つらつら日暮らし

仏教、禅宗を学ぶ曹洞宗の禅僧によるつらつらなる日暮らし。時事ネタ、野球ネタもあります。

今日は憲法記念日(平成29年度版)

2017-05-03 10:42:39 | 哲学・思想・生き方
今日5月3日は憲法記念日である。今更ではあるが、現行の『日本国憲法』は、1946年11月3日に公布され、翌年5月3日に施行された。よって、今年は憲法施行70年の節目となる。

憲法施行70年、各党が声明・談話を発表(TBS系(JNN))―Yahoo!ニュース

とりあえず、こんな記事もある。

それで、拙僧つらつら鑑みるに、こういう日だからこそ、憲法について勉強するのが良いだろうと思った。拙僧の手元には高橋和之編『[新版]世界憲法集』(岩波文庫・2007年)があるから、それから各国の憲法の「前文」「序文」などを見ていきたい。なお、この「前文」「序文」は、憲法自体に含まれ、その憲法の位置付けを表明しているという国もあれば、あくまでも憲法の理念を解説しているもの、或いは、何かの宣言という場合がある。

例えば、以下のような内容はどうか?

われら合衆国人民は、より完全な連合を形成し、正義を樹立し、国内の平穏を保障し、共同の防衛に備え、一般的福祉を増進し、そしてわれらとわれらの子孫のために自由の恵沢を確保する目的をもって、ここにこの憲法をアメリカ合衆国のために制定し、これを確立する。
    「アメリカ合衆国憲法〔一七八八年成立〕」、前掲同著、50頁


だそうだ。まぁ、イギリスとやり合い、欧州各国との関係を模索している中で作られただけあって、基本、国内を志向するものとなっている。ツッコミどころとしては、「正義」とか「一般的福祉」のように、様々な解釈がされる用語が見えるので、その辺をどう考えるかが難しいね、という話になる。

カナダは、神の至高性および法の支配を承認する原理に基礎づけられているので、以下のとおり定める。
    「カナダ〔一九八二年憲法〕」、前掲同著、132頁


あ~もう出て来た、「神」。神の至高性を承認する原理に基礎づけられたカナダの憲法にある「信教の自由」って、一体どういう意味なのかな?とか思う。なお、信教の自由は、同国憲法「第二条〔基本的自由〕」の(a)に「良心および信教の自由」が挙げられ、何人もこの基本的自由を有するとしている。この神は、あの『旧約聖書』でモーセ達の前に出てくる神なのだろうか?だとすると、「信教の自由」なんか認めてくれなさそうで、むしろ「契約」を求めるセールスマン的態度を採りそうだけど、大丈夫なのだろうか?

なお、『世界憲法集』には、1867年当時の憲法も収録されているのだが、「女王陛下」に対する想いが各所に見られる内容となっている。まぁ、当時のヴィクトリア女王が枢密院の助言をもって制定することを認めたという話であるからかな。なお、解説を見ると、この国の憲法はとてもややこしい。まぁ、元々植民地が自治を認められつつ、実際には独立国家としての責任も生じていたようなので、仕方ないといえば仕方ない。

ドイツ国民は、神及び人間の前での責任を自覚し、統合されたヨーロッパの対等の構成員として世界の平和に奉仕する意志に鼓舞されて、その憲法制定権力に基づき、この基本法を制定した。
    「ドイツ連邦共和国基本法〔ボン基本法〕」、前掲同著、166頁


また出ました、「神」。何だろう?プロテスタントなのかな?なお、この基本法は、東西冷戦が始まった直後に制定されたものであり、よって、西ドイツの首都となっていた「ボン」にて採択された。ナチス・ドイツとして第二次大戦に敗れた直後であるからか、「ヨーロッパの対等の構成員として」というような、何とか他の国の下に立たないようにしようという想いがありつつ、自らがなしたことへの反省に基づいて、世界平和に奉仕するという想いが見て取れる。

で、フランスを見てみようと思ったが「前文」は全く面白くない。しかも、「神」が出てこない。それで、第一条を代わりに見ていくと、その辺の事情が分かる。

フランスは、不可分の、非宗教的、民主的かつ社会的な共和国である。フランスは、出自、人種あるいは宗教の区別なく、すべての市民の法の前の平等を保障する。フランスは、あらゆる信条を尊重する。フランスは、地方分権的に組織される。
    「フランス一九五八年憲法」「第一条〔共和国の基本理念〕」、前掲同著、278頁


わざわざ「非宗教的」と書いてあるからには、なるほど、「神」は出てくるはずも無いといえるだろう。ついでに、であれば同国の憲法などは、どのような原理に基づくのかな?と思ってしまうが、その辺は「第二条」に出ていて、「共和国の原理は、人民の人民による人民のための統治である」となっている。リンカーンのパクリか・・・

