てんちゃんのビックリ箱

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「バベルの塔」展

2017-07-28 21:38:08 | 美術館・博物館 等

正式名称
   ボイマンス美術館所蔵ブリューゲル「バベルの塔」展
   16世紀ネーデルランドの至宝-ボス-を越えて
場所:東京都美術館
訪問日および期間:4月27日   4月18日~7月2日

 27日に午後から東京での会議とのことで、いつものように朝早く名古屋をでて、美術展に行った。今回は上野の東京都美術館のバベル展。ブリューゲルよりもボスに興味を持っていた。結果はとっても勉強になる美術展。
 家へ帰って、改めて世界史のルネッサンスの頃の欧州の状況を読み直した。イタリアでルネッサンスは14世紀に始まり、15世紀から16世紀とそこで深化および周辺に広がっていっている。ただしフランスやドイツといった大国内の反応は封建制が強く鈍いが、ネーデルランド近辺はそれに対応して、豊かな文化が花開いた。

 その状況は、下記の理由と考える。
①その少し前から干拓が進み、いわゆる新しい地域がどんどん生み出された。
②その地域が、毛織物産業と貿易で非常に経済が豊かになった。
 ③支配権はハプスブルグ家等の専制の王ではなく、ブルゴーニュ公という地域権力であった。(なお、やはり経済力があるので、それを壊さずに支配権をとろうとする戦いは継続)
 この状況から、日本における戦国時代の堺のようだと思った。堺もあの頃茶の湯をはじめ、その地域だけの独特の文化を築いている。

 内容は、ブリューゲルの先駆者としてのボスの展示とその周辺。そしてボスの奇想が非常に人気となったことでその継承者たちの展示。それからブリューゲルのボス継承者の立場から独自の地位までの展示。
 ボスの2枚の油絵による板画、そしてブリューゲルのバベルの塔の絵を中心に、後はほとんどが版画である。

 ルネッサンスの初期、ネーデルランドのほうが絵画材料や作法はイタリアより優れていたとされる。ボスはダビンチ等と同世代人で、ハプスブルグ家などの王侯の受けがよくそれらの注文で、画家専業でも裕福だったとのこと。そこで描いていたのは、主としてキリスト教からの寓話だけれども、意味不明の怪物等を描き込む百鬼夜行の世界。その代表作は、今回はパネル展示のみの「快楽の園」。下記のURLを参照されたい。イタリアの真面目な宗教画と全然違う。(Wikiで項目が作られている) 奇想天外のもので羽目を外すという要望があったのだろう。
 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%...

 それとともに、その頃の民衆もいろいろな寓話や意図を散りばめて書かれている。それが添付1の「放浪者」の絵。後ろの家が娼館だとか、この人に仕事に靴修理があるとか、それにもかかわらずちぐはぐな靴だとか意味を読み込み、その人の心の迷いが描かれているとしている。そんなことよりもむしろ、リアルだけれども汚い人を書いてもよいという、経済的また精神的な空間があったことがすごい。


 そして、奇妙な生物等を描いた版画。ボスの絵の人気が出たということで、その後のネーデルランドの画家たちもその意匠をまねした。ブリューゲルがボスの影響により作成した版画が添付2。「聖アントニウスの誘惑」。聖アントニウスは釈迦が悟りを開く時に経験したような苦行を重ね、その際魔物に囲まれて誘惑を受けているが、その時の状況と思われる。
 右下の聖人に対して、いろんな怪物が集まってきているが、奇妙な形態であるけれども武器を振り回すとか噛みつくとかいった身体的危険を直接感じさせるものはいない。



 こういった絵の表現手段が版画であることは驚きである。そこに版画集楽しむ文化の高い小金持ちがたくさんいることを意味するからである。恵まれた商人たちがたくさんおり、奇想の産物を楽しんだのであろう。この版画は細かく見ていくほど不思議さが広がってくる。版画を購入した人は、現代の「ウォーリーを探せ」のように、書かれているものを一生懸命見つめ書かれているいろんな発見を競争しあったに違いない。
 
 ボスたちが描いたシュールな表現は、地域の周辺で行われている悲惨な戦争、カトリックの圧政とプロテスタント勃興による混乱などによるニヒリズムからか。いずれにせよ今までの創造の悪魔などとは全然違う奇妙なものを作り出したボスは天才という言葉だけでは足りない。

 ブリューゲルの頃には、イタリアが文化で完全に上位にたった。彼はイタリアへ勉強に行っている。そしてローマの建築の知識を得た。添付3はブリューゲル作のバベルの塔であるが、ローマのコロシアムの面影がある。


 60㎝×75㎝の絵だが、そこに雲を突き抜ける壮大なマクロのスケールと、煉瓦の一個一個そして1400名の人々を細かく書き込むミクロの視点を両立させている。後者に関しては実物の絵に近づけない展示がなされているのでわからない。しかし東京芸術大学が面積300%の模写を同時に展示しており、それに近づいてみることで実感する。

 図中の左手のほうに、赤煉瓦や白煉瓦を運ぶクレーンがあり、その近辺は赤および白に染まっている。15世紀ごろのクレーンが正確に書かれている。また頂上近辺の建設現場ではドーム製作の足場を詳細に書いている。そして建物周辺ではその頃のネーデルランドの風景が広がっている。
バベルの塔はできるだけ高いところへという壮大な挑戦で、神に罰せられてしまったが、ブリューゲルは小さい画面の中に、できるだけ多くの思いを描こうとし、それを達成した。

写真は後で追加

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