夜中の紫

腐女子向け 男同士の恋愛ですのでご興味のある方、男でも女でも 大人の方のみご覧下さい。ちょっと忙しいので時々お休みします

沁みる 19

2017-06-14 | 紫 銀

石川先生に 今夜舞う剣舞の稽古をつけてもらった。

道場の弟子たちが酔っ払って舞う剣舞、いつも誰かが剣士の士気を鼓舞したのだ。

その舞を、今夜 田嶋の骨を撒くあの白洲で舞い

師匠を先達の待つあの世に送る。






ガタガタと

先の車両から揺れ 自分を乗せた車両が 揺れ出した。

暗い車両に閉じこもるように乗り

膝を抱えている。

ギーギーとブレーキと軋みが交互に来て 列車が生きているようだった。

土産にもらった酒瓶の一つが倒れ 同じ所をごろごろ転がる。


沖田総悟は 膝から頭が上げられないほど体が重かった。

いつか、

いつか 帰って来いと

声を掛けられる

それを夢見ていたが、先生は許さなかった。

 

俺との事を ずっと恥じたはず。

姉にもらったおはじきを 握って死んだのは 俺に許さないと言いたかったのか


「・・・師匠。」

言葉が漏れるが総悟自身は気が付かない。


もう少し早く着いてれば、あの障子の中に飛び込めたのに・・・

謝れたかもしれないし、港先生を止められたかもしれないし、

俺は 田嶋先生の生きてる顔を 見れたかもしれない・・・・。


声が聞けたかもしれない・・・。





坂田銀時は

ごろごろいう一升瓶が気になって起き上がる。


朝診療所に移されてから、

昼間、有村という男が自分を訪ねてきた。

沖田総悟の先輩剣士で、田嶋六助の後輩にあたる者だと言う。

総悟の非礼を詫びると言って連れ出されてたが、根掘り葉掘り

丁寧だが 正体を探ろうとしてくるので、

お姉ちゃんがいい具合に膝に乗ってても 

悪さも出来なかった。


真向いの男は 自分で飲んでいたが、女がねだると飲ませてやり

肩を揉めと言えば、間違えて脇を揉んでしまう。

きゃあ!と、悲鳴を上げて女が有村の膝に寝そべっても、彼は猫を抱えたぐらいにしか思ってないらしく・・・

自分を睨んでいるのだ。

そんな訳で お姉ちゃんに酔ったふりして膝枕してもらう事も出来ず、

接待が逆にストレスになった


早々に帰ると言って駅まで送らせたが、そこで気が付いたのは、金がない事。

寝てる間に連れてこられたのだ、携帯も無い。


駅で頭を下げられ分かれて 駅構内に入ったが、

特別列車が江戸まで帰ると知り、駅員に護送されてきた者だと言いはって、特別車両に、戻らせてもらった。

布団は自分の何だし、

ごろっと寝る


 

夜遅く・・・誰かが入って来た。

列車は彼を待って出発する

と・・・


乗ってきた相手が声を発したので 誰だか判った。


ごろごろいう酒瓶が自分の ベッドからたらした手に当ったので持ち上げる。

沖田総悟は うなだれたままだった。



医者の石川が、今まで故郷に顔すら出さなかった沖田総悟を引っ張り出すために 

今度の事案で一芝居打ったと言う。

気の好いおっさんで、ずけずけ物を言い 声を上げて良くわらう親父だった。

江戸での近藤 土方 沖田の事を話すと

代わりに、総悟が 田嶋に拾われて可愛がられていた事を教えてくれた。


師匠に拾われた弟子・・・


「総悟は賢い子で・・・土方はくそ真面目だったからなぁ・・・足して2で割れれば 丁度良かったのにと、田嶋ともう一人の師範 港が良く言っていた・・・。」

石川はぎしぎしとなる診察室の椅子に深く座り、くるっと回して ごちゃごちゃした書類を整えていた


「総悟が・・・田嶋が腹を切るという日に現れた時は、びっくりしたが、・・・来ると思っていたよ。・・・・生きてる時には、お互い頑固だから・・・呼び戻したり、謝ったり出来なかったんだ・・・馬鹿だからな・・・二人とも。」

と立ち上がる。

銀時は なぜかもやもやとした物が思い浮かんだが、それが何なのかわからず 聞きながら思案した。

石川が、とさっと、書類を机に置き

肩も落とし、動きが止まった。

「・・・・。」

銀時は石川を見上げた。

すると・・・


「・・・まぁ・・・お前さんは、田嶋の事も、田嶋の兄貴たちの事も知ってるだろうから・・・お前のせいじゃないって・・・。」

石川が 銀時に言う。

銀時は

「は?・・・・何・・?。」

と、訳が分からず、石川に聞く。

「・・・・総悟にだ・・・・総悟は、自分のせいで腹を切ったと 思ってるらしいから・・・。」

「・・・俺に・・・何の関係が?!。」

銀時が問いただした。

石川は

「・・・田嶋は、・・・機密だと言って、港と師匠にしか話さなかったが、俺は自分のカルテに書き込まなけりゃいけんから、江戸に行った残りの3人の跡を追ったのさ。・・・そしたら、彼らの首が違う名前で晒されて、・・・その一人が・・白髪の若者 で、白夜叉ってあだ名の男になって居た。」

