tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

多忙のため2017年からは毎日更新できないかも…。しかし、中身は充実いたしますので、引続きのご愛読よろしくお願いします!

父母は七世、師僧は累効なり。義深く、恩重し/田中利典師『父母への追慕抄』(2)

2017年06月29日 | 奈良にこだわる
今日も、田中利典師(金峯山寺長臈・種智院大学客員教授)からご恵送いただいた『父母への追慕抄~父母の恩重きこと天の極まりなきが如し~』という冊子の1篇を紹介する。今回は「父母は七世、師僧は累効(るいこう)なり。義深く、恩重し」、『金峯山時報』(平成13年8月号)の「蔵王清風」欄に掲載された文章である。師のブログ「山人のあるがままに」では、こちらに出ている。

父が亡くなった。7月の暑い夜のことだった。病院のベッドで家族に看取られながら、片方ずつ息子2人の手を握りしめ、静かに息を引き取ったのであった。ここ数年、父は病の床にあったが、死の当日まで自坊で過ごし、わずか半日の緊急入院で、最後は穏やかに死期を迎えた。享年86歳の生涯だが、大往生と言わせてもらってもよいだろう。

父の急逝に悄然(しょうぜん)としながら、それでもばたばたと葬儀を終え、いまは、心の中にどうしようもない大きな空洞が空いてしまっているのを感じている。半年前からは寝たきりになっていたし、ある程度の覚悟は出来ていたつもりだが、この春からの多忙の中で、ついつい父のことが疎かになっていたことも確かだった。言いしれぬ悔いが残った。物言わぬ存在でもいいから、そのぬくもりだけでも永遠に感じていたいというのが正直な心根である。

親不孝な息子だったのかもしれない。あんなにたくさんのことをして貰いながら、何にも恩返しすることもなく、見送ってしまったようで、やるせなくて仕方がない。「親を亡くせば、誰でもが感じることだよ」と言われても、何の慰めにもならず、ただ自分の身勝手さ、愚昧(ぐまい)さ、至らなさに身が切り刻まれる思いなのである。

「父母は七世、師僧は累効なり。義深く、恩重し」(唐の道宣[どうせん]律師)というが、私の場合、亡父は大好きな父でもあり、師僧でもある。若くして在家から験門に入り、数多(あまた)の修行を重ねながら、法師として活動するそんな父の大きな背中を見て育ってきたのであり、現在私が修験僧となり、また宗門の実務に携わっているのも、すべて父によって導かれた道なのである。その恩たるや如何なるものなるか、到底、計り知れない重さである。

生前父とはよく意見を違(たが)えた。教えを受くべきこともたくさんあったが、素直に聞けなかったし、そのことは後で絶対に後悔しないと心に決めていた。ただ亡くしてみて思うことは「若し能(よ)く自らの行が具足せば、即ち他を化すること自然(じねん)なり」という聖徳太子のお言葉である。父は父なりのやり方で愚息達を教化し導いて来てくれたのだと痛感する。だからこそ今の自分がある、のである。

生涯を一行者として見事に生き抜いた父であったが、その法嗣(ほっし)として、いくばくかでも報いることが、唯一、私に出来うる恩返しなのであろう。そのことを実践していく中でしか、この心の空洞を埋めるすべはないとわかる。いまはただ、その恩徳に、感謝して合掌するのみである。―「金峯山時報平成13年8月号」より


私は昭和56年に学校生活を終えて、金峯山寺に入寺しました。しかし、昭和59年と平成5年には年老いた父を思い、父からの教えを学び、また自坊の手伝いに専心するべく、金峯山寺を辞めて、綾部に帰ろうとします。しかしそのたびに、自坊での父との関係はうまくいかなくて、そのうち金峯山寺も忙しくなり、再び三度(みたび)吉野に呼び戻されたのでした。

そして平成13年に宗務総長に就任して、結局、父のもとには戻れないまま、父を見送ることになりました。そういう後悔が、父の死に臨んで、やはり私の中には大きかったと思います。もちろん、本山で活躍することは父が望んだことなので、親孝行になった部分も大いにあったのですが…。


