みちのくの放浪子

九州人の東北紀行

ストーブ

2017年11月18日 | 俳句日記

また石油ストーブを買った。
福島県でも暖は石油ストーブでとった。
私はエアコンが好きではない。
エアコンは部屋の空気を乾かす。

部屋の空気が乾くと煙草がまずくなる。
それに夜遅くだとか朝早くにエアコンを
回すと、室外機の音がベランダに響き、
ご近所に申し訳ない気がするのである。

ファンヒーターではペラが微妙に室内の
空気をかき回し、神経を刺激する。
その点、昔型の石油ストーブは臭いこそ
すれ、静かなのが有り難い。

何よりも嬉しいのは、何時でも温かい飲
物を口に出来ることである。
煮炊きもできるし、網を置けば餅だって
パンだって焼ける重宝さだ。

それに、夜も更けてスタンドの灯りだけ
で作業をしている時、振り向けば石油ス
トーブの火が赤く燃えているのを見ると
何故かほっとする。

その昔のストーブの定義は、薪、石炭、
石油を燃やす暖房装置なのだそうだが、
今日ではガス、電気が加わった。

松本たかしさんの句に、

《ストーブの 口ほの赤し 幸福に》

というのがある。

あの時代のストーブの炎には、人を幸せ
にする力があった。
もっと艶かしく、至福の句もある。

《ストーブを 蹴飛ばさぬやう 愛しあふ》

櫂 未知子さんの情熱的な句だ。
ストーブの炎は人の心をも、燃やした。

1,830年代の冬のパリを舞台にした名作
オペラ「ラ・ボエーム」でもストーブが
名脇役として登場する。

薪も買えない貧乏学生が、屋根裏部屋を
4人でルームシェアをしていた。
ある寒いノエルの夜、耐えかねた一人が
自分の書いた原稿を燃やして、皆で暖を
とるところから物語が始まる。

彼らの友情や、その内の1人と同じアバル
トメントに住む針子の悲恋がテーマだ。
人の世の明暗、表裏、寒暖が美しい音楽
に乗って織り成される。

誰もの学生時代が、切なく懐かしく思い
出されるストーリーである。
渦中にある若い人達には重すぎるテーマ
だと思ったりもするが。

この時代の日本は、囲炉裏と炭火鉢が暖
を取る主な手段であった。
暖炉や薪ストーブは木と紙で出来た日本
家屋には危なっかしくてそぐわない。

時代が下って、私の小学校時代の教室に
は、どこでも石炭ストーブがあった。
無論、石炭をくべたり運んだりするのは
生徒達の務めであった。

休み時間には、ストーブの周りに生徒が
集まってワイワイガヤガヤ賑やかな時を
過ごしたものである。
あの時代の不便さと人間らしさは、教育
の原点であったのかも知れない。

〈ストーブの 醸せし時の 懐しく〉放浪子
季語・ストーブ(冬)

11月18日〔土〕曇り 風強し
東北入りした最初の冬は。ストーブ無し
で乗り切った。
次の冬、ストーブを否応なく買った。
嫁さんを貰ったような安堵があった。
本日、2度目の嫁さんを貰った。


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