"ちょっと外から見た日本"

今、スペインに住んでいます。
大好きな日本のこと、
外からの視点で触れて見たいと思います。

“ガイアシンフォニー第七番”

2011-01-30 23:54:49 | 日記
地球交響曲シリーズ、ご存じの方も多いと思います。

龍村監督が手弁当で作った1本目、上映してくれるところがなく、やむをえず自分でチケットを買い取って上映を始めたところ、口コミで話題が広がって行きました。

それ以降、自主上映というやり方で、本数が増えて行きました。

その第七番を見ました。


この映画では、3人の方々が出て来ます。

冒険家、環境教育活動家の高野孝子さん。

5人でロシアからカナダまでの北極海を、世界で初めて無動力で(スキー・犬ぞり・カヌー)横断しました。

2人目は、グレッグレモンさん。

世界最高峰の自転車レース、ツールドフランスで3勝しました。

特に、89年は、その前に散弾銃の事故に合い、体に約60の弾が入った状態で、神がかりの復活優勝を遂げました。

その時の平均時速は未だに破られていません。

今でも心臓の近くには抽出出来ない弾が残っています。

三人目は、「癒す心、治る力」の著書でも有名な、アンドリューワイルさん。

代替医療や自然治癒力と、西洋医学を統合する医療を提唱されました。


その中で、特に私の心に強く残ったのは、高野さんでした。

その一言一言は、経験に裏打ちされた深い言葉の連続でした。

北極の旅、それは男性3名、女性2名の旅でした。

途中、何度も命にかかわるようなアクシデントに遭遇する中で、高野さん達が運んで来た通信機器を道中に置いていくよう、男性陣が主張します。

しかし、高野さんたちは、決してそれを受け入れませんでした。

自分たちで運ぶからと。

その通信機器を使って、高野さんたちは、世界の子供たちにネットでその冒険の報告を送信していました。

男性陣にとって大切なのは、世界初の冒険を成し遂げること。
そのためには、出来るだけ重量を減らすべき、と考えていました。

高野さんたちにとっては、この冒険を子供たちに伝えていくことが最も重要なことであって、それは、冒険が成功することよりもずっと大切なことだったのです。

この冒険を通して、高野さんは、強さの種類には色々あり、女性の強さは、持続する強さだと感じたのでした。


高野さんは、希望する子供たちと、毎年、日本の雪山でキャンプをします。

滑る雪の中で、子供たちが、テントを張ったり、トイレを掘ったりするのに苦労するのを見守りながら、でも、アドバイスはしません。

黙ってみています。

失敗しながら、体験の中で自ら学んでいくことを大切にしているのです。


今、高野さんは、新潟県の田舎に住んでいます。

家の近くの土地を手に入れ、伝統的なやり方で稲を育てています。

稲を植えるために、しるしの線を引くのも一苦労。

しかし、おたまじゃくしが泳いで逃げていく様子を見て、機械を使っては、おたまじゃくしは逃げられない、ということを体験します。

そして、手間のかかるやり方を通じて、昔の人々の知恵を知り、自然と共生していくことの大切さを、身を持って体験しているのです。


高野さんは、これも毎年の企画として、学生と一緒にミクロネシアのヤップ島に行きます。

映画を見た後、そこに参加した日本の学生の感想を聞きました。

現地の方々と一緒に生活することによって、彼らは自然と共に生きるとはどういうことかということを知ります。

その生活には、昔から伝わる知恵が詰まっています。

一方で、そうした場所にも、ごみ処理、アルコール中毒等、新しい問題が出て来ていることを知ります。


高野さんは、映画の中でおっしゃいます。

私たちが当たり前のように使っているもの、それは電気、水道であったり食料であったりする訳ですが、そうしたものを、

“同じ使うのでも、それらがない状態を知って使うことと、それを知らないで使うこととは全く意味が違う”のだと。

そこに参加した学生は、

「Desire(欲)とNeeds(必要なこと)とは違う」

という言い方で説明していました。

高野さんの心が、今の学生の心にもきちんと引き継がれているということに感動しました。

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“日本国債格下げ”

2011-01-29 00:01:02 | 日記
格付機関大手のS&P、日本国債の格付を下げましたね。AAからAA‐へ。

AA-と言えば、イタリアのA+をかろうじて上回っていますが、現在危機説で賑わっているスペインのAAよりも低い格付けで、サウジアラビア、中国、台湾等と同格になります。

まあ、年間の歳入が40兆円しかないのに、GDP500兆円の2倍にあたる1000兆円の財政赤字があり、その比率は主要国の中でダントツに高い数字なので、当然と言えば当然ですが。

何度かこのブログで触れさせて頂いていますが、日本の場合、日本の投資家が95%の投資家国内で、かつ、通貨は自国通貨の円の為、日銀が買手として動くことも出来ますので、他の国々と状況は大きく異なると思います。

格下げになったからと言って不安を煽るのは正解ではないと思います。

実際、ヘッジファンド等海外の投資家は、日本の国債が下がり、円が下がるシナリオで過去何度か動いた形跡がありますが、今までそれは全て失敗に終わっています。

なので、今は、格下げに動揺することなく、無数の特殊法人等への無駄な投資はどんどん削る一方で、景気拡大につながる公共投資等はきちんと実行すべき、即ち焦らずにやるべきことをやる、ということだと思います。

国民を怖がらせて、消費税のアップに誘導する動きには気をつけなくてはならないと思います。

あくまでも全体の税収が大切なのであって、消費税を上げたがために、景気が冷え込んでしまって、トータルの税収減に繋がるような政策は避けなくてはなりません。

ただ、これも何度か書かせて頂きましたように、マーケットは投資家の心理で動くということも、また真実です。

投資家が、不安になって国債を買わなくなったらそれこそ、破綻シナリオに乗ることになります。

なので、政府は、その発言含めて、本当に慎重な対応、舵取りが必要になると思います。

そんな中で出て来た管首相の発言。

「(格下げについて)まだ報告を受けていない。こういうことには疎いので。」

正直、またか、という感じですが、国益を損なうこと甚だしい発言です。

格付け会社が言っている、民主党政府の政策実現に対する不安感を、まさに裏付けるような発言でした。

菅さん、

「疎いとは、報告を受けてないことを指していた。」

と苦しい言い訳をしていますが、やはり(というか当然)報告は受けていたようですね。

結局、最初の菅さんの発言が、菅さんの正直な気持ちだったのだと思います。

即ち、“報告はちゃんと受けたが、自分はこういうことに疎いので、この場にふさわしい言葉が急には出て来ない。みんなで吟味してから後で”ということだっと思います。

そして、後になって発言する時には、もう状況が変わっているでしょう。

多分、この質問が記者から出る可能性が高い、ということさえ思いつかなかったのでしょう。

今の政権を象徴するような発言だったと思います。

しかし、それはまさに売りたい海外ファンドの思うツボです。

実は、格下げのタイミング自体、この世界を牛耳りたい人達のさじ加減なのです。

何しろS&Pは、実は公的機関でもなんでもなく、一つの私企業に過ぎず、その大株主はマグロウヒルという会社、そして、その会社はデイビッド・ロックフェラーの持ち物なのですから。