悠久なる歴史と伝統に輝くわが大韓国民は・・・〈以下略〉
    「大韓民国憲法〔一九八七年一〇月二九日全文改正公布〕」、前掲同著、333頁


自分で、悠久なる歴史と伝統なんて言ってしまう集団がまともなはずが無い。

全能の神の名において!
スイス国民及び州は、
被造物に対する責任と自覚し、
世界に対する連帯及び開放の精神において、自由及び民主主義並びに独立及び平和を強化するために同盟を刷新することを決意し
相互に配慮し、尊重しつつ統一の中の多様性の下に生きる意志を有し、
共同の成果及び将来世代に対する責任を自覚し、
自由を行使する者のみが自由であるということ及び国民の強さは弱者の幸福によって測られるということを確信し、
次のとおり、憲法を制定する。
    「スイス連邦憲法〔一九九九年四月一八日〕」、前掲同著、380頁


また来ました、「神」。やはりプロテスタントだろうか。それにしても、「自由を行使する者のみが自由であるということ」という文章、これは自分だけということではなくて、他人も同様という配慮が前提になっているわけだが、非常に分かりやすい。そして、「国民の強さは弱者の幸福によって測られる」という言葉も非常に味わい深い。社会福祉とは、このような考えを元にしなくてはならないといえるだろう。

われわれロシア連邦の多民族からなる人民は、
わが国における共通の運命に結ばれ、〈以下略〉
    「ロシア共和国憲法〔一九九三年一二月一二日の国民投票で採択〕」、前掲同著、437頁


・・・「共通の運命」?何やら重い言葉が出て来たぞ。まぁ、かのエリツィン大統領が必死になって成立させた憲法であり、今後のロシア国民はロシアという国家を文字通りの運命共同体として生きていって欲しいという希望が込められているのかもしれない。

中国は、世界で歴史が最も悠久な国家のひとつである。中国各民族人民は、輝かしい文化を共同して創造し、光栄ある革命の伝統を有している。〈以下略〉
    「中華人民共和国憲法〔一九八二年一二月四日施行〕」、前掲同著、499頁


またきた「悠久な歴史を持つ」的文章。何だろう?東アジアは、こういう言い方から始まらないと、気が済まないのだろうか?しかも、歴史というのは、何に依拠して展開するのだろうか?文化的には創造されねばならないというのは、なるほど文化大革命を行った国というだけはある。歴史とは、過去の遺物では無いということであろう。いや、そう採ってあげねばなるまい。しかも、怖いのは「革命の伝統」という表現である。革命が伝統になるのか・・・これは、或る時の革命を伝統とするという意味で良いんだよな。革命は、まさに天命を換えるという意味だから、伝統ということにはなり得ない。もう或る種の皮肉でしかない。なお、この「序文」は驚くほど長いのだが、孫文・毛沢東・鄧小平という3人を讃え、その改革を忘れずに今後も続けていくという意志が綴られている。3人を讃える?日本の某宗教団体は、この辺をパクったのだろうか?

ということで、最後には日本のを見ていきたいのだが、かの有名な「前文」については、Wikipediaを始めとして多くの紹介がネット上に存在するので、拙僧的には敢えて、前文の更に前にある、昭和天皇による「公布」の宣言を見ていきたいと思う。

朕は、日本国民の総意に基いて、新日本建設の礎が、定まるに至つたことを、深くよろこび、枢密顧問の諮問及び帝国憲法第七三条による帝国議会の議決を経た帝国憲法の改正を裁可し、ここにこれを公布せしめる。
   御名御璽
    昭和二一年一一月三日
     以下、「内閣総理大臣兼外務大臣 吉田茂」を始め内閣各大臣の署名続く
    「日本国憲法〔一九四六年〕」、前掲同著、566頁


これ、もちろん前文そのものでもないから意外と目にすることが無い一節なのだが、こういう書籍になるとちゃんと載っている。それでこれを見ると、『日本国憲法』の公布は、一応、『大日本帝国憲法』内に於ける手続きを経て改正がされた、という手順になっていることが分かる。ここでいう「帝国憲法第七三条」というのは、以下の内容である。

1、将来此ノ憲法ノ条項ヲ改正スルノ必要アルトキハ勅命ヲ以テ議案ヲ帝国議会ノ議ニ付スヘシ
2、此ノ場合ニ於テ両議院ハ各々其ノ総員三分ノ二以上出席スルニ非サレハ議事ヲ開クコトヲ得ス出席議員三分ノ二以上ノ多数ヲ得ルニ非サレハ改正ノ議決ヲ為スコトヲ得ス


・・・一応、帝国議会が開かれ、議決されたことになっているのだが、この時の議員はどういう人達だったのであろうか?いわゆる第22回衆議院選挙(1946年4月)ということなのかな?そうなると、日本自由党・日本進歩党(後に民主党[平成のではなくて])・日本社会党などが中心であり、そこに日本共産党なども入っていた。ということで、共産党も今の憲法を守れとかいう話になっていくのだろうか。なんか、ちゃんと見ていくと、分からないことばっかりだな。

ということで、雑駁な記事で申し訳ないのだが、憲法記念日に因んで拙僧なりに学んでみた。結論としては、思った以上に難しいということであった。それで、日本だと憲法を読みましょう的な見解を弄する人が多いのだが、諸外国に於いて、そこまで読まれていたりするのだろうか?

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