a letter from Nobidome Raum TEE-BLOG

東京演劇アンサンブルの制作者が、見る、聞く、感じたことを書いています。その他、旅公演や、東京公演情報、稽古場情報など。

いよいよ『日本の気象』公演です!!

2008-03-28 00:21:02 | 東京公演
『日本の気象』の公演まで、
1日となりました。
というか、
もう、今日、ですね。
2004年に劇団創立50年記念に上演した作品で、
“新劇の父”とも言われている久保栄の最後の作品。

敗戦直後の気象台を舞台に、
日本中が民主化への流れの中にあり、
人間が大切にされる社会への希望があふれていた。
若者たちは、
自分たちの未来が、
今よりいいものであると胸を高鳴らせていた。
あるものは、科学技術の平和利用を語り、
あるものは、労働者の生きる権利を考え、
あるものは、恋をしていた。
しかし、期せずしてその流れは逆流となる。

科学の平和利用がないがしろにされ、
労働組合はつぶされ、
恋も・・・いや、恋が簡単じゃないのは昔からですね。

わずか敗戦から5年という月日の中で、
時代は大きく揺れ動いていた。
何のための科学なのか。
気象を予報すること。
人々が生きる日常により良く生かすこと。
しかしその科学はまた、
真珠湾の攻撃を決めた技術でもあった。
その激動の時代に、
それぞれが懸命に生きようとした姿を瑞々しく描く。

この作品、ほとんどの主要人物たちは、
実は、モデルがいたりするようです。
この作品に描かれていることは、
そのまま僕らが生きる時代とつながっています。
そしてその現場で生きる人々の純粋性にまた惹かれます。

2004年に上演されたとき、
僕はスウェーデンの留学から帰ってきて、
本番を観ただけでした。
まさに時差ぼけの頭が目の覚めるような、
そんなショックを受けた記憶があります。
わずか数ヶ月にもかかわらず、
なぜか僕は、みんなから置いていかれたんだ、という気分になりました。
この稽古場にいなかったことは、
大きな遅れになったのではなかったか、と。
芝居のできは、最高。
あれだけ散々ストックホルムの舞台芸術に触れながら、
やっぱりうちの芝居は世界に通用する。
なんて、思ったりもしました。

期せずして、
この作者の久保栄が亡くなって50年。
あらゆる文化人が、戦争中の戦争協力を自己批判し、
二度と戦争を起こさないことを考える中で、
演劇界だけは、そのことをしませんでした。
そんな演劇界に絶望し、
身を削るような思いをして書き上げたのが、
この戯曲。
しかし、当時、彼の果敢な試みは、
なかなか評価されなかったときいています。
そして、1958年3月15日、
最後は気が狂うようにして、
自らの命を絶ちました。

2004年の上演から4年、
待望の再演となりました。
ぜひ足をお運びください。
そして、たくさんご意見を聞かせてください。
劇場にて、お待ちしております。


東京演劇アンサンブル公演
日本の気象

2008年3月28日(金)~30日(日) ブレヒトの芝居小屋
2008年4月4日(金)~6日(日) シアターX
28日=19時 4日=18時半 土・日=14時
当日5,000円
前売・一般4,500円 学生3,500円
全席自由
公演詳細は、劇団HPにてどうぞ。
URL http://www.tee.co.jp
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

連連影展・終了

2008-03-10 20:07:35 | 芝居小屋企画
先週の日曜日のことなので、
ずいぶん経ってしまいましたが、報告です。
劇団の新企画ブレヒト・カフェにて、
映画会を開きました。

すべてドキュメンタリー映画で、
商業ベースには乗らない、
映画館ではかからないような作品の上映会でした。

10分程度の作品から、
90分くらいの作品までありました。
僕個人として印象的だったのは、
『0メートルの隔たり』と『べてる』という作品。

前者は、イスラエル人とパレスチナ人の女性同士のカップルと、
男性同士のカップルのことを記録したもの。
両国家は決して相容れない。
しかし、それが絶対ではない。
さまざまなところで、この隔たりを乗り越えていたり、
乗り越えようとしている人たちがいる。
この映画では、
セクシャルマイノリティーという視点から、
この隔たりを見つめる。
これまで何度もイスラエル・パレスチナの問題を見てきたけど、
これまでになかったカップルからの視点は、
希望の持てる可能性と、
絶望的な現在の状況を映し出していた。

後者のタイトルの“べてる”というのは、
北海道・浦河町にある精神障害者の活動拠点“べてるの家”のことで、
その活動を撮った作品。
病院、生活、職場という、
障害者にとって、なくてはならないものが渾然一体となって、
共同体を作っている。
当事者だけでなく、行政も含めて、
他に類を見ない、理想的な活動をしている、
と思った。
(他のやり方を知っているわけではないので・・・)
とにかく、明るい。
映し出される人々が明るくて、
生命感にあふれてる気がした。
ともすれば暗くなりがちな精神障害なのだが、
そこを突き抜けて、
それを抱えながらも、生きることをきっちりと選択している。
この活動を見に、人口12000人の町に年間2500人の人がくるという。
傑作なのは年に一度の“幻覚妄想大会”。
そのチャンピオンのエピソードは秀逸。
そのまま芝居になっちゃうくらい。
最後の、最後まで、
その人柄がにじみ出る映像でした。