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“うれしいTV番組”

2011-01-26 23:06:32 | 日記
TVと言えば、韓国戦のサッカー、感動しました。

毎試合、粘りに粘って進んで来ましたが、その集大成という感じでした。

決勝で対戦するオーストラリア、めちゃめちゃ破壊力がありますが、日本の持ち味を発揮して欲しいなと思います。

ちなみに、日本の持ち味、私は、最後まであきらめない愚直なまでの粘り、そしてそれを可能にするチームの意思疎通だと思います。

それは、スポーツだけでなく、ビジネスや生活等、あらゆる面で共通にみられる日本の強みだと思っています。


ところで、日本のテレビ番組、どうして各局で、似たような番組、似たようなメンバー、似たような話題、似たようなコメントをしているのかと、いつも思います。

他局と違うテーマを扱い、違った主張をすることは、リスクが高いと思うからなのでしょうか、独自の内容を考えることへの怠慢があるのでしょうか、視聴率が取れないこと、スポンサーへの恐れからなのでしょうか。


でも、一方で、とても楽しみな新しい流れも出てきたと感じます。

池上彰さんの“学べるニュース”、とっつきにくそうなテーマをとてもわかり安く、楽しく解説していて素晴らしいと思います。

今日は、日本の防衛をテーマにしていました。

今の日本の防衛体制で、いざという時に本当に日本を守れるの?ということを具体的なケースを挙げてシュミレーションする一方で、戦争になることを未然に防ぐことの重要さを強調していました。

ゲストからもなかなか面白いコメントが出ていて、うれしかったです。

NHK、日本の自然や伝統を大切にした素晴らしい番組群の中に、ある時は政府に、ある時は米国にすり寄っているとしか思えない番組があったり、ある時は、日本の自虐史観をベースにしているとしか思えない番組があったり、変化に富んでいます。

でも、今、一番時代に敏感なのはNHKなのでは、とも思います。

土曜日朝に始まった“ニュースの深読み”という番組。


わたしは、昨年まで日曜日にやっていた“週刊 こどもニュース”が好きでした。

普段当たり前に聞き、でも、実はよくわかっていない経済、政治のトピックや用語を、手作りの模型を使って、大変わかりやすく解説していました。

で、その番組が急になくなってしまって、えっ?と思いました。

NHKは、番組打ち切りの理由を、

「子供をターゲットとしていたが、大人が視聴者の大半となっていたから。」

と説明していたようです。

まあ、それは確かにそうなんでしょうが(笑)、だからと言って、子供が(大人にとっても)ニュースをわかりやすく知る機会を切ってしまうのはどうなのかな、と思いました。

あるトピックに怒った誰かからの圧力があったのではないか、と勘繰ってしまいます。


で、大人にわかりやすく解説するような番組を始めると聞いていましたが、この“ニュースの深読み”が、それにあたるのだろうと思います。

先日は、今話題のTPPを取り上げていました。

最近、NHKは、推進方向で世論を誘導しているのではないかと批判される位、TPPを前向きに報道していました。

しかし、この番組では、反対派の金子教授を含めて、導入賛成派、反対派に分かれて、かなりいい議論をしていたと思います。

残念だったのは、番組の最後に、「知れば知るほど難しくてわからなくなった。」という感想が出演者から出ていたことです。

でも、そうしたコメントが出るのも無理はないと思いました。

賛成派、反対派の方々が、今、TPPの、どの部分の話をしているのか、全体の何パーセントの話をしているのか、という説明がないまま議論していたので、わかりづらい議論になっていたのです。

とは言え、かなり本音に近い議論も出て来ており、今後の展開が楽しみです。


ところで、全然分野の違う番組ですが、NHKには、“着信御礼!ケータイ大喜利”という土曜日深夜の番組があります。スペインでも見られるとても好きな番組です。

全て生番組中に出題され、携帯電話で応募された作品が読み上げられます。

こんなリスキーな番組、なかなか出来ないでしょう。

次に読み上げる作品を選ぶまでの、TVではありえないような不思議な間も含めて(笑)、そのチャレンジ精神には拍手を送りたいと思います。

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「王道の日本、覇道の中国、火道の米国」 青山繁晴著

2011-01-24 06:31:50 | 日記
‘書物から情報だけではなく、われらどう生き、いかに死すか、その志を汲みとるすべての読み手へと、この書を捧ぐ。‘

トビラの言葉から、著者の思いが伝わって来ます。

そして、前書き。

‘開いたらまず、軽く、書を閉じてください。‘

えっ?と思います。

‘表紙には地図があります。
見慣れているようで見慣れていない地図ではないでしょうか。
その地図のなかへ、わたしたちが入っていく。
それは、長いあいだ縛られてきた思い込みから、みずからを解き放つ、初めの一歩です。’

そのカバー表紙、鮮やかな赤の中にアジアの地図が描かれています。

日本領土は白。北方領土四島も、サハリンと呼ばれる樺太の南半分も、さらに千島列島の全島も、すべて白抜き。竹島、尖閣諸島ももちろん日本領となっています。

一方で、チベット、ウイグル、内モンゴル等現在の中国の自治区は、独立国家群として中国の黄土色とは違う色を使っています。

‘静かに歴史の事実をながめれば、公正な東アジアとは、この書にある地図にほかならない。’

その中の歴史観もなるほどと感じます

同じ戦争の敗者であっても、

‘ドイツは、戦争責任を成り上がり者のアドルフ・ヒトラーとそのナチスに凡て被せることによって、プライドを巧みに回復させた。

‘しかし日本は、国家と国民の、かけがえのない個性と根っこそのものである天皇陛下に戦争責任を被せれば、日のもとの国そのものが崩壊する’

 だから頭を垂れ、プライドをみずから否定することで、第二次世界大戦後の世界の構造を裏から支えてきたのである。’


この本は2009年8月に出版されました。

その前年に大きな話題となった毒ギョウザ事件について、経緯が説明されます。

中国の既成事実の作り方のパターンを知り、それに簡単に乗ってしまう日本政府のふがいなさが説明される中で、青山さんが連絡を取り合う警視庁の幹部の方の、正義に基づく言動には、感動します。

どんな組織にも、素晴らしい方は必ずいると確信します。

なので、組織やそこで働く方々を否定するのではなく、むしろその中の素晴らしい方々が働きやすい環境を作っていくこと、それは私たちの役割でもあると思うのです。

王道の日本、覇道の中国、火道の米国
青山 繁晴
PHP研究所
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「日中の興亡」青山繁晴著

2011-01-20 04:35:00 | 日記
紹介頂き、読ませて頂いたブログがあります。

この方は、以前、約半分が中国人の寮にいて、中国人が集まる飲み会によく参加していたそうです。

そして、ある日そこにモンゴル人の友人を招いた時の話です。
(http://digi-log.blogspot.com/2008/03/blog-post_17.html)

いかに中国の思想教育が徹底しているのかということ、それは思わずオーウェルの“1984”の世界を思い起こしてしまう程ですが、私の経験から言っても決して例外的な話ではないと思っています。

逆にそういう考え方をしているのだという前提で、議論して行くことが必要なのでしょう。


表題の青山さんのこと、最近ご紹介頂き、本を読んで見ました。

青山さんは、慶応中退、早大政経学部を卒業した後、共同通信社の記者、三菱総合研究所の研究員を経て、独立総合研究所という会社を創立しました。

経済産業省や内閣府、海上保安庁の専門委員やアドバイサー等も歴任していますし、関西のテレビに出ているそうです。(どうして、東京ではそうした番組をやらないのか、とても不思議です。そこになにか意図を感じてしまいます)

政策にかかわり、毎日のように飛行機に乗って世界情勢に肌感覚を持っていらっしゃるからでしょうか、その文は、簡潔で、生き生きとしています。

“このままの道を往くならば、日本は腰をかがめ視線を落としてその門をくぐり、自律を失って属国となる。

 それも政治と経済は中国、エネルギーはロシア、安全保障はアメリカの、それぞれの属国になる。

 わたしが元首相のひとりに、「祖国が属国になる。それも三つに食いちぎられて」と語りかけると、元首相は、声もなく頷いた。”

その文の中に、著者の問題意識が畳み込まれているように感じます。


“すべての日本人は「わが国は資源小国だ」と教えられて育った”

“ところが三十年ほども前から、それを疑った国がある。中国である。”

東シナ海の日本のEEZ(排他的経済水域)や領海に、良質の海底油田、ガス田があることを知り、更に国連が、埋蔵資源の可能性を発表してから、中国は、尖閣諸島に対する態度を変化させます。

この本は2008年に出版されていますので、尖閣事件はまだ起きていませんが、この歴史的経緯が書かれた内容は一読に値します。

反対にその過程における日本のおそまつな外交も説明されています。

小泉元首相や海洋基本法を成立させた安倍元首相は、その中国の目的を理解していたからこそ、中国が、靖国問題含めて目のかたきにしたのだとも説明されています。

12月1日の日記でも紹介させて頂きましたが、埋蔵量は6百兆円規模と試算されるメタンハイドレードの話も出て来ます。

シャーベット状に凍った大量のメタンが、日本近海に存在しています。

何故メタンハイドレードは、日本でほとんど認識されていないのでしょうか?

それは、既存のエネルギービジネスにかかわる一部の勢力のためだと著者は訴えます。

しかし、そうして手をこまねいているうちに、資源を最も大切な資産と考えている国にどんどん奪われていくことになる訳です。


“中国の今までの歩みは、地政学を見事に考えている”

中国は、北のロシヤと衝突し、南のベトナムでは南沙諸島を占領し、西のインドでも領土紛争を起こしました。

しかし、今まで唯一紛争を起こさなかった方向があります。それは、東、即ち日本。

今まで紛争を起こさなかったのは、米国の存在があるから。

今、中国は、これから米国が、アジアから軍備を抜いて行くという大方針を知っています。

勝ちいくさしかしない中国は、今、タイミングを計っているとのことなのです。

沖縄の問題は、日本人全員で考えなくてはならない問題です。

普天間移設のこともそうですし、「思いやり予算」含めた経済的な側面もそうです。

一方で、沖縄基地が、中国から見て大きなくびきとなっていることもまた事実でしょう。


本の最後に出てくるエピソード、約5年前、英国ヒースロー空港での出来事です。

雪の為、著者の乗っている飛行機含めて、どの飛行機も飛び立つことが出来ず待機しています。

隣の飛行機では、なんと乗務員が降りて雪合戦を始めています。

そんな中、著者は、赤い鶴のマークの尾翼、その後、青いマークの飛行機が、止まっている他の飛行機とコントラストとなって、動き出し、飛び立って行くのを見ます。

それは、JAL、そしてANAの飛行機でした。

その2機だけなぜ飛び立てたのか、その理由を著者は後で知ります。

それは、パイロットや乗務員含めて、総出で飛行機の車輪の周りの雪を削り、融雪設備のある滑走路まで無事に飛行機を出すことが出来たからだそうです。

著者は、飛行機が離着陸するとき、いつも涙してしまって、それをごまかすのに苦労するそうです。

それは、窓の外に見える地上係員が、だれも見てないのに、こちらに向かって深くお辞儀をしている姿が見えるから・・・。

日中の興亡
青山 繁晴
PHP研究所

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「公共事業が日本を救う」 藤井聡著

2011-01-18 04:45:00 | 日記
最近、この本のような逆説的なタイトルに惹かれます。

もちろん、その中身を自分なりに判断する必要はありますが、“定説”というのはえてして間違っていることが多いと思うからです。

株式相場等のマーケットも、みんなでそう言い始めたら逆になるケースが多いですよね。

更に言えば、“定説”の方が正しいと思える場合でも、その反対の説やその根拠を知ることによって、自分の中のバランスを取り戻すことが出来るように思います。

鳩山さんが、『コンクリートから人へ』とスローガンを掲げた時、“そこまで言ってしまっていいのかな?”と思いました。

-安心して住むことが出来ること。
-道路、橋、トンネルによって大切な食料や人を運ぶことが出来ること。
-ダム等によって安定的に水の供給を受けられること。

人はコンクリートに助けられて生きている、という言い方も出来るはずです。
そもそも、スローガンでコンクリートと人を同列に並べるのもヘンですよね。

この本の著者である藤井さんは、1968年生まれ。京大、同大学院土木工学科を卒業し、現在、京大教授です。

“「日本は、諸外国に比べて公共事業費を使い過ぎている」”

私たちは、そう思っていますし、そのように見えるグラフを見かけたりします。

日本の公共事業費の対GDP比率が、米国、フランスの約3倍に見える棒グラフ。
実はおかしなデータを使ってそう見せていることが明らかにされます。

そのグラフの注を読むと、他の国は全部同じ出所の数字を使っていて、日本にもれっきとした数字があるにもかかわらず、なぜかその数字を使わず、他のところから都合のいい数字をひっぱって使っている。本当は、フランスよりも数字が小さくて、諸外国とほぼ並んでいるのです。

しかも、日本より数字が倍近く大きい韓国を入れていなかったり。

昨年の12月14日の日記で紹介させて頂いた日本の農業自給率と同じたぐいの話ですね。

あ~、またか!という感じです。

また、“「日本の道路整備レベルは世界的にも極めて高い」”という思い込み。

これも一般的な資料では、“可住地面積あたり”という日本の棒グラフが長くなるようなデータを使っています。

住める場所の広さを分母に取っているので、山が7、8割ある日本の場合、道路密度比率が大きく高く出る訳です。

しかし、道路とは、もともとそうした離れた場所を繋ぐものですから、可住地面積あたり、という数字を使うこと自体がおかしいことがわかります。

例えば、“自動車1万台あたりの高速道路の長さ”という数字を取ると、日本は先進国の中でも極めて水準が低いことがわかります。それは米国の6分の一、フランスの4分の一、イタリアの半分以下になってしまうのです。

日本の高速道路が、すぐに渋滞になるのも当然ですね。

更に著者は、公共事業関係費が、1998年度の予算の15兆円に対して2010年度には5兆円近くまで減っていることを説明することによって、公共事業が政府借金増加の悪者になっていることに対して反論します。

それは、国家予算の中で大きく伸びている社会保障関係費の約2割に過ぎないのです。

にも拘わらず、なぜか一般的には、公共事業が悪者になっている。

逆に著者は、公共事業費を絞り込んだことによって、老朽化により橋が倒壊した米国の例をあげ、今後の地震等の災害が予想される中、日本で「ワタルナ、キケン」の看板が増えた橋、トンネルの現状を説明します。

そして、金融機関も会社も個人もお金を使わないデフレの中で、今は、多方面への波及効果が大きい公共事業を積極的に進めるべきと説明します。

この説明は、1月8日の日記でも触れた三橋さんのロジックと同じで、私もその通りだと思っています。

そして、この時期に消費税率を上げることは、97年と同じことになると警鐘を鳴らします。

即ち、消費税率を3%から5%に上げた1997年、日本は大不況に突入し、北海道拓殖銀行、山一證券、三洋証券などが次々と破綻しました。

デフレの今、消費税率を5%から10%に引き上げるようなことになれば、日本は1997年以上に深刻な不況に陥るという見方です。

今回、菅首相は、与謝野さんを経済財政担当大臣に据えて、消費税アップの布陣を敷いたように見えます。

もしかしたら、菅さんは、消費税を今上げることが正義と思って突き進もうとしているのかも知れません。

しかし、今、消費税を上げると、経済成長が図れないことによって、肝心の税収自体ダウンになる可能性が高いと思います。
日本経済が坂道を転げていくような政策は、避けなければならないと思います。

公共事業が日本を救う (文春新書)
藤井 聡
文藝春秋

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「新天皇論」小林よしのり著

2011-01-16 02:11:00 | 日記
小林さんの著書、批判が出ることも多いですね。

しかし、それはある意味当然で、今まで日本でタブーとされてだれも触れなかったことや、なんとなく当然と思って来た(思わされて来た)ことに対して真正面から取り上げ、論じているからだと思います。

それをどう受け止めるのかは、個人個人が考えればいいのだと思います。

事実を知り、考える機会を頂いていることに感謝します。

マンガというスタイルを取ることによって、若い世代に問題提起をして来たことも素晴らしいことだと思っています。


シリーズとも言える「天皇論」、「昭和天皇論」、「新天皇論」からも、考えさせられることがたくさんありました。

恥ずかしながら、それまで私は、天皇陛下が、国民全員のために祈りを捧げていらっしゃるということさえ知りませんでした。
皇室で最も大切なそのお役目は、国家、国民の安寧を願う祭祀であるのです。

「新天皇論」は、皇室の継承問題がテーマとなっています。

皇室典範には、「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する。」と記されています。

昨年1月のTV番組で、10年以上天皇陛下にお仕えしていた渡邉前侍従長が、皇室の将来について発言しています。

“「今の法律ですと、女の方は結婚されたら皇室を離れることになっていますから、紀宮さまが結婚なさって、今は黒田清子様になっておられる。
 
 今のままにしておくと皇位は陛下から皇太子殿下、秋篠宮さま、悠仁さまと今の法律でもつながるようになってますけど、悠仁さままでつながった時に、他に誰も皇室の方がおられないというのは・・・

 私個人的な意見としては、少なくとも女の方がですね、特に悠仁さまと同年代の眞子さま、佳子さま、愛子さまが結婚なさっても、一応皇室に残られて、皇族としてのその時の天皇をお助けになるという体制を作らないといけないんではないかと思います。」”

即ち、皇室の将来のために、「女性宮家」が創設できるよう法律を改正して欲しいと要望したのです。

著者は、この発言は、天皇陛下のお気持ちを受けてのものと考えます。

一方で、それを否定する人たちも多くいるようです。

即ち、“陛下のご意向を勝手に忖度(そんたく)するのは間違っている”と。

“「陛下の傍で、陛下はこう思っているという人が政治を動かすようになっちゃいますからね。近くにいる人ほど言ってはいけない。」(旧竹田宮家の竹田恒秦氏)”と。

その発言の本当の動機はなんなのか、ということは別にして、もっともな意見だと思います。

ただ、私はこれを読んで、マスコミは、宮内庁や皇室のお側にいる方々の発言を批判することが多く、自分でもなんとなくそう思っていたけど、それは間違っているのかも知れない、少なくとも、もっと注意してその発言の真意を判断する必要がある、と思いました。

