彦四郎の中国生活

中国滞在記

今年も中国の大学統一試験「高考」が実施された❷―「高考」、一体どんな仕組みなのか―

2017-06-12 19:48:59 | 滞在記

 受験生たちの入場制限時刻と思われる8時半を過ぎても、たくさんの父母が会場前に待機している。会場前の道路の車の通行止めが始まっていた。道路に沿って、飲料水メーカーの宣伝テントがいくつか立ち並んでいる。無料で飲料水などが配られていた。私も、布バック(中に、ミネラルウォーターと定規・ペン・消しゴムのセット)をもらった。

 受験生の入場ゲートが閉められてから5分後の8時35分。電動バイクで「母親と二人乗り」で一人の男子受験生が駆け込んできた。別の入り口から入場を認められたようだ。茶髪バリバリのおばちゃん母親は、それを確かめて去って行った。

 別のテレビ局が親にインタビューをしている。男親ばかりがタバコをふかしながら集まって話し込んでいる。メッセージ掲示版があったので見てみる。「万圆圆 宝贝、加油! 为高考冲刺!」(万円円 あなたは私の宝、頑張って!最後のラストスパートだ!)   「郭  复旦大学!」(めざせ復旦大学!)  などと書かれている。 受験生たちのいる教室が遠望できる。各教室でカバンや本などの荷物を置き、試験を受ける別の教室に移動していった。時刻は8時45分。おそらく、9時から試験が開始されるのかと思う。

 8時50分、会場前の道路は封鎖され、一般車は午後5時まで通行が禁止された。公共路線バスと音がしない電動バイクは通行ができるようだ。中国全土の会場周辺では、同じような交通規制がとられるようだ。車の騒音が受験に邪魔にならないようとの配慮である。会場近くの小規模な朝市が行われた路地に、ゴミが散乱していた。露店を出した人がそのままに放置したゴミだ。中国の日常でもある。アパートに戻って行った。

🔴 ―中国の大学受験の「高考」、一体どんな仕組みなのか?―各省や市(北京・上海・重慶・天津などの直轄市)や各自治区によって多少の違いはあるが、おおまかには次のようになる。

①6月7・8日の半年ほど前の11月下旬にインターネツトで受験登録をする。そして、12月上旬に、各地区に設置された申し込み場で、受験登録の再確認と受験料の支払いをする。

②6月7・8日に高考を受験する。試験科目は4教科。文系受験科目は、1国語(150点) 2、文系数学(150点) 3、外国語(150点) 4、文系選択科目(政治、歴史、地理から1科目)(150点)の4教科600点満点。北京市などでは、文系選択科目ではなく、「文系総合」(300点)という科目を受験し、750点満点となる。理系受験科目は、1国語 2、理系数学 3、外国語 4、理系選択科目(物理、化学、生物から1教科選択) 

③6月下旬に、インターネツト上で一斉に各個人のテスト結果( 点数)が発表される。大学の志願(志望)方法については、中国の各省(自治区・直轄市)に違いがある。1、受験前の志願(考前 )―5月中旬  2、受験の後の点数が公表される前の志願(考後估分)  3、受験の後の点数が公表された後の志願(考後出分)の3つ志望・志願方法。(※2の志願方法が最も多いようだ)

④―志願(志望)する大学名や学部や学科の志願大学数も各省(自治区・直轄市)によって違いがある。例えば上海市の場合は10の大学を志望する。(志望書に記入する) 一本大学とよばれる「レベルがかなり高い有名大学」は4校、そしてそれ以外の二本大学6校の合計10校である。この10校は全て第一希望〜第十希望を順序付けをして提出する。福建省など多くの省では合計5〜6校が標準的のようだ。

 6校を志望書に記入する省の場合を例にとると、第一希望〜第六希望までの大学名だけではなく、「各大学のの学部・学科の専攻を5つ〜6つ」記入しなければならない。(例えば、各大学の5つの専攻を記入する場合は➡6校×5つの学部・学科[専攻]=30の大学・学部・学科を記入することとなる。)

 同じ総合点数結果の学生が多く存在することとなるので、科目の点数で順番を決める。文系の場合は、国語➡外国語➡数学の順番で単一科目の点数を比べる。理系の場合は、数学➡外国語➡国語➡の順番で比べる。

◆閩江大学や福建師範大学の「日本語学科」の学生も、全く本人としては「日本語学科」を希望していなかったのに、日本語学科に入学決定をされてしまって泣く泣く入学したという学生が少なくない。その多くは、人気の高い「外国語学部英語学科」を希望していたが、点数が足りなかったために 同じ学部の「外国語学部日本語学科」に廻されてしまったという学生たちである。

 (※志望欄にまったく記入していなくても、大学当局の調整で、志望欄記入以外の学科に割り振られることも多いようだ。受験生のほとんどは、大学志望(希望)書の中にある「服従専業調済」という欄に〇をしているからだ。これは「希望外でも大学側の専攻の調整に従います」ということを受験生が表明しているということだ。) 閩大・師範大、2つの大学のレベルは違うが、2つの大学の学生共に 志望段階で 日本語学科を本気で志望していた学生は1/3ぐらいだろうかと思う。

⑤教育庁の職員などによる、膨大で複雑な、個々人の大学決定選考作業を経て、まず、(より高いレベルの)1本大学の合格者が7月上旬ごろから順次発表されていく。個々人の「入学大学と専攻」の連絡が遅くなれば遅くなるほど、入学できる大学の偏差値レベルが下がってくるようだ。7月中には、ほとんどの選考し各受験生への連絡がほぼ終了するようだ。

⑥7月下旬、一回目の受験志願で合格できなかった受験生は、追加募集をしている大学専科(大専・2〜3年間の短大)を探し選んで再志願を行う。

⑦9月1日から始まる入学式に参加し、大学生活が始まる。(今年度の場合、受験生約940万人のうち75%にあたる約720万人が入学する。720万人が約2700余りの大学の定員総数となる。) 入学できなかった受験生約220万人は、専門学校などへの進学を目指したり、就職を考えたりすることとなる。また、再度大学受験を目指す者もいるようだが、数は多くないようだ。

◆「高考」のシステム(仕組み)は、ものすごく複雑で難しい。省によっても違うので、中国全土の「高考」の仕組み理解することはなかなかだ。上記のブログ内容にも間違っている部分があるかもしれません。

◆次号に続く

 

 

 

 


今年も中国の大学統一試験「高考」が実施された❶―1日目の朝、試験会場へ見学に行く―

2017-06-12 07:03:18 | 滞在記

 「高考6月7、8」とペンキで大書された高校3年の教室、「拼了高考!(命がけの一生懸命で高考に臨む)」や「決戦高考」と書かれた掲示横断幕、「无高考、不青春(高考無くして、私達の青春は無い)」、「高考で一発勝負」。このようなスローガンや標語が並ぶ、中国の高校3年生の教室。1年半ほど前の12月に、担当している学生が卒業した福建省泉州市の高校の3年教室に行ってみたことがある。「高考まであと165日」と書かれた、B4版大の日めくりが前の黒板の右隅に置かれていた。

 今年も6月7・8日がやってきた。「高考」の正式名称は「普通高等学校招生全国統一考試」で、毎年、6月7日・8日の二日間実施される。(一部では9日も)   何度がこの「高考」についてブログで書いたことがあるが、当日の試験会場に行ったことがなかったので、今年は当日に大学の担当授業もなかったので、早朝から試験会場の一つに行ってみようと思い立った。(※中国の学校名称は主に、「小学(小学校)➡初中(中学校)➡高中(高校)➡高校(大学)」となっている)

