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地球温暖化問題の科学 2℃目標って何?

『エネルギー政策の新展開』より 地球温暖化問題と日本

地球温暖化とは何か

 現在の地球全体の平均気温は、産業革命前に比べて0.8℃ほど既に上昇しており、これが今後、さらに上がることが懸念されている。この結果、単に暖かくなるに留まらず、台風が強くなったり、海水が温度上昇で膨張し氷河が溶けて海面が上昇する、といった可能性が議論されている、

 地球温暖化は、温室効果ガスが大気中に蓄積されることで引き起こされる。温室効果ガスとは、CO2,メタン、N20(亜酸化窒素)、そして代替フロンである。このうち、C02は、化石燃料である石炭、石油、天然ガスの燃焼で発生するものと、森林破壊などで植物から排出されるものがある。メタンとN20は農業起源が主で、代替フロンは工業プロセスや家電機器等から排出される。

 日本では温室効果ガス排出量の85%が化石燃料起源のCO2である。世界ではこの割合はもっと低くて67%が化石燃料起源のCO2であるが、今後、ますます人類が豊かになって、多くの化石燃料を用いるようになると、この化石燃料起源のCO2が増大することが特に懸念されている。

 これまでのところ、世界の温室効果ガス排出量は増え続けてきた。このままでは、地球温暖化によって2100年の温度上昇が4℃を上回る可能性が指摘されている。温度上昇を2℃以下に抑制するためには、図4-2のように、これまで上昇傾向にあった温室効果ガスの排出量を、大幅に削減する必要があることが、2014年の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第五次評価報告書で指摘されている。

地球温暖化の科学的不確実性

 地球温暖化問題には、他の環境問題と同様に、不確実性がある。確実に言えることは、①世界の温室効果ガス濃度が上昇していること、および、②世界平均の温度が上昇を続けていること、である。このうち、①については、最も重要な温室効果ガスであるCO2の濃度の上昇について、きれいな観測データが得られている。ここで、毎年CO2濃度が上下しているのは、陸地面積が大きい北半球が夏になると、森林によってCO2が吸収され、それが冬に大気中に放出されるためである、②については、「世界平均の温度」という場合の観測点の選択には任意性が残るものの、やはりほぼ間違いのない結論とみて差し支えない。

 だが科学的にはっきりと言えるのはここまでで、ここから先は科学的不確実性は大きい。まず、大気中の温室効果ガス濃度が産業革命前の2倍になったときに何度温度上昇が起きるか、と定義される「気候感度」については、IPCCの推定範囲は1.5℃以上4.5℃以下とされており、不確実性を反映して幅がある。かつ、この幅に入る確率は67%とされており、33%の確率でこの幅の外にあるとされる。

 前述したように、すでに地球平均の温度は0.8℃上昇している。今後、世界の温室効果ガス濃度を産業革命前の2倍に抑制することに成功したとしても、そのときの温度上昇は1.5℃かもしれないし、4.5℃かもしれない、あるいは、この圏外に出る可能性も33%ほどある、というわけである。このように、気候感度の不確実性は大きい。

地球温暖化による環境影響の不確実性

 それでも、気候感度の不確実性は、まだ一定の幅をもって定量化されているだけ、よく分っている部類に入る。もっと分らないのは、今後、一定の温度上昇が起きた場合に、どのぐらいの環境影響があるか、という点である。

 世論の現状に照らした多数派意見といえば、温暖化の悪影響は甚大だろうというものだが、筆者は賛同しない。つまり筆者は多数派ではない。筆者がなぜそう考えるかを、以下に述べる。更に詳しい議論については、文献を参照されたい。

 地球温暖化が進行すると、①穀物の収量が下がる、②漁獲が減少する、③生物が絶滅する、といった懸念がIPCCでも報告されている。だが何れも、IPCCは環境影響を誇張し不確実性を軽視しすぎているきらいがあり、それほど決定的な証拠とは言えない。むしろ研究途上のものである。

 地球温暖化による「リスクがある」もしくは「リスクが増大する」ということはIPCCが繰り返し言っており、これ自体は間違いない。だがこれは、何らかの変化があれば何事にもリスクがあるから、当然のことである。地球温暖化でリスクがあるとしても、それが他のリスクと比べて大きいのか、ということが相対的に分らないと、その重大性が分らない。

 過去、人類は環境を大きく変えてきた。例えば、太平洋戦争直後には、日本ははげ山だらけだった。戦争中には燃料が不足したので薪にしたりして、切り払ってしまったためだ。それを、戦後には建築材として儲かるということで植樹をした。だがその後、建材としては採算が合わなくなり伐採されなくなって、かなりの部分は放置されて、現在の山となった。鬱蒼とした緑豊かな日本の山というのは、このようにして、人間の手が繰り返し入って出来たものである。そして、生態系も、人間も、そのような環境変化に対して、適応して生きてきた。地球温暖化による生態系への影響が懸念されているが、歴史的に起きてきた人為的な直接介入と比較するならば、それほど大きな影響とは言えない、と筆者は見ている。ただし、このようにして温暖化問題の環境影響を相対化して理解する試みは、まだあまりなされておらず、発展途上である。

2℃目標とはどのようなものか

 後述のパリ協定でもそうだが、今日では、産業革命前に比べての温度上昇を2℃以下に抑制するということが、世界政治での共有された目標となっている。

 この2℃という数字がいつから長期的な目標として議論されるようになったのかは、判然としない。伝聞では、早くは1970年代には言及されていたという。元々は、CO2濃度が2倍になった場合には温度上昇が2℃程度になりそうだといったシミュレーション結果があった。C02濃度が2倍になるというのは分りやすい設定なのでシミュレーションでは何の気なしによく使われていた。この辺の経緯で、2℃という相場観が形成されてきたのだと思う。

 それで、その後科学的知見が積み上がって2℃に決まったのかというと、前述したように温暖化の悪影響にはなお不確実性が大きいので、2℃ならいいのか、3℃なら駄目なのか、等と言ったことを詳しく議論することは出来ない。まじめに考えるならば、2℃の場合の不確実性の誤差幅の方が、2℃と3℃の場合の差よりもずっと大きいだろう。国立環境研究所江守正多氏も、より慎重な言い回しながら、1.5℃と2.5℃の場合を比較して、その悪影響の差は小さい(不確実性が大きいので誤差の内になる)という趣旨のことを述べている。

 だが、環境問題にはよくあることだが、ある数字が提示され、政治家が言及し、それにまつわる科学論文が増えると、その数字は社会的に固定し、それを緩めることは不道徳とされる。かくして、2℃目標はパリ協定にも入り込むこととなった。
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