寺小屋ブログ

学習塾・音楽教室「寺小屋」
田舎の中学生、高校生達のモチベーションのアップに少しでも役立ちたいと開設した塾のつぶやき

文化を継承することの大切さ

2010年04月17日 | 日記・エッセイ・コラム

 今、私の手元に一冊の本があります。
 それは私の祖母の弟、松浦正光上人の遺品であり、私が初めて僧侶としての修行に出る時、祖母が私に持たせてくれた「日蓮聖人御遺文集」です。

 私の大叔父、正光上人は、年老いた父の跡を継いで生家のお寺を守るため、京都の本山で誠実に厳しい修行の日々を送りました。
その甲斐あってようやく帰郷が許されたその矢先、召集令状を受けて戦地に送られ、ついに帰らぬ人となりました。
 大叔父は、戦地からの手紙で祖母に袈裟と数珠を送ってくれるよう頼み、毎日の戦闘で亡くなっていく戦友の菩提を最期まで弔いつづけたそうです。
 大叔父は、毎日どんな気持ちで戦地で過ごしていたのでしょう。
そして祖母は、どんな気持ちで大叔父の遺品を私に渡したのでしょうか。
 その気持ちを思い遣った時、私は何やら胸に熱いものがこみあげ、体の震えるのを感じました。
そして自分自身、一人の僧侶として生きていく決意を固めました。
 私事が長くなってしまいましたが、今回私のいただいたテーマ「文化を継承する」ということも同じだと思います。

 今年5月9日(日)、我が但馬ミュージカル研究会結成十五周年を記念し、豊岡市民会館で上演させていただくミュージカル「じろはったん」。
原作者の森はな先生と作曲家髙井良純先生。
二人の戦争体験者の先生の心の叫びからこの素晴らしい作品が生まれました。
その作品を「戦争を知らない世代」の私たち劇団員が演じます。
 結局、「文化を継承すること」とは、
「想像力を目一杯働かせて、作者や創始者が託した思いや心の叫び、魂を感じ取り、共感し、伝えていくこと」
だと思います。
その感性が磨かれて初めて、人は先人の知恵に学び、時流に流されてぶれることの無い人生の指針を見つけることが出来るのだと考えます。
 劇中、私の演じさせていただく和尚は、
「戦争なんか、やらんことじゃ。命は一つだけ。その命の使い道は人を愛するため、仏様に祈るために」
と歌います。
 私にはこの言葉は、志を果たせずに戦場に散った大叔父の魂の叫びに聞こえます。
私は、劇団からお話がいただける限り、声の出る限り、この役を演じ続けていきたいと思っています。
 劇団員一人一人が、自分の心のアンテナで受け取った心の叫び。
その集大成として観客の皆様に何をお伝えできるか。
 5月9日、一人でも多くの皆様、特に若いお父さん、お母さんや子供さんたちに市民会館においでいただき、私達の心の叫びに耳を傾けていただければ幸いに存じます。


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