Daily Note

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腰部疾患に対する運動療法の理論

2006年09月27日 | Weblog
運動療法の適応

急性期は運動療法の適応にはならず、急性期を過ぎた腰痛疾患(腫瘍、炎症疾患などは除く)が適応となる。文献的には神経症状を呈した症例やすべり症、骨粗鬆症は適応から外れているが、それらも急性期を過ぎれば適応となりうる。



運動療法と腰椎のバイオメカニクス

腰椎湾曲の平坦化は、下位腰椎や椎間関節にかかる負荷の減少や脊柱管の拡大に繋がる。骨盤の前傾は腰椎の前湾を引き起こしてしまうため、骨盤後傾作用を持つ腹筋や殿筋の筋力強化、骨盤前傾作用を持つ背筋群・腸腰筋、大腿四頭筋のストレッチによって骨盤の前傾を抑える。また腹斜筋・腹横筋は腹腔内圧の保持によって腰椎への負荷を減少させると共に、腰部背筋群の補助作用もあるため、この筋の筋力増強も有効である。
運動療法を行う際に、椎間板内圧の上昇には気をつけなければならない。普通の腹筋運動で立位時の2.5倍、角度が大きくなったり回旋が加わるとさらに椎間板内圧が上昇する。両膝を引き付け殿部を浮かす腹筋強化や枕を腹部に挟んでの背筋強化など、内圧の上昇を少なくすることが大切である。腰痛体操にストレッチを加えると効果が増えるとの報告があるが、この場合も椎間板内圧上昇に注意が必要である。



腰痛体操の目的

腰痛体操の目的別の方法・適応疾患を以下に記す。
①腰椎の前湾を減らして脊柱管を拡大
 腹筋・殿筋・ハムストの強化、背筋・腸腰筋・大腿四頭筋のストレッチ。
 腰部脊柱管狭窄症、腰椎椎間板ヘルニアなど。
②腰椎の前湾を減らして下位腰椎への負荷を減らす
 ①の方法に加えて、腰椎前湾を減らす姿勢の習得。
 腰椎分離症、すべり症、姿勢性腰痛症など。
③腰椎の支持性の向上
 腹筋・背筋・殿筋・腹斜筋・腸腰筋の強化。
 体幹筋力低下を伴う変形性腰椎症、腰椎側湾・後湾に伴う腰痛症、骨粗鬆症など。
④腰椎柔軟性の獲得
 腹筋・背筋・殿筋・側腹筋・ハムスト・腸腰筋・回旋筋のストレッチ。
 変形性腰椎症、腰椎椎間板症、姿勢性腰痛症、腰椎側湾に伴う腰痛症など。
⑤神経根を動かす
 下肢の伸展挙上、立位での前屈。
 神経根癒着など。



手技上の注意

筋力強化訓練は疼痛が起きない範囲で行い、椎間板内圧に常に注意する。また下肢伸展位での腹筋訓練や老人への大きいKnee-chest体位は行ってはいけない。



腰部疾患別の腰痛体操について

①腰椎椎間板ヘルニア

椎間板内圧が症状と直結しているため、他の疾患と異なる。目的としては脊柱管の拡大があり、急性期には行わず、急性期が過ぎてから呼吸式の腹筋訓練に入り、以後経過を見ながら普通の腹筋訓練、殿筋訓練、腹斜筋訓練、背筋訓練と徐々に移っていく。



②腰部脊柱管狭窄症

腹筋・腹斜筋・殿筋の強化と背筋・腸腰筋・大腿四頭筋のストレッチを行う。重篤な症状のものでなければ効果が得やすい。



③変形性腰椎症

神経圧迫病態がないものの腰痛の原因としては、腰椎の支持力低下・柔軟性欠如・不安定などがある。体幹筋力低下が著明な例が多く、そのような例では全体的な体幹筋の筋力強化を行う。ストレッチは最初に行うと疼痛が出現するため、筋力訓練後に行ったほうが良い。不安定性のある例では、特に腸腰筋・腹斜筋の強化を行う。



④姿勢性腰痛症

腰椎前湾による下位腰椎過負荷によって起こるため、腰椎前湾を減らす目的で行う。ADL指導やPelvic tuckが大切。



腰痛に対する運動療法の効果機序について

腰椎疾患の病態がバイオメカニクス的に改善されるというのが妥当だが、最近フィブリン溶解系が関係しているという意見もある。

2 コメント

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Unknown (みか)
2010-05-16 16:12:29
現在PTSで、治療実習中のものです。
すべり症と腹筋強化の関係についてしらべていると、このページにたどりつきました!!
なるほど、という詳しい解説ありがとうございます。続けてデイリーがんばりまーす!!!
Unknown (url)
2011-01-26 17:06:26
なるほど