僕にとって、ドキュメンタリーの映画の魅力の一つに、
知らないことを知る、
ということがある。
そして、そこで大切なのが、
作り手が、どういう目線で、記録しているかということだ。
もちろん、
その意識がないほうが良い、
という意見もあるだろうと思う。
けれども、僕は、
やはりその立つ位置が見え、
そこに何かを発見できることを望む。

今回は、
そういう作品と出会えたことが嬉しいし、
また、
こういう出会いをしたいな、と思った。

終映後の、打ち上げも盛況で、
一緒に取り組んでいただいだFAVのみなみんさま、
どうもありがとうございました。

by 管理人
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

今度のスープはコーンスープでした。

2008-03-06 12:14:50 | 東京公演
3月1日は、2回目のスープシアター。
スープ作製は、何を隠そう僕の仕事です。
1回目は、演目が『沖縄』ということもあり、
“沖縄そば”を作りました。
今回は、かなりいきあたりばったり的なイメージで、
出演者の岩田さんと、
「アメリカと言えば、コーンスープ」
なんて勝手なことを言って、
ふたりの意見が一致したからいいかな、
ということで、決めました。



公演当日は満席で、スープの評判も上々で、
成功といえるかな、と思います。
作品の評判は、いろいろで、
時代背景のことなど、
世代によって違った意味が見えてきていたようです。
「アンサンブルっぽくないけど、
アンサンブルだった」
という声もありましたし、
それも含めて、
こういう実験的な試みは、
これからも積み重ねたいなぁ、
と思いました。
批判も評価も聞きながら、
劇団内でも論議があって、
関わった人たちが次に進めればいいな、と思っています。



僕個人としては、
最後までこの芝居の何たるかをつかめなかった・・・と思います。
なんとなく、こうじゃないかな、というのはあるんですが、
この“?”もまた、僕にとっては継続事項だなと思います。

作家ドナルド・フリードは、
なかなか気骨のある映画のシナリオなどを書いていて、
特にケネディ暗殺の真相などを扱った作品などで、
社会派な作家。
その彼がなぜ、“SM”?
てな思いがあります。
その人間関係の裏にある、作家がたくしたもの。
大国・強いアメリカと、
そのアメリカに守られ、従属することで、
安泰な日常を手に入れようとする、
無知な民衆。
そんなことを、考えました。
その民衆と、日本という国自体が、
同じ力関係に見えてくるかもしれない、とも思いました。



終演後のスープを飲みながらの交流会も、
なかなか作品の中身に触れていくのは難しいようでしたが、
翻訳の堀真理子さんや、
音楽選曲のジャス評論家の岩浪洋三さんがいらっしゃってくれたので、
少しでもお話を聞けたのが良かった思います。



次回はまだ時期も作品も未定ですが、
継続していこうと考えています。
どうぞこれからも、よろしくお願いします。

最後に、
すごく個人的なことで恐縮ですが、
この芝居を一番観せたかった友人に観せられなくて、
それだけが、残念でなりませんでした。
つくづく芝居は、生もので、
その日、その時に観てもらわないと、
次にいつ観てもらえるか、
なんて言えないし、
もう、観てもらえないかもしれないんだなぁ、
とやるせない気持ちにもなりました。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

スープ劇場 第2回目

2008-03-02 00:33:27 | 東京公演
皆さんはじめましてこんにちは!
今を遡ることウン年前・・もともと目立ちたがり屋だった子供がそのまま成長し、高校の演劇部ではカラダまるごと使って一つの物語を探検する面白さにはまり、なんの迷いもなく劇団に足を踏み入れ、ふと気づけば16年目突入・・・。人間も食べ物も考え方もいろんな味を味わってきた感がありますが、最近では芝居をやればやるほど自分の道が迷宮入り(!?)してるような気がする今日この頃です。←だいじょぶか!?
パソコンに不慣れなワタクシですが、ただ今、初めてのブログ書き込みに挑戦中です(なにせブラインドタッチもいまだできません^^;)

今日は昨年から始まった【スープ企画】の第2段『アルフレッドとヴィクトリア』の公演でした。たった一日限りの公演でしたが、たくさんの観に来てくれた方々、本当にありがとう御座います!この企画の特徴は、終演後に劇団員が作ったスープ(今回はコーンスープ)を飲みながらお客さんと交流する・・というものです。(お味はどうでしたでしょうか?)今回の出演者などが芝居を終えての心境やこれまでの稽古のことを話し、お客さんからは公演の感想と、普段観劇する時に感じている役者への素朴な質問などを聞くことができました。
今回私は観る側でしたが、この芝居・・・ナゾです。私にとっては分からないことだらけです。でも観て“自分が何を感じたか”ということを探るべく心の中を一生懸命覗いて、わずかな引き出しの中から自分なりの言葉を見つける作業(これが大~変~)が、なにかを発見した時の喜びにつながっているし、それにはいろんな人と話しをすることがホンっとに必要・・というか今まで助けられているなぁと実感しています。これからも公演の時や何かにいろいろなご意見、芝居の内容だけでなくどんな些細なことでもいいのでよせてもらえたら・・と思っています。
(私もなるべくここに書けるようガムバリます!)

                                 劇団員M
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする