夜中の紫

腐女子向け 男同士の恋愛ですのでご興味のある方、男でも女でも 大人の方のみご覧下さい。ちょっと忙しいので時々お休みします

おはじき遊び 一つ目

2014-08-29 | 紫 銀


まだ肌寒いが、すっかり春めいて空気が 薄ピンクに先に染まっているのだが、家の外と言えば

霜に枯れた草が錆び付き 地面の下まで固くなっていそうだった。


武蔵の国の山の中に 街から少し外れた剣術道場の敷地内 春めいた色など誰も欲しがりそうもない

ろうそく一つの室内で 大きな中年の男が 羽織を肩に掛け胡坐をかいている。

大きな刀がその肩に立てかけられ 灯火が人物をちらちらと動かしているいたが それは影だった。

本人はどっしりと 敷かれた布団の上に座り 腕を組んで袖の中に隠している。


障子で囲まれた和室 道場から少し離れた 離れと言う部屋 渡り廊下を静かに誰かが渡る音がする。


その音を聞いて 目を閉じ少し感慨深そうに俯くと 

足音は 雨戸出閉じられた部屋を周ってくる。一か所だけ雨戸が空いていて そこから夜の光が差し込んでいた。

その月明かりの差す障子の前に立ったようだ。月明かりに照らされ障子に映るその姿は

髪を後ろで高く結い 浴衣の裾が少し短い 若衆の姿だった。

中年の男は 彼の大きさを実感しながら 下から上まで見ていると


「先生・・・・。」

とその青年が声を掛けて来た。

「・・おう・・・。」

と答えると 彼が障子に手を伸ばし 少しずつ障子があいた。


少しずつ見えてくるのは少女かと思うほど 頬から首に掛けて柔らかな 青年だった。


足袋を履き 少し踝のとがった足を一歩だし 俯きながら部屋に入ると 正座してから障子を閉める。

先生と呼んだ男の顔も見ずに 頭を下げた・・・・・。明るい黒髪は 潔く縛られ

まっすぐ後ろに垂れていた。



「・・・・・・・決めたのか・・・・。」

と聞くと

青年は

「はい・・・・・。」

と 答えた。


青年の顔が引き締まると幼は消え 年頃特有の堅さを見せたが 先生と言う男を捉えるその瞳は

幼いまま 問掛けるように濡れて見える。


思わず男が手を伸ばすと 灯火が荒れ狂った様に影を散らした、

障子に映る男の影だけは濃く青年の顔に重なった。

太い指で 青年の頬に指が触れる。彼は身じろぎもせず見つめていたが、


「・・・・・・・俺・・・・。」

と言い掛けると 男が

小声で

「・・・言うな・・・・。」

と制止した。


何事かを諦めた様に 視線が沈む青年を見ながら 突然男が立ち上がると 

中年の男は背のかなり大きな男のようで 大きな肩幅に 分厚いとまではいかないが しっかりした締まった体で 以外にもしなやかそうな男だった。

男が羽織を脱ぎ 床の間に自分の太刀を置くと 青年は眺めた。

ふっと息を掛け行燈のちらついた火を消すと 暗闇が包む。

しかし 二人の目はすぐ慣れて来る・・・・・。

彼は 男に懐に引き込まれるように 首の後ろを 掴まれていた。


月明かりから彼を隠すように 両手で自分の胸に入れると 力を込め抱きしめる。

行く先を案じるように困った顔で いつまでも男は 青年を抱いていた・・・・・・。






ぐいっとへこ帯を細い腰から引き抜こうとし・・・・・それは意外に長く

ずるずると男は手繰らなければいけなかった。

青年ははきょとんと その様子を寝床の中から眺めていた。

腕は藍色の浴衣に収められていたが その袖丈も短く手首の裏が見えている。

四つばいになり少年を 手で跨いで上から眺めると肩から続く襟の乱れに気が付いた。

彼の浴衣の襟は寝ると一層伸びて崩れていた。

中年の男は着くずれがいやらしい。と言うよりも 襟が伸び外側に膨らむのが気に入らないらしい。

これから脱がそうと言う時に 襟をピシっと締まる様に摘まんで何度も直したが、青年の首元には合わないのだった。

飽きずに直しているので 青年が

「・・・・あんたが・・・・・すぐ襟を引っ張るから・・・・伸びちまったんだろう・・・?。」

とつまらなさそうに言うと 男が

「・・・・嫌・・・・これを着ていた若い時分・・・随分粋がって・・・・・・伸ばしちまったから・・・。」

と肩を回して 着物を 片方だけ脱ぐ真似をした。


「・・・・女・・・・?。」

と軽蔑したように聞くと 男はその襟に手を差しのべながら

「・・・いや・・・・。」

と答えた。

すぐに青年の目が泳ぎ 横に顔がずれると 男の手が 彼の襟を開く。


見えて来た白い肌に 唇を付ける音がすると 青年の手首が微かに動き ゆっくり手が閉じるように丸くなって行った・・・・・。



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