富士山の眺め遥かに

転居後の日常を徒然なるままに

ハードボイルド系の…

2017-05-15 11:20:01 | 読書
藤原伊織著「テロリストのパラソル」
図書館の掲示板に書評が貼られていて、タイトルにも興味を惹かれたので読んでみることにしたのてす。

 学生運動のピークであり、終わりの始まりでもあつた全共闘の
学生による東大占拠。教養学部本館に籠城していた東大生三人の
「その後」が、縦糸横糸となつて絡まり、22年後、新宿中央公園
で爆破事件が起こります。三人は、男ふたり(菊池と桑野)
ひとりは女(優子)。
この三人の間でどんな関係性が発生するかは、だれでも想像できてしまいます。その結果として、この爆破事件でひとりは加害者、ひとりは被害者となり、残るひとりの「私」が犯人を追い詰め、事件の真相を解明していくというストーリー。

 東大駒場の占拠を解除する決意をした時、のちに爆破事件を起こす犯人(桑野)は次のように言います:
「 …我々が相手にまわしていたのは、体制でもイデオロギーでも
ない。それは、この世界の悪意なんだ。この世界が存在するための
必要成分である悪意。ぼくらが何をやろうと無傷で生き残っている。……もう手のうち用がないんだ…」
 
その「悪意」は、20年余りの時間の流れと壮絶な経験を通して、
犯人の心で肥大し、憎悪に歪められ、その対象に向けられて
いく。テロ事件を起こした理由を桑野は明かす:
「自分のようなクズを拡大再生産している国への復讐」と
「決して取り戻せないものは、破壊する」。
結局、無関係な人も巻き込んだ破壊行為は、劣等感、嫉妬、対抗心、
失恋…といった個人的な感情に起因するものだったのです。
「世界の悪意」というのはつまり、個人の単位で考えれば、恨み、
妬み、憎しみといつたネガティブな感情が、集合した形となつて現れるものかもしれない。
実際に起きているテロ事件も…と思ってしまいます。 

 この作品は、平成7年に第41回江戸川乱歩賞、翌年直木賞を
ダブル受賞したとのこと。もう22年前のことです。今、世界中で
起きているテロ事件は、あの頃は今ほど頻発していなかつたはず。 
今だったら、本のタイトルに「テロリスト」の文字を入れるのは
憚られるようなご時世です。
 
 ちなみに、このタイトル「テロリストのパラソル」は、
三人の中の紅一点、優子が、ニューヨークで偶然再会した桑野と
五番街をデートした時詠んだ叙景歌からとったもの:
  殺むるときも かくなすらむか テロリスト
     蒼きパラソル くるくる回すよ



単行本300ページ余り、読み進むうちに登場人物がタテヨコにつながつていることを知らされます。(そんなわけないよな〜、でもこれは
ハードボイルド作品だから)と勝手に納得しながら一気に読み終えてしまいました。






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