"ちょっと外から見た日本"

今、スペインに住んでいます。
大好きな日本のこと、
外からの視点で触れて見たいと思います。

“イタリアの国民投票による原発凍結について”

2011-06-15 03:37:12 | 日記

イタリアで国民投票を行い、圧倒的多数で原発を凍結することになりました。http://mainichi.jp/select/world/news/20110614ddm001030103000c.html

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イタリア:脱原発を継続 国民投票成立、再開反対9割超

 【ローマ藤原章生】イタリアで2日間にわたり行われた原子力発電再開の是非などを問う国民投票は13日午後3時(日本時間同日午後10時)に締め切られ、成立条件の過半数を上回る約56・99%の投票率に達し成立した。国内投票分100%の開票で原発反対票が94・53%となり、同国の原発建設は将来的にも不可能になった。福島第1原発事故後、国民投票で反原発の立場を鮮明にしたのは世界初。原発を推進してきたベルルスコーニ首相は投票締め切り前、「原発にさよならと言わねばならない」と語り、敗北を認めた。

 内務省発表のデータには在外投票が白票の形で計算されており、16日に出される最高裁判断でそれが上乗せされれば投票率はさらに高まる。

 イタリアには現在、原発はない。ベルルスコーニ首相は原発推進を模索してきたが、福島第1原発の事故を受け、突如再開凍結を発表するなど国民投票の成立を阻もうとしてきた。国民投票で再開が拒否された場合、将来的にも建設ができなくなるためだ。

 メディア王のベルルスコーニ首相の影響からか、民放と国営テレビも直前まで国民投票の話題を大きく伝えなかった。すでに夏休みを取ったり週末は海に行く人が多いため、ローマのメッサジェーロ紙など一部メディアは「夏の国民投票は過半数に至らない」とみていた。

 しかし、「緑の党」や中道左派野党を中心に、イタリア国民は口コミやネット通信で投票を呼びかけて、予想を上回る投票率になった。

 イタリアの「緑の党」創始者の一人で、87年と今回の国民投票の提唱者、パウロ・チェント元下院議員(50)は毎日新聞の取材に「欧州一の原発国、フランスの政府は推進に躍起だが、国民レベルでは反発も大きい。原発の是非は政府ではなく国民自身が決めるべきだというイタリアの考えが、今後、世界に広がることを願っている」と話した。  (毎日新聞 2011年6月14日 東京朝刊)

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イタリアには、現在、原発は1基もありません。

もともと国内に4基あったのですが、1986年のチェルノブイリ事故の後、全廃しました。

その後、ベルルスコーニ首相が原発推進路線に転換、2009年には原発の建設計画を盛り込んだ法律も成立されていました。

 

信じられないことですが、首相のベルルスコーニさんはイタリアのメディア王でもあります。

民放3大ネットワークを支配下に置き、国内最大の出版社も保有しています。

 

国営放送へも強い影響力を持っています。

 

 

国民投票当日、イタリア国営テレビの天気予報で、

 

「今日は海で過ごされるのが良いでしょう。」

 

というコメントが流れたそうです。

 

 

今回の国民投票、脱原発に投票する国民が多いであろうことは予想されていました。

 

一方で、50%の投票率がなければ、その結果は無効になります。

 

経済界の後押しを受けて、原発を推進するベルルスコーニさんにとっては、投票率が50%を割ることが最も大切なことでした。

 

なので、首相自身、事前に、「投票には行かないで、海へでも行った方がいい。」とさかんに発言していました。

 

 

 

国営テレビの天気予報でのコメントも、首相に歩調をあわせたものと解釈されています。

 

政治家、ましてや首相が、投票に行くな、と言うこと、

 

とても選挙で選ばれる者の発言とは思えません。

 

しかし、そのベルルスコーニ首相の戦略?は今回見事に裏目にでました。

 

逆に国民の関心を高め、投票率を後押しすることになったのです。

 

今回の国民投票では、首相らに与えられている公判出廷免除の特権の是非も問われましたが、「免除反対」の民意が確認されました。

ご存知のようにベルルスコーニ首相は未成年買春犯罪等で罪に問われています 

 

既存のメディアが国民投票を無視する中で、大きな役割を果たしたのは、やはり、口コミとネットの力でした。

中東の民主化運動、欧州のデモ含めて、今、世界中で起きていることですね。

 

当局が一生懸命押さえ込もうとしている中国でも、いよいよ限界が来つつあるように思います。

 

 

 

それにしても、首相がメディア王というのは、まるで別世界のような感じがします。

 

しかし、よく考えてみると、実は日本でも同じようなことが起きていますよね。

 

今回の原発事故でも、メディアが大切なことを伝えない、もしくは、御用専門家と一緒に情報を曲げて放送するということが定番となっていました(います)。

 

 

今起きていることの構図はどこも同じなのだと思います。

 

政治が、官僚、財界、メディアと組み、自分たちの利益に繋がるものをあの手この手を使って通そうとする。

 

それに対して国民が声をあげる。

 

 

ドイツやイタリアでは、国民の声が脱原発の流れに繋がりました。

そのことについては、原発事故の当事者国である私たちも、もっと真剣に考えて見る必要があるように思います。

 

それにしても、自民党石原幹事長のイタリア国民投票に対するコメント、

「あれだけ大きな事故があったので、集団ヒステリー状態になるのは心情的には分かる」

http://www.asahi.com/politics/update/0614/TKY201106140605.html

には違和感があります。

「国民投票で9割が反原発だから、やめようという簡単な問題ではない」

という発言含めて、国民、そしてその民意をどのように考えているのか、

そして、とにかく原発を推進しようとする本音が出ているように思います。

 

もちろん、ドイツやイタリアと日本の事情には異なる部分があります。

ドイツもイタリアも、電力が足りなくなったら、近隣の国々から買うことが出来ます。

その中には、原発による発電が国の発電量の7割以上を占めるフランスも入っています。

 

日本は島国です。

ですので、電力が足りなくなっても外国から電力そのものを買うことは出来ません。

その点は、大きな違いだと思います。

なので、今、日本国内で、原発推進と脱原発で意見が分かれていることは、悪いことではないと思っています。

問題は、その考えが、「私」から出ているものなのか、「公」から出ているものかということだと思います。

 

私自身は、脱原発という方向性を明確にした上で、

経済という血液の循環も大事にし、既存及び代替エネルギーに切り替えながら、

脱原発に向って進んでいくことがいいのではないかと思っています。