大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

アメリカの大学図書館の開館時間 II: 深夜の利用状況

2013年02月22日 | 日記

 アメリカの大学図書館は24時間開館があたりまえで、図書館は夜遅くまで勉強する学生で一杯だというイメージが一部にあるようだが、本当だろうか? 確かめに行ってきた。

 以前書いたようにハーバード大学には50を超える図書館があるが、その中でラモント図書館というところだけが24時間開館となっている(金土は10時まで)。上の写真は、今日(木曜日)の深夜12時半ごろの館内(一階)の様子。11時ごろまでは、もっと多くの学生がいたが、12時を前にかなりの学生が帰っていった。上は、ぽつぽつという感じだ。

 

 こちらの写真は、二階の光景。こちらもぽつぽつという感じだ。

 ラモント図書館には、ほかにも階があるが、全部合わせても100人はとてもいかないだろう。熱血受験塾のような光景を期待していた人には少し意外かもしれないが、ほかの大学もだいたいこんな風ではないかと思う(ただし試験期間中は満杯になる)。

 ちなみに、ボストンの地下鉄は夜2時まで動いているので、沿線に住んでいる人は2時までは安心して勉強することができる。また、これが一番重要なのだが、ハーバード大学は、徒歩圏内に大学寮や学生向けのアパートメントがあるので、そこにいる人は深夜でも安心して図書館を使うことができる。利用者は、その気になればいつでも帰れる、というのは図書館の24時間開館の大きな前提条件ではないだろうか。終電を逃したら、朝まで帰れないというのでは、深夜の図書館は寝る人や気分の悪くなる人でいっぱいになってしまうだろう。

 

 図書館を24時間開館する場合、深夜に帰宅する学生の安全を確保することも必要だ。アメリカの大学のキャンパスには、武装警備員が常駐しており、さらに上のような非常通話ポストが多数配置されている。郊外の大学の場合、図書館の24時間開館には、こうした対策も必要になるだろう。

 ちなみに日本ではさきごろ、京都大学が図書館の一部を24時間開館とした。京都大学の場合、徒歩圏内に学生寮やアパートが多数あり、また大学近辺(百万遍)は夜中でも人通りが絶えないという非常に恵まれた条件がそろっている。だが今の日本では、そのような条件を満たさない大学の方が多いだろう。今日本は、そうした違いを無視して一律に大学図書館の24時間化を推し進めようとしているようで気がかりだ。

 先に書いたようにアメリカも一様ではない。ボストンにはボストン大学という有名な私立大学があるが、この大学は市中心部に近いため、家賃の安いところから地下鉄などを使って通学する学生が多い。そうしたこともあるのか、HPで確認したところ、ボストン大学の図書館は24時間開館でなく、地下鉄の終電に合わせて2時閉館となっている(試験期間除く)。それぞれの条件に合わせて、最適なサービスを選択することこそが必要なのではないだろうか。