天皇陛下、そして皇族の方々は、そのお立場上、微妙な問題の発言を差し控えられますが、一方で、そうした問題を、だれよりも真剣に考えていらっしゃると思うからです。


2005年、有識者会議より、女性及び女系天皇を認め、皇位継承順位は男女に拘わらず長子を優先する、という内容の報告書が出されました。

そして、様々な議論が巻き起こる中、皇室典範改正を進めていた2006年、悠仁さまがお生まれになり、典範改正は先延ばしとなりました。

私自身もその時何となくほっとした一人でしたが、実は、問題は残ったままなのだと、今回改めて認識しました。

悠仁さままで無事に皇位継承が進んでも、他に継承される方がいらっしゃらなければ、皇位がそこで途絶えてしまう可能性もあるのです。


著者は、女性天皇だけでなく、女系天皇を支持し、愛子さまによるご継承を訴えます。

そして、危急の課題として、女性の宮家を創設するよう訴えます。

眞子さま、佳子さま、愛子さまのお三方のどなたかがご結婚されて皇室を出て行かれる前に法律改正を行わないと、今のままでは、将来のご継承者は悠仁さまお一人になってしまうからです。

それに対して男系を強く主張する人たちもたくさんいます。

初代神武天皇以来、過去、女性天皇が皇位につかれたことはあっても、女系であったことは一度もない。
女系天皇が即位すれば、そこで皇統は断絶し、全く別の家系による天皇が誕生することになる。
「万世一系」の男系(男系とは、歴代天皇を父系をたどっていくと神武天皇に到ることをいいます)を守り通さなくてならない、との考え方です。

櫻井よし子さんも女系の考え方に強く反対しています。

しかし、その場合、男性の継承者が増えなければなりません。

その為に、旧皇族が皇籍に復帰する案、そして一部には側室を置くという考え方があります。

後者について、著者は、昭和天皇が側室を置かないことを決められたことを、今の皇室が翻すとは考えられないし、それを望んでもいらっしゃらないのではないかと説明しています。私もその通りだろうと思います。

前者の旧皇族の復帰について、著者は、旧皇族の方々は、男系と言っても20代近く遡らなければ天皇にたどり着かないこと、旧皇族が皇籍を離脱してからすでに60年経っており、皇室としての品位含めて、国民からの尊敬を得ることは出来ないこと等をその反対の理由に挙げています。

私もやはりそのように思います。

今の私には、渡邉前侍従長のコメントが一番心に響きます。

即ち、悠仁さまに引き継いで行かれるのと同時に、女性宮家の創設も行うということです。

日本の歴史を尊重しながらも、それをお助け頂くのは、遠い男系よりも、直系の女系の方々だという考え方です。

私は、継承問題については、天皇陛下、皇太子殿下、秋篠宮さまの御心が一番大切だと考えています。

一方で、この問題が難しいのは、皇室典範を改正するのは国会の場だということです。

そして、その議員を選ぶのは私たち国民です。

皇室のあり方を考えることは、日本という国、日本人、そして私たち一人一人のあり方を考えるということでもあると思います。

この継承問題は、様々な要素を含んでいます。

政治的にも利用されやすいものだと思っています。

政治家や関係者の発言、その行動には、その本当の動機含めて、きちんと見極めていくことが大切だと思うのです。

ゴーマニズム宣言SPECIAL 新天皇論
小林よしのり
小学館

ゴーマニズム宣言SPECIAL天皇論
小林 よしのり
小学館

ゴーマニズム宣言SPECIAL 昭和天皇論
小林 よしのり
幻冬舎

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“日本人が知らないニッポン”

2011-01-15 04:21:00 | 日記
Newsweeek日本版に、『だから新聞はつまらない』というタイトルの記事が出ていました。

“「マスゴミ」。さまざまな誹謗中傷や罵詈雑言が飛び交うインターネットで、日本の新聞はテレビと並んでこんなありがたくない称号を与えられている。”

 “権力におもねり、自主検閲し、揚げ句の果てにできた記事は横並びで偏向的──今も日本メディアの「王者」であるはずの新聞をあげつらう声は尽きない。

 その最大の原因として、今なお指摘されるのが記者クラブだ。省庁や警察など公共機関への取材活動を円滑化するために主要メディアで構成されるこの組織は、一義的には政府当局などによる情報提供と記者同士の交流の場だ。その一方で、記者クラブは一部に公開の動きはあるにせよ、雑誌やフリージャーナリスト、外国特派員を排除し続けている。”

私もその通りだと思います。

続けて、その記事で、しかし、その根本的な問題は、
 “「シンブンキシャ」という人種の多くが思考停止していることにある。その原因は、失敗を過度に恐れる文化や硬直した企業体質、それに現場主義と客観報道の妄信にある。”
 
“その思考停止の度合いが甚だしいのは、国家権力の中枢である永田町や霞が関に棲息する政治部記者、なかでも最近生まれた「タイピスト記者」と呼ぶべき「亜種」たちかもしれない。”

と書いています。

この記事はその後も続いていますが、私は購読していないのでその後を読めていません。

「タイピスト記者」とは、多分、聞いたままの話を高速でタイプし(笑)、かつ社内でも受け入れられる無難な記事を大量生産する記者のことを指しているのでしょう。

社内的にも受け入れられる記事を書く事、それは、米国に気に入られるものであったり、中国や韓国に気に入られるものであったり、官僚に気に入られるものであったり、特定の政治家に気に入られるものであったり、ということなのだと思います。

結果として、全体を俯瞰する高い視点からの分析や、その記者独自の主張にはなりえず、各社横並びの“つまらない”記事になってしまうのでしょう。

問題なのは、その内容が、ただ“つまらない”だけではなく、偏った情報であるということです。

偏った情報とは、重要な情報であるにもかかわらず、だれかにとって都合の悪い情報という理由で、記事にされなかった情報も含まれます。

そして、そのリピートによって形成された考え方が、いつの間にか国民の間に刷り込まれ、定着し、当たり前のものになっていくのです。

「戦争で日本人はひどいことをした」という自虐史観は、まさにその代表例でしょう。

「事実はこうだったのだ。日本は素晴らしい国なのだ。」と声を挙げると、なぜかその人は、袋叩きにあって責任を取らされて辞めさせられていくというのが、今の日本の姿です。

自分の国の正しい事実を伝えているにも拘らず、非難されてしまうということは、果たして正常なことなのでしょうか?

ジョージオーウェルの“1984年”は、政府によって完璧に思想統一された世界を冷酷に描いています。

「こわいな~、でも自分には関係ないよね。だって好きなことしゃべったり、書いたり出来るし。」

と思っている私たちは、実は、そのまっただ中にいるのかも知れないのです。


とても面白いHPの紹介を頂きました。

タイトルは、“日本人が知らないニッポン”。
(http://www.thinker-japan.com/thinkwar.html)

あまり知られて来なかった世界、そして日本の歴史が、大変まとまって書かれています。
そして、ここに書かれていることは、本当のことだと思っています。


私は、今の日本の大きな問題点は、“情報の歪み”にあると思っています。

そして、それが正常になって行けば、多くの問題が解決していくと考えています。

でも、その為には、記者が正義の記事を書いて批判されても、それをバックアップしていく体制をマスコミ各社で構築する必要があるでしょう。

そして、その為には、マスコミだけでなく、政治、官僚、米国等たまりにたまった今までの慣習を解いていく必要もあるのだろうと思います。

まだまだ抵抗の力もあるでしょう。


先程とは逆説的ではありますが、今、私たちが住む世界が“1984年”の世界と違う点は、私たち一般人の場合(笑)、関心を持ちさえすれば、ネットや本で様々な情報を入手することが出来るということです。

そして、そうして得た情報を自分なりに考えて見て、発信することが出来るということです。

即ち、偏向したマスコミの情報に流されない自由があると言うことです。

このことは、本当に素晴らしいことだと思います。


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「日本辺境論」 内田樹著 

2011-01-13 04:10:00 | 日記
やや反面教師的な意味合いでこの本を採り上げてみました。

12月23日の日記で紹介させて頂いた藪中さんの著書で知りましたが、かなり話題となった本です。本の帯にも「新書大賞2010第1位!!」と書かれていました。

タイトルからも、この本で書かれている論旨のイメージはつくかと思います。

“日本人にも自尊心はあるけれど、その反面、ある種の文化的劣等感がつねにつきまとっている。”

“「ほんとうの文化は。どこかほかのところでつくられるものであって、自分のところのは、なんとなくおとっているという意識”

日本人は、“常に世界の中心を自らの外に置く国民であり、辺境の民である”。

そして、辺境であることを“それでいいではないか”と受け入れるという考え方です。


“日本人は辺境の民で世界標準に準拠して思考することはできるが、世界標準を造って世界の民を導くことは出来ない民”である。

私も、現在の日本に閉塞感があるのは、外のモデルを日本流にアレンジし、成長を遂げた結果、そのモデルに追いついてしまった。今、習うものがないという時代の転換点にあって、どうしていいかわからずにとまどっている、という面も多いにあると思っています。

今、流行りの「ガラパゴス化」も、携帯電話の規格、機能や普及の仕方含めて、日本が世界標準になれずに、むしろ世界から孤立している現象を表していると思いますが、その事実を否定することは出来ないと思います。

しかし、著者が、その結論を導くために使う例、そしてその書き方に大きな疑問を覚えるのです。

例えば、第一次大戦後のヴェルサイユ講和会議で、日本の代表は、
“自国権益にかかわること以外、会議でほとんど発言しませんでした。その日本代表の行動は会議参加国の多くを失望させ、それがやがて日英同盟の破綻へと繋がってゆきます。”とあります。

しかし、日本は 、ここで人種差別撤廃案という素晴らしい案を提示しています。
その案が通ると困る欧米諸国によって一蹴されてしまったのですが、著者は、そのことについて一切触れていません。

また、結局、米国が国連に加入せずに“多くの国を失望させた”ことについても書いていませんし、日英同盟破綻との関係も明確でないと思います。

“中華思想は中国人が単独で抱いている宇宙観ではありません。華夷の「夷」にあたる人々もまた自ら進んで其の宇宙観を共有し、自らを「辺境に」位置づけて理解する習慣を持たないかぎり、秩序は機能しません”

「夷」にあたる人々である日本人も、自らを辺境と認めていたからこそ、中華思想が成り立った、ということだと思いますが、う~ん、と思ってしまいます。


著者は1950年生まれですが、どうも、日本に対する著者の自虐史観がこの本の基調となっているように思えるのです。


先の藪中さんのコメントです。

『「世界標準に準拠してふるまうことはできるが、世界標準を新たに設定することはできない。それが辺境の限界」・・・この分析は鋭いと思う。しかし、「だからどうしようもない」と考え、「日本の特殊性だから」と納得して思考をストップしてしまっては、日本の将来は危ういと言わざるをえない。』

私も全く同じように感じます。


“私達はたえず外を向いてきょろきょろして新しいものを外なる世界に求めながら、そういうきょろきょろしている自分自身は一向に変わらない。”という著者の思想。

私は、今、日本では、若い世代中心に、歴史的に見ても大きな変化が始まっていると思います。

それは、“まわりをきょろきょろする”ことを起点としたものではなく、一人一人の自発的な考えや行動から始まっているのだと思いますし、これからの新しい日本を形づくる原動力になると思っています。

著者には、その変化が見えていないのではないかと思えてなりません。

教育者としての大学教授でもある内田さんには、むしろその新しい流れを見出し、育んでいくような方向性を示して欲しいと思うのです。

日本辺境論 (新潮新書)
内田 樹
新潮社

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「4万2246票」三橋貴明著

2011-01-11 05:00:00 | 日記
1月8日の日記でも触れさせて頂いた三橋さんの著書の一冊です。

著者は、昨年7月の参議院選挙比例代表に立候補し、タイトルとなった得票数を獲得しましたが、奮闘かなわず落選しました。

この本では、出馬の動機、自民党公認として立候補した理由、政治活動、選挙運動、開票、そこで著者が感じたことを記しています。

著者が選挙に立候補するきっかけとなったのは、「麻生クーデター説」。

覚えている方も多いと思います。

安倍元首相の辞任発表後(2007年9月)、“安倍総理が麻生氏に裏切られたと発言した”という話がニュースとなり、安部首相の辞任は麻生さんが起こしたクーデターだ、という話になりました。

