モノトーンでのときめき

ときめかなくなって久しいことに気づいた私は、ときめきの探検を始める。

クリスマスローズ・オリエンタルス赤系の花

2009-02-15 11:50:46 | その他のハーブ

今朝帰ったら、昨日の春一番がクリスマスローズの固いつぼみを溶かしていた。

(写真)クリスマスローズオリエンタルス赤系の花


バラにはトゲがある。クリスマスローズにはノコギリが葉にある。
美しきものローズには共通してその美しさを守るために”毒”があり、この毒が美しさの価値を高めているのだろう。

しかし、クリスマスローズには本物の毒が根にある。
毒は使い方により薬となり、中世時代は狂気をおさえる薬として使われていたというから、見かけ以上にタフで恐い植物のようだ。

世界には約20種の原種があり、ヨーロッパ、地中海沿岸、カスピ海沿岸、中国四川省までの北緯40~50度の地域に生育している。
今では園芸品種が数多く開発されていて、チューリップ・クロッカスなどはオランダが中心で、バラはフランスだが、クリスマスローズの園芸品はイギリスが中心のようだ。冬のイギリスは厳しい、そして花がない。だからパンジーやクリスマスローズの品種改良が進んだのだろう。

園芸品種の中心になった原種が「ヘレボルス・オリエンタリス」で、数多くの品種が開発された。
原種オリエンタリスは、種小名のごとく東方のヘレボルスで、トルコ・グルジア・ウクライナが原産地であり、耐寒性が強く丈夫な品種だ。ただ政情不安定なところが多いのが難点で、まだまだわからないことがありそうだ。


クリスマスローズの園芸品種開発の物語No1
この品種改良に尽力したのがクリスマスローズの女王といわれるイギリスの女性育種家ヘレン・バラード(Helen Ballard 1909-1995)で、彼女が60歳になった1960年代後半から新しい品種改良がはじめられた。
60歳が定年ではなく、これからもうひと働き出来るという勇気づけられるケースでもある。

ただ、まったくの素人ではなく、彼女の家系は園芸一家でもあった。義父がアスターの育種家、夫のフィリップ(Philip Ballard)がスノードロップの育種家と恵まれた環境にあったという。

彼女は、クリスマスローズ原種の産地であるマジョルカ、コルシカ、ユーゴスラビア、コーカサスに60歳を過ぎてから採取に出かけ、そこで十分な原種を集め、またその当時の園芸品種開発の先端を行っていたドイツから学ぶために独学でドイツ語を学習した努力家でもあった。
ただただ敬服する60歳からのばあさん、いやパイオニアなのだ。

バラードは、あらゆるものを交雑させ彼女の名前がつけられたヘレボルス・バラーディアエ(H.x ballardiae)と呼ばれる交雑種の作出に成功した。そしてそこから、オリエンタリスとの交雑で様々な色彩の品種開発を始めた。
しかし彼女は、約20年間で53もの交配種を開発したが、亡くなる3年前までこれらの事実とドキュメントを個人だけで秘匿し秘密にしていた。

1993年に、ドイツの植物家 ジゼラ・シュミーマン女史(Gisela Schmiemann)に、作出した品種とその開発のメモを渡し、公開することに同意した。
ジゼラは、ヘレン・バラードが残した数々のクリスマスローズハイブリットの花を豪華本「Helen Ballard」に編集出版した。これがあったから、また、ジゼラがヘレン・バーバラの品種を守り彼女の名前を冠したクリスマスローズを作り続けたので、クリスマスローズの女王としてバラードが歴史に名前を残すことが出来た。

持つべきものは、経典の作成とこれを普及する弟子だが、バラードはいい弟子を持ったことになる。
ジゼラは、2007年10月に来日して講演などを行っているが、今ではクリスマスローズの大家となっている。

1850年ベルリン植物園で始まったクリスマスローズの品種改良は、100年後にイギリスのヘレン・バラードが開花させ、この成果を受け継いだのはドイツのジゼラであり女性が活躍した領域でもある。二人とも生年月日がわからないのも特有の謎で、深く追求しては失礼に当たるのだろう。

(写真) クリスマスローズオリエンタリス赤系の葉


クリスマスローズ・オリエンタルスのハイブリッド
・キンポウゲ科クリスマスローズ属の耐寒性がある常緑の多年草。
・学名は、ヘレボレス・オリエンタリス(Helleborus orientalis Lam.)の園芸品種。
・属名Helleborusの語源は、ギリシャ語で「殺す」を意味するHeleinと「食べ物」を意味するboraからなる。食べると危ない毒草である
・イギリスでは、オリエンタリスを四旬節(Lent)に咲くのでレンテン・ローズ(Lenten rose)とも言う。和名は花の形が、祭りでかぶる花笠に似るので八つ手花笠とも言われる。
・ちなみに、英名でクリスマス・ローズ(Christmas-Rose)と呼ばれるのは白花の原種H.ニゲルのこと。他にはウインターローズとも呼ばれる。和名は待雪草。(スノードロップの和名も同じ)
・オリエンタルス(h.orientalis)種の原産地は、ロシアコーカサス地方・トルコ・黒海沿岸。
・園芸品種の交配種の片親となる重要な原種。オリエンタリスの園芸品種は登録されているだけで141品種もある。
・草丈20-40cmの常緑の多年草で、花茎の先端に一輪または分岐して二輪の花をつける。
・花のように見える5枚の花弁は、花を保護する萼(がく)で、本来の花弁は退化して蜜を出す蜜腺となっている。
・開花期はクリスマスローズよりも遅く、2月頃に咲く。ハルザキクリスマスローズとも呼ばれる。種からの場合は開花まで2~3年かかる。
・受粉の仕組みは、先に雌しべが成熟しその後で雄しべが花粉を放出する。雌しべが受粉して種が出来るのが5月頃。
・アルカリ性の土壌を好むので石灰を入れて酸性を中和する。また肥沃な土壌を好む。
・夏場は半日陰で育てる。
・乾燥気味がよいので、乾いたらたっぷりと水をあげる。
・繁殖は株分けをする。


命名者のLam.は、かの有名なフランスの博物学者ラマルク(Lamarck, Jean Baptiste Antoine Pierre de Monnet de 1744-1829)。ダーウインの前に進化論を唱えて注目を集める。


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