 アパートから歩いて20分間ほどの所に「福建師範大学付属高校」がある。(1年前にはこの近くの福建師範大学外国人宿舎に住んでいた。) ここは、「大学統一試験会場」の一つとなっている。高層住宅が立ち並ぶ住宅団地を通りぬける。まだ朝の7時過ぎだが、梅雨の晴れ間の蒸し暑い一日となりそうだ。もう、強烈な太陽の光が降り注いでいる。団地の一角に「学習塾」があった。「勇者無敵・精英童軍磨砺夏令営」と書かれた大きなポスターが掲示されている。どうやら、小学生を対象とした「夏休み・軍事訓練キャンプ」の参加者募集のポスターのようだ。キャンプ場所(基地)は、私がよく行く町にあり、「福建省尤渓童軍訓練基地」とあった。

 試験会場が近づいてきた。藍色の小さな花が咲く喫茶店があった。試験会場の高校の塀には「共青団」(共産党青年同盟)の「高考」応援の横断幕が掲示されている。受験生の姿が見えてきた。時刻は午前7時半頃になっていた。

 試験は何時から開始されるのだろうか。7時半にはかなりの受験生たちが集まっていた。「2017年福建省普通高等学校招生全国統一考試 倉山考区 福建師大付中考点」と書かれた電子掲示が校内の建物に見える。初夏に藍色の花を咲かせる樹木。電動バイクで受験生の娘を送ってきた父親が、去っていく娘の姿をずっと目で追っている。7時45分頃、正門の前の道路は、車や電動バイク、人が溢れてきた。

 7時45分、正門のゲートが少し開かれ(人一人分が通れる)、受験生がチェックを受けて校内に入って行き始める。

 試験会場に入った「我が子」をずっと正門前で見送る親たち。後ろ姿を見つめる目は真剣そのものだ。テレビ局がこの様子を撮影しながら、親へのインタビューなどをしている。

 会場に入るゲート前で、抱き合う母と娘の姿も見られる。抱き合った後、「じやあ、加油!(じゃあ、頑張ってね!)」と送り出す母親。手を組んで祈るようにしている女性。多くの親と子が、この日に向けて何年間も「臥薪嘗胆(がしんしょうたん)」の日々を過ごしてきているのが中国社会なのだ。受験に向けた勉強以外は、あまりわき目もふらずに。中国の大学入試は「一発勝負」、この試験の結果によって入学する大学が決められ「人生を左右する」といわれる入学試験なので、中国全土でのこの試験に関する関心は非常に高いものがある。現代の中国伝統の「科挙」ともいわれる。

 警察の監視警戒をする車両も入ってきた。何時から試験が始まるのだろうか。8時15分頃までに、ほとんどの受験生が会場に入って行った。8時半から試験は開始されるのかな。8時27分、最後かと思われる受験生がチェックを受けて入場して行った。この受験生の入場をテレビ局のカメラが映していた。入場ゲートが8時半に閉められた。この時間になっても、ずっと受験会場を見守り続ける親たちの姿が多くみられる。

◆ この日、中国全土の受験者数は940万人(ほぼ全員近くが高校3年の現役生)と報道されていた。(昨年は942万人)  日本の大学受験者数が約50万人なので、日本の約20倍の受験者数となる。中国全土で約2700あるとされる中国の大学数。(日本は約700なので、日本の約4倍の大学数) 2700余りの大学のうち、本科大学と呼ばれる「4年制大学」が約1100校(約40%)あり、他は専科大学と呼ばれる「2年~3年制大学」が約60%を占めるようだ。この専科大学は日本の短大に相当するが、卒業しても「学位」はもらえない。

◆ 約720万人ほどが、この約2700余りの大学に入学する(合格)ことができるので、合格できるのは今年度の場合は約75%。合格できなかった約220万人は、その後 専門学校などに入る進路を選ぶ場合が多いようだ。(来年の受験を目指して浪人をする受験生も少しはあると聞くが、かなり少ない)  なお、中国の高校は、いわゆる日本の普通高校と職業高校(工業・商業)のような比率は 半々に近い(やや普通高校の方が多い)と聞いている。職業系高校の卒業生は大学を受験することもできるが、そのほとんど多くは「専門学校」に進んだり就職する生徒が多いようだ。2016年現在の大学進学率は約35%となっている。私が中国に初めて赴任した2013年が約28%だった。年々上昇している。