そして、マスコミを含む大キャンペーンで包囲網を敷かれた麻生さんは、その時の総裁選で福田さんに負けてしまいました。

結局、麻生さんが総理になったのは、福田さんの辞任の後。そして、それはリーマンショックから9日後のことでした。

金融危機後の対応を優先し、解散総選挙を後回しにせざるを得なくなった麻生政権は、2009年8月の総選挙で民主党に大敗し、政権交代が実現しました。

三橋さんは、歴史に“もし”はないのだが、と断った上で、もし、「麻生クーデター説」がなければ、安倍さんの後には麻生さんが総理となり、信条とする積極財政、及び早期解散総選挙によって、今とは違った展開になったのではないか、と考えます。

“「麻生クーデター説」が、「政権交代」に直結し、歴史を変えてしまった可能性すらある”。

結局、「麻生クーデター説」は事実でないことが、入院後の安倍元首相本人から伝えられました。

“「そんなこと(クーデター説のこと)は全然ない。麻生さんに悪いことをした」”と。

著者は、“「これが果たして、正常な民主主義国家の姿なのか?」”と強い疑問を感じます。

しかも、麻生さんが首相になった後のマスコミ攻撃を見て、三橋さんは益々危機感を覚えます。

そして、以前から真実を歪めるような報道に懸念を感じていた著者は、その政策や思想に問題ありと考えていた民主党の政権樹立、及びその後の迷走ぶりを見て、参議院選への立候補を決意したのでした。

新人候補としての、慣れない政治活動、選挙活動の様子は、臨場感があります。

著者の強みは、ネットによる若い年齢層の支持者を多く持っているということ。

他の候補者が、半分政治を職業としているような人たちのサポートを受け、そうした出席者で埋められた献金パーティーを催しているのに対して、著者をサポートする人たちは、会社の休暇を取ってサポートするボランティア、そして、振込みによる個人の献金が主な財源でした。それだけに、ボランティアの方々に対する感謝の気持ちはとても強いものがあります。

結局、著者は、この選挙でその個人財産を使い果たしてしまいました。

選挙期間中は、公職選挙法に基づき、演説日程をネットで告知することはおろか、ブログのアップも出来なくなります。

この参議院選から、ネットでの選挙活動が認められるという可能性もありましたが、結果的に、その変更がなかったことは敗因の一つとなりました。

街頭演説の際の結びとしていつも使っていたという言葉には胸を打つものがあります。

“日本が良い方向に変わるとき、それは、偉大な政治家がいたときではないのです。偉大な官僚がいたときでもありません。

 日本が良い方向に変わるとき。それは、それまで政治に興味など持たなかった普通の日本国民が、『このままではダメだ。政治家に任せてなどいられない』と、自らの足で立ち上がり、自らの頭で考え始めたときなのです。これまでの日本の歴史上、必ずそうだった。

 それまでの権威、例えば幕府なり軍部なりの権威が落ち、彼らも自分たちと同じ日本人であることに誰もが気がつき、既存の権威に任せるのをやめ、普通の日本国民が自らの意志で行動しはじめたとき。そのとき、日本は良い方向に変わるのです。”

 私も、100%、賛成です。
 
4万2246票
三橋 貴明
扶桑社

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「経済ニュースが10倍よくわかる 『新』日本経済入門」三橋貴明著

2011-01-08 05:00:00 | 日記
三橋さんについては、12月28日の日記でも紹介させて頂きました。

経済関係では、私が、今、最も信頼している一人です。

ちなみに、国際政治関係では12月1日の日記で紹介させて頂きました北野幸伯さんがとてもいいな、と思っています。

お二人に共通しているのは、ネットの世界で、注目されるようになったということ。

何か情報を得たい時、私は、“本当のところが知りたい”という気持ちで情報を探しています。

そうすると、大手新聞やTVの情報には物足りなさを感じてしまいます。

そのコメントやデータは、その情報の出所のものをそのまま使っている気配が濃厚で、結果としてどれも論調が似通って来る。

ある人や、ある会社、ある団体を一方的に攻撃するのを目的としているようにしか思えないようなケースも少なくありません。

すると、“本当のところはどうなのか?”と思ってしまうのです。

今、そのように感じる方は増えているのではないかと思います。

三橋さんや北野さんの著書からは、その“情報の歪み”を直して行きたいという気持ちがひしひと伝わって来ます。

そして、それは、日本を良くして行きたいという、という気持ちが基本にあるように思うのです。

この著書の中で、三橋さんは、日本の財政赤字の対GDP比率を、単純に他の国々と比較して、日本が財政破綻するのではないか、と唱えることに疑問を呈しています。

政府の債務には以下の4種類あり、それを一緒に議論することは間違いだと説明します。

① 国内からの自国通貨建ての借入
② 海外からの自国通貨建ての借入
③ 海外からの外貨建による借入
④ 共通通貨建てでの借入

外国の政府がこれまでデフォルトを起こしたのは、今まで③のケースのみでした。

今、欧州で問題となっているギリシャ、アイルランド等は、④のケースになります。

この場合、各国政府は、国債発行による景気対策を打つことは出来ますが、国単位でユーロを発行する権限はないため、日銀やFRBのように自国通貨建ての債務を買うようなことは出来ません。

その為、デフォルトの問題が出て来る。

日本政府の場合、①による債務は94%を占めています。

そしてわずか残りの6%が②にあてはまります。

いずれの場合も、債務はすべて自国通貨建てなので、いざとなれば、日銀がその国債を買えばデフォルトは起きないという主張です。

また著者は、今は、GDPを構成する消費、民間投資、財政投資、輸出-輸入がすべて伸び悩んでいる時であり、それらが回復するまでは、財政投資を積極的に行うべき、と唱えます。

私も、その考え方に賛成です。

今、スペインやポルトガルを含めた欧州の様子を見ていると、政府の債務を減らすことが最優先され、その結果、GDP成長が困難になり、税収も減ることによって、結果として債務が減らない、そのことを読んで、格付け会社が、格付を下げてしまう、という悪循環に陥っています。

それでも、欧州各国が債務を減らすことを優先せざるを得ないのは、その努力をせずに、国のバランスシートが悪化していくと、国債の購入を海外の投資家に頼っている事情があり、だれも買ってくれなくなってしまうからです。

日本の場合は、上記に記したようにその面の背景が大きく異なります。

従って、公共投資を含めて、必要な投資はすべき、だと私も思います。

民主党が、その存在意義を求めて、国民受けする緊縮財政を取ることは、日本の経済を壊してしまうことになりかねません。

三橋さんは、上記の状況により、日本のデフォルトの可能性はない、と言い切ります。

その点に関しては、私は少し三橋さんとニュアンスが異なります。

マーケットは、人で形成されているという面があるということです。

即ち、理論上日本のデフォルトがないと言っても、日本も含めた投資家がその消化に不安になって、日本の国債を買わなくなってしまうと、金利は上昇し、格付けが下がって、投資家がいよいよ離れてしまう、という流れが起きる可能性もあると思うのです。

なので、その可能性もシュミレーションしておく必要はあると思っています。

面白いな、と思ったのは、以前に日本が格下げになったときに、財務省が、格付け会社に訴えたのは、三橋さんとまさに同じロジックだったことです。ゆえに、日本の国債がデフォルトする可能性はないのだと。

しかし、私たち国民に対して、財務省は、“大変だ、大変だ、消費税もすぐに上げないと”、と言っている印象しかありませんよね。

情報のねじれが起きているという好例だと思います。

経済ニュースが10倍よくわかる 日本経済のカラクリ (アスコムBOOKS)
三橋 貴明
アスコム

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「なるほどそうだったのか!!パレスチナとイスラエル」高橋和夫著

2011-01-05 04:45:00 | 日記
あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

“The Economist”という週刊雑誌があります。

世界中の政治、経済情勢を網羅しており、“こんな雑誌が日本でも出るようになったら本当に素晴らしいな”、と思える有益な情報がたくさん詰まっています。

新年号のその表紙には、戦車の写真が載っており、その右に、考えこむオバマ大統領の写真が入っています。

黒字で大きく書かれたタイトルは“Please, not again”。

そしてその下には、赤字で“The threat of war in the Middle East”と書かれています。

中東での戦争をもう繰り返さないで!という強いメッセージですが、中の記事には、複雑化した中東情勢、そしてオバマ大統領が置かれた難しい状況のことが書かれています。

現在の中東情勢を生み出した大きな要因の一つが、イスラエル・パレスチナ問題です。

私は、ウン十年前に、予備校の世界史の先生が、

「ここまでこじれてしまうと、パレスチナ問題は、だれにも解決することが不可能だ。」

とおっしゃったことに大きなショックを受けました。

その言葉は、今でも忘れられません。

“皆が平和を願えば、出来ないなんてことはないじゃないか!”という気持ちも強かったと思いますし、

“そこまで大変なことなのか・・・”という気持ちもあったと思います。

ウン十年を過ぎて、その思いは、今でも変わりません。
中東情勢は、より複雑になっているようにも思えます。

それだけに、“平和”ということを考えた時に、パレスチナ、イスラエル問題は避けて通ることが出来ない問題だと思います。

国際政治学者の高橋さんは、複雑化するパレスチナ情勢を、だれにでもわかるような説明を心がけてこの本を書きました。

最初の章で、パレスチナの歴史を、年代を追って俯瞰します。

そして、それ以降の章で、中東とイスラエル・パレスチナの関係、ノルウェーと~、アメリカと~、その他の国々とイスラエル・パレスチナの関係、

というように、イスラエル・パレスチナ問題にかかわりの深い国々との出来事を取り上げ、より立体的に全体像を描き出すように工夫しています。

この本を読むと、パレスチナ問題とは、実は最近の問題なのだということを痛感します。

もちろん、世界に散らばったユダヤ人たちが、エルサレムを目指すという“シオニズム”の考え方は古くからあったものです。

しかし、実際にその流れが出来たのは、民族主義の広まりによって、ユダヤ人への迫害が強くなってからの19世紀末。

そして、その流れが決定的になったのは、ヒトラーによるユダヤ人迫害でした。

一方で、パレスチナの人々は、平穏にずっとその地に住んでいたのです。

既に他の人々が住んでいる土地に移り住んで、新しい国を創ろうということ、それは、前から住んでいた人々のことを考慮していないと言うことでもあります。

イギリスが、有名な二枚舌を使い、イスラエルの人々にも、そしてパレスチナの人々にも独立国家建設を認めたところから、パレスチナ問題が大きくこじれて行きます。

しかし、私は、この問題が決定的になったのは、国連が、イスラエルとパレスチナの地域を分割したところだと思います。

その直前、パレスチナに住むユダヤ人人口は65万人。
パレスチナ人は100万人を超えていました。
当時シオニストの所有していた土地はそのごくわずかでした。

それが、国連決議によって、パレスチナの55%をシオニストに割当てることになってしまったのです。

これは、日本に例えると、九州から関東近くまでを、一夜で奪われてしまうようなものです。

当然、その後パレスチナ人たちは、その地をなんとか取り戻そうと戦いました。

しかし、戦うたびにその地は小さくなって行き、今は、ガザ地区と、ヨルダン川西岸地区という狭い地区だけになってしまいました。

住む場所を失った多くのパレスチナ人は、難民となって近隣諸国に移って行かざるを得なくなりました。

パレスチナゲリラ、自爆テロ、それを批判するのは簡単です。

しかし、それは、それだけ追い詰めてしまった他の国々によって作り出されたということでもあるのです。

むしろその要因が大部分でしょう。

今、イスラエルとイランが戦争を始める可能性がある、と言われています。

米国は、イスラエルを全面的にサポートしています。
そして、核開発を理由にイランを厳しく批判しています。

米国と同盟関係にある日本もイランを批判しています。

しかし、そのイランは国連の査察をきちんと受け入れていました。

この状況は、イラクが大量破壊兵器を開発していると断じて米国が戦争を起こした時と酷似した状況に思えるのは私だけでしょうか。

日本には、果たすべき役割がある筈です。

私たちが、米国や日本政府や官僚にエールを送っている日本のマスコミの論調に注意を払うことは、今後の日本のあり方に繋がる大切なことだと思います。

なるほどそうだったのか!!パレスチナとイスラエル
高橋 和夫
幻冬舎

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