● 是枝監督「そして父になる」先行上映
9月24日 NHK
世界3大映画祭の1つ、フランスのカンヌ映画祭でことし審査員賞を受賞した是枝裕和監督の映画「そして父になる」の日本での上映が24日から始まり、映画館には世界で認められた作品をいち早く見ようと、観客が相次いで訪れました。
映画「そして父になる」は、6年間育てた息子が病院で取り違えられた他人の子どもだと分かった2組の夫婦を描いた物語です。
ことし5月、カンヌ映画祭のコンペティション部門で日本映画としては26年ぶりとなる審査員賞を受賞したほか、カナダのトロントや韓国のプサンなど、数々の国際映画祭に出品され、話題となっています。
カンヌでの受賞を受けて配給会社に問い合わせが相次いだため、今月28日からの全国公開に先駆けて、24日から先行上映が始まりました。
このうち東京・新宿の映画館では、午前10時すぎからの初回で、世界で認められた作品をいち早く見ようと、映画ファンが入場口に列を作っていました。
訪れた60代の男性は「ずっと公開を待っていました。世界的な賞をとった作品なので期待したいです」と話していました。
また40代の女性は「子どもの取り違えという題材も興味深いですし、主演の福山雅治さんの演技も気になって見に来ました。とても楽しみです」と話していました。
配給会社によりますと、「そして父になる」はすでに世界の230の国と地域で上映されることが決まっているということです。
●福山雅治さん語る「父親になるには」
NHK
俳優としてもめざましい活躍を続けるシンガーソングライターの福山雅治さん(44)。
これまで「天才物理学者」や「坂本龍馬」など特徴的なキャラクターを演じてきましたが、今月公開の映画「そして父になる」では、家族との関係に思い悩む父親役に挑みました。
父親らしく見えるか不安で、監督に「大丈夫ですか?」と相談したこともあったそうです。
初の父親役に戸惑い
是枝裕和監督の最新作「そして父になる」で福山さんが演じたのは、大手建設会社のエリートサラリーマン。
プライドが高く人の気持ちが分からないといった欠点もありつつ、高級マンションで妻と息子と幸せに暮らしていました。
しかしある日、6年間育てた息子が、生まれたときに取り違えられた他人の子どもだと判明します。
福山さん演じる父親は、悩んだ末に相手方の夫婦と子どもを交換することを決断しますが、温かい家庭を築いている相手夫婦に比べて子どもとの関係をうまく作れない自分に、思い悩みます。
初めての父親役に福山さんは、当初は戸惑ったといいます。
「ものすごくキャラが立ってる役をここ数年演じていたので、会社勤めの、日本に多くいる勤め人を演じるというのが難しかったですね。とにかく父親っぽく見えないだろうなと思ったんですよ。家庭的じゃないというか。『監督、大丈夫ですかね?』と最初伺ったら、監督からは『いや、父性を獲得していくというテーマなので、むしろ最初はお父さんぽく見えてないほうがよりいいと思います』と言われて。父親として、という感覚よりも、むしろ自分はどういうふうに母親や父親から育てられたのかなということを思い出しながらやっていました」(福山さん)
子役とは台本なしで
幼い子役との共演が重要だった今回の映画では、自然な空気感を出すため子役に台本は渡さず、本番直前に設定を説明する手法がとられました。
福山さんは、子役の反応に応える演技を心がけたといいます。
「全くお芝居をしに来てない子どもと、お芝居しようとしてる大人とが1つのフレーム(画面)で同居するときって、やっぱりこっちがすごく『芝居芝居』すると、ちょっと変なんですよね。なので子どもにゆだねるという感じですね。子どもが行きたいほう、行っちゃったほうについていく。導かれる、ゆだねる、流されるというのが、すごく楽しいなと思いました」(福山さん)
「年相応」の表現をしたい
これまでと違う役を演じたことが、俳優としても歌手としても大きな糧になったという福山さん。
これから目指す境地は。
「40代後半、50代にかけては、またちょっと違う、『社長』みたいなことになってくるかもしれないですよね。まあ社長になれたらいいですけど、係長ぐらいかもしれないんですけども(笑)。役もそうですし、歌の内容もね、10代のころの気持ちを歌ってもいいんですけども、44歳、45歳とかになってきて、ただ世の中が悪いとか、世の中のせいで自分は・・・ていうのもね。とにかく『年相応の表現』をしたいなというのはいつも思っています」(福山さん)
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