水曜日のシネマ日記

映画が大好き♪
水曜日に劇場で映画を観る機会が多い私の映画・DVD鑑賞記録日記です。

鳥籠から解放されたカナリア。『あん』

2015-06-02 23:30:00 | 映画【あ行】
どら焼き店の店長と美味しい粒あんを作る老女、
どら焼き店の常連客である女子中学生を軸に
人間模様を描いた作品です。


映画の評価 ★★★★★ 胸に突き刺さる映画


●以下ネタバレがあります●


この映画を観終えてから
しばらくの間は心が囚われ続けていました。


感想を書くにも何を書いたらいいモノなのか・・・


この作品は、凄く凄く優しくて心温まる作品なのです。


ラストシーンの後味も悪くありません。


でも実は・・・

もの凄く残酷な日常を描いた物語でもありました。


樹木希林演じる徳江が作る
「あん」の美味しさが評判の良さとなり
行列の出来るどら焼き屋さんになったお店。


そのお店の中で交わされた数々の言葉。


店長が徳江に言った
何気ない優しさからの言葉。
「結構重労働だし、あなたには無理だと思います。」

女子中学生のワカナが徳江に言った
何気ない優しさからの言葉。
「その手、どうしたんですか?」

徳江が店長に言った
何気ない優しさからの言葉。
「そんなにお酒が好きなら酒場で働けばイイのに。」

徳江がワカナに言った
何気ない優しさからの言葉。
「あなたは塾に行かなくてイイの?」


各々が放った言葉には何の悪意もなく
他愛もない言葉のつもりであっても
言葉を投げかけられた側にとっては
誰にも触れられたくなかった心の領域であり
に突き刺さるような鋭い言葉でした。

だからこそ
その言葉を受け止めた側の人間は
平然とした顔を装って言葉を聞き流しています。

でもその何気ない優しさの言葉を投げかけた人たちは
相手に対してこの世には存在しない誰かの影
見ていたようにも感じました。


店長は徳江に母親の影を見ていて
ワカナは徳江に祖母の影を見ていて
徳江は店長に息子の影
ワカナに孫の影見ていたようで・・・

そして店に通い詰めていたワカナは店長に対して
父親の影を見ていたのかもしれません。


人間社会は残酷
行列が出来るほどの評判の良さだったはずが
偏見が原因となり噂話が広まって
ある日、突然、客足がパタリと途絶えます。

具体的な言葉は無くても空気の流れ
露骨な差別をで感じてしまう世の中。

それでも最後には
鳥籠から解放されたカナリアのように
徳江は偏見と隔離された施設から解放され
店長は言いなりだった小さな箱の店舗から解放され・・・

ようやく世間のしがらみから自由になったふたり。

桜の木の下でどら焼きを売る店長の姿には
人生の過ちを背負う悲しみよりも
強く生きる決意が感じられました。

まるでドキュメンタリー映画のように
自然と静かに時間が流れる作品。

そんな中に
様々な人たちの深い想いが込められていて
私はすっかり魅了されてしまったのでした。


【2015年5月31日(日)イオンシネマ市川妙典にて鑑賞】
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