「父母七世」とは、自分に至るまでの七代にわたる父母(直系の祖先)ということのようだ。利典師にとってお父上は師僧でもあったので、二重の意味で「義深く、恩重し」ということになるが、本山・金峯山寺の宗務総長として大活躍された利典師は、見事に親孝行を果たされた。

昨日、Mさんという方が師のFaebookに《『父母への追慕抄』が無事に我が家に到着しました。先生のお父様、お母様への思いが詰まった冊子となっております。なかなか上手く行かない親子関係の我が父母への接し方、親孝行のヒントにさせて頂きたいと思います。最後になりましたがお忙しい中、又、体調が優れない中、先生、有難うございました》と書き込んでおられた。

病からまだ十分癒えないお体で、素晴らしいご本をお送りいただいた利典師、有り難うございました。
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父母の血脈/田中利典師『父母への追慕抄』(1)

2017年06月28日 | ブック・レビュー
昨日(6/27)出勤すると、田中利典師(金峯山寺長臈・種智院大学客員教授)からご恵送いただいた『父母への追慕抄~父母の恩重きこと天の極まりなきが如し~』という冊子が職場に届いていた。本年6月19日(月)、師はご両親の合同法要を営まれ(ご尊父の17回忌・ご母堂の7回忌)、それを期に制作された冊子である。師のFacebook(6/19付)には、

合同法要を記念して、『父母の追慕抄~父母の恩重きこと天の極まりなきが如し』という全36頁ばかりの小冊子を制作した。過去に金峯山寺の機関紙などで書いてきた、父母に関わる私の文章をとりまとめたものである。父母の供養になればという気持ちと、なにか、父母の足跡を残したいという、いわば私のわがままな思いだけで、編纂したものである。

幸い編集者の池谷さんという友人がいて、彼とは金峯山寺関連の書籍出版でなんども仕事をしており、今回も彼の手を借りて、上梓した。私の文章の中ではずぬけて有名?な「回転焼きと母」など、全9編をおさめている。フェイスブックやブログなどで何度か載せたものがほとんどであるが、本になってみるとまた一段と見栄えをよく感ずるものである。


「回転焼きと母」をはじめ過去に師のブログ「山人のあるがままに」などで拝読した文章も多いが、やはりこうして1冊にまとまると、また新たな感慨が湧く。親子の情愛が、しみじみと伝わってくるのだ。制作部数はわずか300部で、もう在庫がないとのこと。このような文章をわずか300人で独占するのはもったいないので、すでに師自らが公開しているものの中から、いくつかを紹介させていただくことにしたい。今回は「父母の血脈」という一篇。ブログではこちらに掲載されている。


お父上と利典師、金峯山寺蔵王堂前で(師のブログから拝借。冊子にも掲載)

「父母の血脈(けちみゃく)」
私の父は頭の良い人だった。頭の回転が速かった。その分、鋭すぎるところがあった。母は愚昧(ぐまい)ではなかったが、どちらかというと、ちまちましたことが嫌いで、おおらかな人だった。幼い頃から苦労をしたわりに、自分勝手なところもありはしたが、妙に度量の大きい人だったように思う。

私は父ほど頭の回転は速くないし、母ほどの度量があるわけではないが、ほどほどに二人の血を受け継いでいるように思う。父はケチで、そういうところは私の方が受け継いで、二人兄弟の弟は母の気前のよさを受け継いでいるが、全体を見ると、最近は弟の方が父に似てきて、私の方が母に似て来ているような気がする。

たぶん、弟は弟で、気前の良さはみとめるにしても、私と反対のことを思っているかも知れない。いずれにしても、「血」というのは嘘をつかないと、父と母を亡くしてみて、時間が過ぎゆくほどに、つくづくそう思う。

父はいまの私の年齢で、新寺の建立(こんりゅう)を発願して、成し遂げた。それは実にすごいことだったと、いまの私だからわかる。ちょうど寺建立の最中にオイルショックの不況があり、建立費寄付金勧募がうまくいかず、大変苦労したようだ。そういう意味では父も母も一生涯、お金に縁のない人生を送った。その辺は遺伝ではないはずだが、気前のよい弟と違って、私だけ貧乏性を受け継いでしまったようだ。

とはいえ、父も母も上々の人生を送ったのではないかと思う。ほかのことは似ていなくても、そういう人生を受け継ぐことが出来たら、なによりの幸せなのだろう。仏教では本来あまり血筋のことはとやかく言わない。「血」などというものは何代にもわたると、膨大な広がりを見せる。たとえば30代さかのぼるだけで、なんと約11億人にも連なるのだから血筋などは意味をなさないことになる。

それよりも仏教で大事にするのは「血脈(けちみゃく)」である。血脈とは、教法が師から弟子に伝えられること(師資相承[ししそうじょう])で、身体の血管に血が流れるのにたとえて、その持続性と同一性をあらわすものとしている。教法の相承を「血脈を白骨にとどめ、口伝を耳底に納む」などと表現するほどである。

私たちは肉身を両親から受けたが、人生を豊かに生きる教法はご本尊からいただいた。両方が大切であり、その両方を大切にしながら、上々の人生を送れたらと願わずにはいられない。ー「金峯山時報平成23年11月号」より


「血脈(けちみゃく)」を『日本大百科全書』で引くと《一般には親族としての血のつながり、血統の意であるが、仏教では師から弟子へと連綿と教法が伝えられることを血のつながりに喩(たと)えて血脈相承(そうじょう)という。自己の継承した法門の正統性と由緒正しさとを証明するものとして、とくに中国、日本で重要視された。また相承の次第を記した系図そのものをも意味し、師は法を授けた証(あかし)として弟子にその系図を与えた。日本では仏教以外に芸道や連歌(れんが)、俳諧(はいかい)などでも同様の意で用いる》とある。

それにしても、オイルショックの時代に今のお寺(大容山 林南院)を建立されたとは、すごい。利典師は、お父上から受け継いだこのようなパワーで、「紀伊山地の霊場と参詣道」の世界遺産登録を成し遂げられたのだな、と合点した。

『父母の追慕抄』に掲載されているのは、わずか9篇。急がずじっくりと噛みしめてまいりたい。利典師、ご恵送ありがとうございました。
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纒向学セミナー(第9回)前方後円墳の築造と葬送儀礼/7月15日(土)開催!(2017 Topic)

2017年06月27日 | お知らせ
古代史ファン垂涎のこんな無料セミナー&トークセッションがある。開催場所は桜井市立図書館。先着270名限定で、お申し込みは往復ハガキ(料金が124円に改訂された)で。桜井市纒向学研究センターのHPによると、

第9回 纒向学セミナー開催のお知らせ
「前方後円墳の築造と葬送儀礼」

講  師 : 小山田 宏一 先生(奈良大学教授・桜井市纒向学研究センター共同研究員)
対  談 : 寺沢 薫(桜井市纒向学研究センター所長)
日  時 : 2017年7月15日(土) 13:30~16:00 (開場 13:00)
会  場 : 桜井市立図書館 研修室1 (桜井市河西31番地)
       桜井駅南口より桜井市コミュニティバス 談山神社行き「神之森町」下車すぐ
◆定 員 : 270名(事前申し込みが必要。定員になり次第締切)
◆参加料 : 無 料
◆応募方法
 ・往復ハガキに郵便番号・住所・氏名・電話番号を明記して下記まで郵送してください。
 ・往復ハガキは参加者1名につき1枚でお申込みください。
 ・「第9回 纒向学セミナー」のお申し込みは先着順です。定員になり次第締め切ります。
 ※2017年6月1日より郵便はがきの料金が変更しています。ご注意ください。  
  (往復はがき料金:104円→124円に変更)
◆応 募 先 〒633-0085 奈良県桜井市東田339番地
      桜井市纒向学研究センター 「纒向学セミナー」係
  ※受付後、参加券(返信ハガキ)をお送りいたしますので当日、会場受付までご持参下さい。
◆お問合せ先: 桜井市纒向学研究センター 電話 0744-45-0590
◆主   催: 桜井市纒向学研究センター
◆協   力: 桜井市立図書館


毎回人気のこのセミナー、ぜひお早めにお申し込みを!

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奈良で開催の国民文化祭・障害者芸術・文化祭 2017/開会式の参加者を募集中 7月14日締切!

2017年06月26日 | お知らせ
本年(2017年)9月2日(土)19時から、東大寺大仏殿前で「第32回国民文化祭」および「第17回全国障害者芸術・文化祭」の開会式が行われる。主催の同フェスティバル事務局は、現在参加者を募集している。参加は無料で定員は約1,000人。奈良県出身の八嶋智人が司会を務め、伝統芸能や創作パフォーマンスなどが繰り広げられる。主催者のHPによると、

概要:世界遺産である「東大寺大仏殿」で、歴史と文化豊かな奈良の価値を感じる、大会の幕開けにふさわしいオープニング「開会式」を開催します。入場希望の方を募集しますので、ふるってご応募ください!
※入場のお申し込み(インターネット)はこちらから
※下記、「申込」についての【注意事項】をよく読んでからお申し込みください。

開催日時:2017年9月2日(土)
     開演 19時(受付時間16時30分~18時30分)
募集期間:2017年6月8日(木)~7月14日(金) 
     ※はがきで申込みの場合は、当日消印有効
場  所:華厳宗大本山 東大寺 大仏殿前(奈良市雑司町406-1)

内容
六世紀半ば、仏教をはじめ様々な文物が外国からもたらされ、この奈良の地で、日本古来の文化と交流・融合を果たし、今に続く日本文化の源が生み出されました。ここ奈良・東大寺を舞台に伝統芸能、創作パフォーマンスでその日本文化独自のダイナミズムを描き出します。

申込
・入場ご希望の方は、【注意事項】をご確認のうえ、「入場のお申し込みはこちらから」
(ページ上部・「概要」欄)をクリックし、申し込みフォームへ必要事項をご入力ください。

【注意事項】
・1回の応募でお申し込みいただけるのは、お二人様までです。
 ※お二人様での観覧を希望される方および、介助のために同行する方や中学生(15歳
  以下)に同伴する保護者については、お二人様分の必要事項を入力ください。
・お一人様につき1回に限り応募いただけます。※複数回の申し込みは無効となります。
・未就学児の入場はご遠慮ください。
・中学生(15歳)以下の方は、保護者の方とご応募ください。
・応募多数の場合は、抽選となります。
・「御案内」の発送をもって当選発表にかえさせていただきます。
 (「御案内」の発送は、8月上旬を予定しております)
 なお、当選されなかった方への御連絡はいたしませんので、あらかじめご了承ください。
・当選された場合、当日入場の際に本人確認をさせていただきます。
 代理の方は御入場いただけません。
・ご提供いただいた個人情報は、本業務の目的以外には使用いたしません。
・会場および周辺に来場者様用の駐車場は設けておりませんので、
 公共交通機関のご利用をお願いいたします。       

参加料:入場無料/事前申込制

問い合わせ
第32回国民文化祭・なら2017/第17回全国障害者芸術・文化祭なら大会
総合フェスティバル事務局 オープニング「開会式」係
〒630-8014 奈良県奈良市四条大路一丁目3番45号(インパクト株式会社内)
TEL 0742-36-0007 FAX 0742-33-6441


秋の奈良を彩る大イベントの幕開けである。皆さん、ぜひお申し込みください!



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馬見丘陵公園のあじさいが満開!(2017 Topic)

2017年06月25日 | お知らせ
馬見丘陵公園のあじさいが、満開となりました。この公園の「花だより」は、こちらのサイトに随時、掲載されます。トップ写真も、こちらから拝借しました。

花いっぱいの馬見丘陵公園、花の盛りをお見逃しなく!
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