において、2項道路の所有者以外の者による利用について、一般には反射的利益ととらえられており、日常生活上不可欠の利益を有する者に限り、人格権に基づく妨害排除請求が認められている。

指定管理者制度

 公立の図書館、保育所等の公物(「公の施設」と呼ばれる)が民間の指定管理者により管理されている場合、行政主体により供用されているといえるかという問題が生ずるが、指定管理者は行政主体の管理事務を代行しているので、公物ととらえてよいと思われる。

P F I

 1999 (平成11)年に議員立法で「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」が制定された。いわゆるPFI法である。PFI (Private Finance Initiative)は、イギリスにおいて、サッチャー政権以来、小さな政府を目指して進められた一連の行財政改革の一環として、1992 (平成4)年に導入されたものであり、国が従来行ってきた公共施設の整備や公共サービスをPFIにより民間事業者に委ねることにより、国の財政負担を減らし、かつ、提供する施設・サービスをより効率的なものとするための施策として採用されたものである。

 わが国においても、行政主体が公共施設を整備する場合、建設は民間事業者に請け負わせ、管理も民間に委託する例がみられた。PFIにおいては、民間事業者が自ら施設完成後の管理運営を見越して施設の設計を行うことができる。PFI法によれば、公共施設等の管理者等(各省各庁の長〔衆議院議長、参議院議長、最高裁判所長官、会計検査院長を含む〕、地方公共団体の長、独立行政法人、特殊法人その他の公共法人)が基本方針および実施方針に基づいて特定事業を選定し、その特定事業を実施する民間事業者を公募の方法等により選定し、選定した民間事業者との間で協定(契約)を結んで当該事業が行われることになる。PFI法が対象としている公共施設等の定義では、道路、鉄道、港湾、空港、河川、公園、水道、下水道、庁舎等の多様な公物が含まれている(民活公共施設2条1項)。公物の設置管理がPFI事業者によって行われる場合、行政主体が公の目的に供するといえるのかという問題があるが、指定管理者の場合と同様、肯定してよいと思われる。

 PFI事業の主たるスキームには、BTO方式とBOT方式がある。BTO方式とは、選定事業者が施設を設計・建設し(Build),施設完成後に当該施設を国・地方公共団体等の公的主体に所有権を譲渡し(Transfer)、選定事業者が当該施設を維持管理して公共サービスを提供するものである(Operate)。これに対し、BOT方式とは、選定事業者が施設を設計・建設し(Build)、当該施設を所有したまま当該施設を維持管理して公共サービスを提供し(Operate)、事業終了後、当該施設を国・地方公共団体等の公的主体に譲渡するものである(Transfer)。その他、選定事業者が既存の対象施設を改修した後(Rehabilitate)、当該施設を維持管理して公共サービスを提供する(Operate) RO方式もある。

 2011(平成23)年にPFI法の重要な改正が行われた。対象施設の拡大(賃貸住宅、船舶、航空機、人工衛星を追加)、民間事業者によるPFI事業の提案の制度化(回答義務あり)(民活公共施設6条)も重要であるが、最も注目されるのが、公共施設等運営権(コンセッション)制度の導入である。これは、「新成長戦略(2010〔平成22〕年6月18日閣議決定)」において、PFI制度にコンセッション方式を導入し、既存の法制度(いわゆる公物管理法)の特例を設けることにより公物管理権の民間への部分開放を進めるとされたことを受けたものである。公共施設等運営権とは、公共施設等の管理者等が所有権を有する公共施設等であって利用料金を徴収するものについて、運営等(運営および維持管理ならびにこれらに関する企画をいい、国民に対するサービスの提供を含む)を行い、利用料金を自らの収入として収受する事業(民活公共施設2条6項)を実施する権利をいう(同条7項)。公共施設等の管理者等は、PFI事業者に公共施設等運営権を設定することができる(民活公共施設16条)。既存の公共施設等に公共施設等運営権を設定した場合には、公共施設等の管理者等は、当該建設、製造または改修に要した費用に相当する金額の全部または一部を公共施設等運営権者から徴収することができる(民活公共施設20条)。

 これは、公共施設等運営権設定の対価(コンセッション・フィー)としての性格を持つ。公共施設等運営権者は、公共施設等運営事業を開始する前に、公共施設等の管理者等と公共施設等運営権実施契約を締結しなければならない(民活公共施設22条1項)。公共施設等運営権者は、国民へのサービス提供の対価として、利用料金を自らの収入として収受する(民活公共施設23条1項)。利用料金については公共施設等の管理者等への届出制がとられている(同条2項)。公共施設等運営権は物権とみなされ、同法に別段の定めがあるものを除き、不動産に関する規定が準用される(民活公共施設24条)。公共施設等運営権には抵当権を設定することもできるので(民活公共施設25条)、金融機関からの融資や投資家の投資を受けやすい仕組みになっている。このように、公共施設等運営権(コンセッション)制度は、公的主体が所有する公共施設等について、財政負担を抑えつつ、民間事業者による自由度が高く安定的な運営を可能にし、利用者の二-ズに対応した効率的で高品質のサービスが提供されるようにすることを目的としている。2013 (平成25)年6月6日の民間資金等活用事業推進会議決定では、空港、上下水道における公共施設等運営権制度を積極的に導入することとされた。
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