銀時の顔を じっと眺める。

「・・・。」

銀時が見返すと

「ははは・・・でも・・・田嶋が お前たちが羨ましくて、最後まで殺せなかったと ぼやいていたしなぁ。まさか!ここで会えるとは、・・・ははは!何でかな ははは!。」

石川が笑う。

「・・・こっちだって、田舎侍 切りにくかったわ・・。」

わらわれて銀時が 苦々しく呟いた。



「・・・家族は・・・・・?。」

笑い疲れた頃の、石川に 銀時が聞く。


「全員、帰って来るようにと、・・・師匠が妻帯させてだした。・・・田嶋の嫁は、単身で江戸までいって、身ごもって帰って来てな・・・・だが、兄貴たちは、行方不明のまま謀殺罪の嫌疑が掛けられていた、あいつが江戸から戻って来ると言う時に、武州の恥だと騒がれ、その嫁が襲われてなぁ、・・・胎児と嫁、二人とも亡くなった。」

石川が答えた。

「・・・・。」

「・・・・お前さんのせいじゃなかろう?・・・・その後、拾った総悟を 自分の息子のように思っちまったのも・・・・お前さんのせいじゃないのさ。」

石川は、銀時の肩を叩き、ついでに自分の腰を叩く。






やなじじいだった・・・。


手にした酒を見て、総悟を見ると まだ膝を抱えて、彼は蹲ったままだ。

俺のせいじゃないと

2度も言いやがった。


銀時はベッドから降りると 反対側にいる総悟の隣に座る。

話す事も無くて黙って居ると


「先に・・・帰ったんじゃねえんですかィ?。」

と総悟が言う。

「金がねえんだよ!無理くり拉致られてきたから 持ち物布団だけだしな。」

と、銀時が言う。

「・・・へぇ・・・そうですかィ。」

と 総悟が返事をする。

文句を言いたかったが、

銀時は頭を掻いた。


総悟は膝を抱えて蹲ったままだったからだ・・・。



「・・・ずらが・・・・お前さんの師匠と話してたかもなぁ・・・。」

総悟は頭を少し動かし

「・・・桂 小太郎が??。」

と言う。

「・・・ああ・・・あの頃、・・・・生きて帰れねえから、遊ばしてもらってるとかで・・・お前らの先生は、吉原に住んでてな・・・その時に、六助って男は納戸のネズミみたいに、うすっ暗いところに居るって、ずらが言ってた気がしたがな・・・。」

銀時は 他に何か思い出さないかと 考えてみたが

別の事が思い浮かぶ。

「・・・・。」

「医者の石川だっけ?・・・・お前のせいじゃ ねぇってさ。・・・俺のせいでもないがな。」

総悟はまだ下を向いたままだ。

銀時は 続けて


「・・・・・・他人はお前のせいじゃないって・・・言うが、何言われようが・・・手前ぇのせいだって事がちゃんとわかっちまってるんだよなぁ。・・・変に誤魔化しゃ・・・そいつが知ってる自分じゃなくなるし、だからって・・・認めても・・・。」

銀時は暗がりの中で総悟を見た。

「戻って・・・どうすることもできねぇし・・・。」

すると、

 

「・・・・・・・・・何吹き込まれたか、知らねえけど・・・俺はもう関係ない所に居るし。・・・何にも思っちゃいねぇよぉ・・。」

と、答える。

銀時は列車に揺られながら

「ふーん・・・。」

と答えたが

総悟は 

まだそのままだった。


銀時は 腹に抱えていたある物に気が付いた。

「ただ・・・。」

おもむろに立て、栓を抜き・・・匂いを嗅いだ。

「ただ・・・先生が・・・好きだった。」

と、総悟が言う。

銀時は一口飲む前に、

「・・・親父の、様にだろ・・。」

と言った。


「そうでさぁ・・・親父みたいに。・・・親父みたいに何でも 判ってて、俺みたいなクソガキに・・・好きだって付きまとわれちゃ・・・迷惑だよなぁ。」

総悟はぐいっと銀時が掴んでいる酒瓶を掴み 銀時から奪うと、自分のだと言わんげに 口に持っていき 酒瓶を上げる。

ごくごくと

総悟の喉仏が酒を送り込むたびに上下し、

「・・・はあ!・・・はあ。」

と、総悟が酒瓶を下ろした時には、荒い息になる。

「・・・。」

銀時が眺めていると

「・・・俺には もう誰も居ない。」

と総悟がつぶやいた。


銀時は

かつて・・・

生きた自分を 恥じて憎み 動く心臓さえ疎ましく思った時期に

もう・・・誰も。

と、

思った事を思い出した。


総悟がもう一度酒瓶の首を持ち、ごくごくと飲み始める。



「・・・お前には 必要ねぇな?、一人で一人前になったんだしな・・・。」

銀時が 飲む総悟を見て言った。


総悟がまた酒瓶を下ろすと、今度は銀時が総悟の手から取り戻し 酒を自分の喉に流し込み、

「そう・・・思わないと、壊れちまうんだろう?・・・・。」

と、言う。


沖田 総悟は動きを止めて下を向く

「・・・。」


「師匠がこの世を去る前に・・・お前は呼ばれた。・・・」

銀時は総悟の方に体を向け、真ん中に 酒瓶を置いた。

黙って総悟を見ていると・・・

総悟が

「・・・そうだよ往った理由は、・・・・・・・俺に、・・・介錯を 俺にさせたくないから 遠ざけた。・・・傍に置いてくれれば 俺は先生みたいに何でもした!・・・体売ろうが身内売ろうが、先生の為なら・・・どんな事でもした・・・。」

酒瓶を手で掴む。ぎゅうと音がした。

総悟は震えながら

「・・・・先生は!・・・俺にみっともない姿見せないし、・・・自分と同じ事を・・・させたくなかったんだ・・。」

そういった。


銀時は

「・・・・随分と、まあ・・・。」

そう言いながら、総悟の手を瓶から剥がして 酒を飲んだ。

総悟は 床に手を付くと、肩をすくめて泣き出した・・・。

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