山歩きメモ~松本移住編

Life in Kamikochi, Matsumoto and Tokyo

首を貸す

2017-04-03 | まつもと暮らし


まつもとの城北地区にある沢村町会の公民館。そのすぐ傍に首貸せ地蔵尊というお地蔵さんを祀った場所がある。由緒書きには水野氏が三河から持ってきたもので、子供の身代わりに首を切られた、と書いてある。

ふーん。一体どんな成り行きで、石像の首が切られることになったのだろう。しかも子どもの身代わりとは?ストーリーがいまいち想像できない。あるいはご利益を信じた人々の願望が混じった逸話なのだろうか。殿様と長旅をしたり、何か重要な役割を担わされたお地蔵さんであったことは確か。

由緒書きには続きがある。この地蔵の首を持っていって祈願すると子どもの病が治癒したことから方々へ借りていかれ、たまたま返さない人がいたので長く「首なし」の時代があったと。それで「近くの石工が新しい首を造って差し上げた」のだという。この下りで私が思い出したのは、絵本のアンパンマン。

やなせたかしの描くアンパンマンはお腹を空かせた人を見つけるとやおら首を取り外し、ぶん投げたり、顔をちぎって差し出したりする。首貸せ地蔵は病から、アンパンマンは飢えから子どもを救うために自分の首を貸したりあげたりしてしまう。神仏やヒーローというのは、飢えと病から子どもを守ってなんぼ、なのだろう。

みぞれの降った日、この御堂を覗いてみた。穏やかに微笑する石の地蔵。誰かに似ているなあ、と考えた後、川島芳子の写真を思い出した。清朝の末裔として生まれ、十代を松本で過ごした川島芳子。最後は北京で処刑されて、骨になって松本に帰ってきた。スパイとして、頭部を撃たれての銃殺刑だったという。

地蔵の素朴さとはかけ離れた人生を思うと悲劇としか言いようがない。けれど、後世の人間が通り一遍の同情を寄せるのも不遜のような気がして、ただ手を合わせた。





2017.3
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