みちのくの放浪子

九州人の東北紀行

金木犀

2017年10月06日 | 俳句日記

金木犀が香り出した。
無論、秋の季語である。
花言葉は、謙虚、謙遜、真実、陶酔。
馥郁たる香りは陶酔するに価する。

私は、不思議とこの香を嗅ぐと、かつて
嗅いだ街の情景を思い出してしまう。
子供の頃に嗅いだ街も、大人になってか
ら嗅いだ方々の街角も浮かぶのである。

良い香りを含ませた薄絹を、突然ふわり
と被せられたような出会いの中に、驚き
と、懐かしさと、嬉しさがない交ぜにな
って記憶の扉が大きく開かれるようだ。

子供の頃は、香りの出処を探して、見つ
かれば安堵した。
大人に成ると、香りに身を委ねて、暫し
の別世界を味合う様になった。

その時にあちこちの街角を思い出すので
ある、悲喜こもごもと一緒に。
居所の定まらぬ人生を送って来た人間の
特権なのかもしれない。

この秋も、この匂いと共にどんな記憶が
私の頭に刷り込まれて行くのだろう。

〈金木犀 記憶の底に 香りおり〉放浪子
季語・金木犀(秋)

10月6日〔金〕雨のち曇り
今日は満月なのに、この天気だ。
今年は、値千金の月に縁がないようだ。
東北入りをしたその年に、仮の宿の奥
まで月光が差し込んだ。
思わず全ての電気を消したものだ。
あの光景は今でもまざまざと思い出す。
人は花鳥風月と生きている。